【53】第1遊撃機動艦隊 行動開始
銀河連邦運輸局の管制係に、スーパー・ギャラクシー・エアラインズからの運行計画データが届いた。
管制官は、濃縮エナジードリンクをチョビチョビ飲みながら、データを見てみた。
「カシオペア座α星シェダル星系、惑星シェダル・ベータかー。行ってみてーなー」
「あ、カシオペアのシェダルな!いい所らしいぞー!」
隣の管制官が、自分は行ってもいないのに、自慢気に言った。
「…………」
しかし、話し掛けられた管制官は、運行データを見たまま、何も答えなかった。
管制官は自分のコンソールで、このデータに連動した運輸局側のデータを表示させた。
「2隻……か?」
管制官は時間を戻したり進めたり、角度を変えたり、
色々な方法でこのレーダー画面を見直した。
「主任、ちょっと7番コンソールへ」
管制官は、主任管制官を呼び出した。
「どうした?」
主任は尋ねた。
「先ほど、スーパー・ギャラクシー・エアラインズから連絡があって、捜索依頼だったんですよ」
「なんだって?」
主任は驚いたようだ。
「ウチのレーダーでは、どうなってるんだ?」
「ロストしてます」
主任の問いに、管制官は答えた。
「ロストしたのに、なんで警報が出なかったんだ?」
「それが、分からない所です」
主任と管制官は、対応を考えた。
「いつの話だ?」
「えー、ざっと4時間くらい前でしょうか」
「そのレーダー画像を、さらに分析しろ」
主任は、管制官に命じた。
* * *
「[しらかぜ]より、艦隊全艦へ達する。
エンジン始動、アイドル・キープ」
ガニメデ軌道上で間隔200メートルを保持したまま、第1遊撃機動艦隊の7艦は、ほぼ同じにイオンエンジンに点火した。
「カズは、大丈夫か?」
俺は、サクラに聞いた。
「今のところ」
「よし、現地点より仰角90度で、先と同じ捜索編隊航行をおこなう。全艦へ通達してくれ」
俺は、全艦への通達をサクラに命じた。
「艦長、全艦より、準備完了の連絡あり」
「よし、行こうか」
[しらかぜ]以下7艦の駆逐艦は、イオンエンジンを噴射し動き出した。
「アップ・トリム、090」
ハロヤ航海長がコールする。
パシュッ
パシュッ
[しらかぜ]の艦首下部のスラスターが弱噴射され、前方が少し上を向いた。
ブリッジの前方の窓から見えるたくさんの星が、ゆっくり舳先の下へ隠れていく。
「この、デカい船を操る感じ、いいよねー」
俺は、しみじみ言ってしまった。
「トリムアップ、完了。両舷半速」
[しらかぜ]は、ガニメデ軌道に対し直立した体勢になり、エンジンを50%噴射した。
そして[しらかぜ]が上方向へ動き出し、2秒後、3秒後、6艦は次々とエンジンを噴射し、航行を開始した。
* * *
運輸局の管制官と主任管制官は、同じレーダー画像を注視していた。
「これが[SGA773便]です」
管制官は画面の光点と便名表示を指差した。
そして、画面をスロー表示にした。
1つの光点と便名表示が出たままである。
と、その直後、光点のすぐ左にくっつくように、もう1つの光点が現れ、ほぼ同時に光点は2つとも消えた。
「ワープか」
主任が言った。
「ワープ航行中の船が、[773便]に衝突したんです」
管制官は、そう推測した。
「じゃ、なぜ警報が鳴らなかったんだ?」
「船であることを示す光点は消えましたが、大量の残留物が、船として認識されてしまったのではないでしょうか」
ビーーッ!
ビーーッ!
ビーーッ!
警報が鳴った。
「消失警告!消失警告!」
管制対象が無かった何人かの管制官が、レーダー画面と運行計画を見比べながら、色々と操作を始めた。
「おい!そのエリアじゃないか?!」
一人の管制官が、主任管制官に言った。
「なんだって?」
主任は、レーダー画面をリアルタイムモードに変えた。
さっき2つの光点が消えた場所に、赤く大きな✕印が点滅し、その横に[SGA303]と、これも赤い文字で表示されていた。
「どうなってる?!」
主任は大声で聞いた。
「スーパー・ギャラクシー・エアの[303便]が、
消えたんです!」
* * *
「司令、運輸局から連絡です」
宇宙軍火星本部救難隊に一報が入ったのは、[SGA303便]がロストしてから5分後だった。
「救難隊司令、テルネ大佐だ」
「ぎ、銀河連邦運輸局管制係主任のトランです。じ、実は、み、民間旅客宇宙船が少なくとも2隻、そ、そ、遭難しました」
「少なくとも、と言うと?」
「も、もう1隻いた可能性もあります」
「2隻とも故障で停船して、救助が必要なのか?」
大佐は聞いた。
「い、いえ、そ、そうではなくて………」
「どうした、接触して動けないのか?」
「い、いえ………」
「ハッキリせんか!」
大佐はイラついてきた。
「あ、あくまで、す、推測ですが、
し、し、衝突による、だ、大事故かもしれません……」
主任の声は震えていた。




