【52】スーパー・ギャラクシー・エアラインズ
「おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊、改め、
第1遊撃機動艦隊、代理旗艦「しらかぜ」より、艦隊全艦に達する。
本艦隊は、先の[SRL5150便]捜索参加が認められた。
よって、[SBL229便]の目撃情報に基づく宙域から捜索を開始する。具体的には木星軌道を上方に向けて捜索をおこなう。
このため、本日1000時までに出航準備を整えること。
また、別件であるが、我が艦隊の名称変更と共に艦編成も変更となる。旗艦はミサイル巡洋艦[もがみ]となり、[しらかぜ]は駆逐艦1番艦となる。全員、遺漏の無いように準備をおこなうこと。以上」
サクラが、艦隊全艦に通達した。
「よし、サクラ、[229便]の情報と、ペルセウス座方面第9機動艦隊、旗艦[いせ]の情報とを擦り合わせて、[5150便]の見当を付けてくれ」
「了解しました」
「[5150便]を捕まえている物は、銀河系のオリオン腕を北極側へ移動しています。水平軸に対して上を北極側としてですが。
そして、その延長線上の銀河系の外には、今年新たに発見された中性子星があります。天文学会によって命名された、PS72パルサーです」
「銀河系の外?」
俺は、サクラに聞き返した。
「どこを境目とするかの議論は置いておいて、
原則として水平軸より748光年の距離がありますので、銀河系の外という考え方が当てはまります」
「未知のお隣さんか」
* * *
火星基地の艦艇ハンガーでは、ミサイル巡洋艦[もがみ]の定期点検整備が順調におこなわれていた。
「デカい艦ですねー」
整備部長の少佐が、大型艦艇用B-1ハンガーに格納された[もがみ]を見上げている宇宙軍総司令官イアナ提督に言った。
「この艦で、あの少年たちが、この銀河系を救ってくれることを願うしかない」
提督はつぶやいた。
ミサイル巡洋艦[もがみ]は、全長200メートル、全幅25メートルで、巡洋艦の中では最大クラスであった。
レーザー主砲は3連装砲搭が艦首に2基、艦尾に2基、艦底に2基設置され、2連装速射レーザー砲も上部に10基下部に6基ある。ミサイル発射口はブリッジを挟んで前部に5基、後部に10基、両舷と艦底には発射時に突出する発射口が装備されている。
戦闘管理レーダーは半径10万キロを3次元的にカバーし、この中の目標物全てを監視しつつ、自艦の攻撃対象に優先順位を付けながら対応することができる。
そして、この艦型からミサイル射程は5万キロ、レーザー射程距離は1万5千キロとなった。
* * *
ピピピ、ピピピ
火星にある「銀河連邦宇宙運輸局」に「スーパー・ギャラクシー・エアラインズ株式会社」から連絡がはいった。
「はい、運輸局運行管理部旅客課調整係」
事務兼受付担当HDが受けた。
「すいません、どうもウチの船に何かあったようなんですが……」
「何があったのですか?」
HDは、淡々と対応する。
「壊れたのか、消えたのか、とにかくどこへ行ったのか分からないんです」
ギャラクシー・エアの担当者はうろたえて言った。
「運行管理はしていないのですか?」
「もちろんやってますよ…、でも、突然いなくなったんで、運輸局で調べてほしいんですよ」
「船の捜索でしたら、銀河連邦宇宙捜査局の管轄です」
HDは、自分の管轄ではないと判断した。
「運輸局でも船の航行監視してるでしょ!?」
エアラインズの担当者も、食い下がる。
「分かりました。担当にお繋ぎします」
HDは、面倒くさくなったのだろう。
ピピピ、ピピピ
「ほーい、管制係」
運輸局の管制室で、係員が出た。
「受付です。スーパー・ギャラクシー・エアラインズ株式会社からです」
HDが、管制係に繋いだ。
「はぁい、管制係ですがー?」
「ウチの船が消えたようなんです……。どうすればいいですか?」
「じゃぁあー、その船の運行計画、こっち送って」
* * *
ウィーーーーーン!
ウィーーーーーン!
「接近警報!接近警報!」
突然、船のコックピットで、警報が響いた。
「航海士、なんだ?!」
船長が航海士に聞いた。
「前方20,000に、何かあります」
「何かって、なんだ?!」
「分かりません。ガス?チリかな?」
航海士は、レーダーを見ながら悩んでいた。
「ガスかチリなら、通れるか?」
「まだ遠いですし、レーダーには雲状に映っているだけで」
「副長、機関士、どうすべきか?」
コックピットには、船長を含め4名の乗務員がいる。
「距離10,000」
航海士が報告。
「ガスとかチリとかが集まったものでしょう」
副長が言った。
「3時間前に[773便]が通ってるだろ?」
船長が言った。
「あ、そうですね。臨時の[773便]が出てます」
航海士が運行計画を見ながら言った。
「こちら[SGA303便]、[SGA773便]どうぞ」
「……………」
応答は無い。
「船長!前方に障害物、多数!!」
「ダメだ!間に合わない!」
乗員・乗客10,000名を乗せた大型旅客船は、
大小の浮遊物を巻き込んだガス状の雲に、
時速50,000キロのスピードで突っ込んで行った。




