【50】ようこそ、3000億の星の舞踏会へ
大昔から、世界中の人びとのうち何人かは、身の回りの事に疑問を持つ人がいた。これは何だろう?あれは何故そうなるんだろう?ホモサピエンス=人類と定義して以来、人類は、様々な事に疑問を抱くようになり、その疑問を解決し、理解しようとすることで、農業、工業、科学、医学を発展させてきた。
それとは別に、ただ毎日の食料を確保し、子孫を残し、夜空に星が輝いていようが、吹雪の中で凍えてしまいそうになろうが、その理由など考えることすらしない人びともいた。
しかし、それら全てをひっくるめて、人類だった。
最初は一人で狩りをしていた者が、仲間と一緒に獲物を仕留めるようになり、ただ歩き回って偶然果物を見つけるより、美味しい果物やお腹を一杯にできる小麦や米を栽培できるようになったり、ケガをした時に塗れば治る草を見つけたり、何十万年という年月をかけて、物事に疑問を抱く人も抱かない人もひっくるめて、人類バージョン1.0は進化した。
むかし、[2001年宇宙の旅]という映画があった。
俺は、このての映画が好きなのでちゃんと観たのだが、
友だちの多くは、意味が分からないと言っていた。
映画の途中で、道具を発見した猿が、動物の骨を空へ投げると、それが宇宙船に変わるシーンがあった。
人類が道具を発明した所から、宇宙科学にまで進化させた部分をはしょったシーンだ。
で今、俺は、それを実感している。
* * *
[しらかぜ]のブリッジから見る宇宙空間は、プラネタリウムではない。[しらかぜ]、いや俺を中心に星ぼしが運行しているのでもない。
この全宇宙が中心であり、全宇宙が動いている。
宇宙は音楽を奏でながら聴きながら踊っている。
宇宙は果てしなく巨大なダンスホールだ。
ピーー
俺が[しらかぜ]のブリッジで物思いに耽っていると、通信が入った。
「火星本部作戦司令部より、第3駆逐艦隊へ」
「こちら第3駆逐艦隊、司令部どうぞ」
通信担当がやりとりを始めた。
「クロダ艦長の進言通り、ガニメデ軌道の調査を一時中止する。今後は、太陽系上方向への索敵活動へ移行してもらう。よろしいかな?」
「[しらかぜ]了解しました」
「では、その方向で計画を進めるので、よろしく頼む。以上」
司令部からの通信は終わった。
ピーッ!フィーッ!
サクラが号笛を吹いた。
「[しらかぜ]艦長クロダより艦隊全艦に達する。
現時点をもって、ガニメデ軌道上調査を一時中止し、太陽系上方向索敵活動へと移行する。以後については、別命あるまで待機とする。以上」
フィーッ!ピーッ!
サクラが号笛を吹いて、締めた。
「太陽系を円柱に見立てて、その中を上下方向に、っても、広いよねー?」
俺は、サクラに言った。
「ま、どこまでを太陽系とするかにもよりますが、
ざっと、直径100億キロ、高さ1,000光年の円柱と考えてよろしいかと」
「そんな広い範囲を、どうやって探せっていうのさ」
俺は、サクラに疑問をぶつけた。
「全域をグリッド分割して、全グリッド内に……」
「どうした?」
「あくまで、仮定ですので…、難しいでしょうね」
「だよねー」
俺は、艦長席に座って、コンソールに足を投げ出した。
ピーッ
「艦長、司令部から入電です」
通信担当が言った。
「火星本部作戦司令部より、[しらかぜ]へ」
「こちら[しらかぜ]、司令部どうぞ」
「今後の作戦行動だが、とりあえず自立編隊航行索敵とする。以上」
「艦長、どう返答を?」
通信担当が尋ねてきた。
「了解するしかなかろ?」
「こちら[しらかぜ]、了解しました」
俺の答えを聞いて、通信担当は司令部へ返答した。
「さて、さて、サクラ。どうやっていこうか」
「そうですね。太陽系は広いと言えども、あなたの時代と違ってかなり開発されていて、ほぼ既知の宙域と言っても過言ではありません。ですので、調査済みの範囲及び軍や民間の航路設定されている範囲を除けば、調査すべき宙域はかなり限定されるものと思われます」
サクラの見解である。
「なるほど!」
俺は、サクラの肩を叩いた。
「で、その、調査すべき所は、すぐに分かるかい?」
「少し、お時間をいただければ」
「よし、じゃ、頼むよ」
「かしこまりました」
サクラは答えた。
* * *
「ペルセウス座方面第9機動艦隊、旗艦[いせ]より火星本部作戦司令部へ。
本艦隊は現在、太陽系より方位175、距離92光年、ペルセウス座α・ミルファク星系にあり。
スーパーワイドレンジレーダーによるワープ航路確認中に、太陽系内から上方向に向かう物体を探知。実在の有無の確認を願う。以上」
「司令部、了解」
サクラがこの通信を傍受し、俺に報告してきた。
「これか?」
俺は尋ねた。
「これだと思われます」
サクラは、答えた。
「俺の考えは、分かるよな?」
「はい」
「他の6艦に連絡しろ」
「了解しました」
サクラは、答えた。




