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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
49/132

【49】赤色巨星ミラに照らされて

「これは、第38連合艦隊、旗艦[ジョージア]が、くじら座ミラ星系、惑星ミラ・アルファ付近で、第5防衛隊の救援に向かった際に記録した映像である」


火星本部作戦司令部のブリーフィングルームの大型モニターに写し出された映像を示しながら、宇宙軍総司令官のイアナ提督が説明した。


画面には、全面を埋め尽くす無数の恒星が写る静止画像のようだったが、時おり小さな物体が画面を横切った。何分間か写し続けていると、いくつかの物体が画面に写り込んでいるのが分かった。


「この映像で動いているのは、第5防衛隊の艦艇の破片と、その他の過去に行方不明となった艦艇の残骸や破片である」

ブリーフィングルーム内がザワついた。


「つまり、現在の第5防衛隊と過去に行方不明となった我が宇宙軍の艦隊が交戦したのである」

提督の説明は、重苦しかった。


「詳細は未だ不明であるが、この交戦の痕跡は事実である」

提督は端末に受信した情報を見ながら続けた。


「現在、おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊が、本来の任務を変更して、木星の衛星ガニメデ軌道付近で行方不明となった[スペース・レッド・ライン5150便]の調査を行っている。そこで回収された情報によると、[SRL5150便]は、銀河系水平軸に対し上方向へ牽引されたものと思われる」

提督は端末を操作し、[しらかぜ]のハンガー内に収容されている、浮遊していたHDを写し出した。


後で聞いた話では、この画像を撮影したのはサクラで、HDを指差している俺が写っていたらしい。


提督はまた、端末を操作し、

「これは、以前に報告した戦艦[ひゅうが]のプレートである。今回のミラ付近の交戦もあり、今後このような過去の艦艇の発見が増える可能性がある。よって、これらの調査に必要な部署の増強をおこなうので、今後の通達に注意するように。以上」

と話して、ブリーフィングを終えた。


* * *


「全部、漏れ無く回収しろ」

[ジョージア]の調査官は、回収作業員に命じた。


大きくて赤っぽく輝くミラに照らされて、第38連合艦隊の各艦から放たれた舟艇が宇宙空間をあちこち飛び回り、作業員が浮遊する残骸や破片を舟艇に積み込んでいく。作業員には宇宙服を着た人間もいれば、何も装備しないHDもいた。


遠くで輝いているミラは、50億年後の太陽である。

恒星は、若い頃から青年期まで内部の水素の核融合反応によって輝き続ける。しかし、内部の燃料である水素がなくなると核融合反応でできたヘリウムの核融合反応が始まり、星は収縮する。ヘリウムの核融合反応の回りでは残っていた水素が再び核融合を始め、星は再び膨張する。この時の膨張は、太陽系の水星はもとより、金星を飲み込み、地球や火星の軌道に近付くほど膨張し、温度も下がり赤っぽくなるため、赤色巨星と呼ばれる天体となる。


「やはり、持って行かれたか」

この言葉を口にする作業員が多くなってきた。

残骸や破片の数が少なすぎるのだ。


たった1艦が粉々に破壊されたとしても、これだけの残存物では辻褄が合わない。しかも浮遊している物は細かいものばかりで、大きな外鋼板や大型機器、エンジンなどが無いのである。通常の戦闘後の状況であれば、真っ黒に燃え尽きていたとしても、ある程度原型を留めた艦体やブリッジ、砲搭やエンジンくらいは残るものである。


「回収作業はほぼ完了したと思われるので、これにて終了とする」

調査官は、作業員に命じた。


残留物を満載にした舟艇が、それぞれの母艦に帰投した。


調査隊は各母艦に帰投後、すぐに残骸の分類をはじめ、今回の戦闘の相手についての情報を集めるべく奮闘した。


「調査官!ありました!」

作業員が機関員のヘルメットを見つけた。


[GLC-77 KISO]

「軽巡洋艦[きそ]だな」

調査官が記録した。


「調査官!こちらのコンソールパネルにも」

パネルに銘板が貼ってある。


[Battle Ship KONGOH,6966]

「戦艦[こんごう]だ」


ミラの戦いでは、[ルイテン]が旗艦であるくじら座方面軍第5防衛隊が、過去に行方不明となった戦艦[こんごう]、軽巡洋艦[きそ]と交戦し、その後、第5防衛隊5艦が行方不明となった。


ミラ戦闘第1次報告書には、そう記録された。


* * *


俺は、[しらかぜ]のブリッジの窓から、上の方を見上げてみた。宇宙空間で宇宙を見ると、信じられないほどの数の星たちがあるのが分かる。地球のように大気を通していないので、星がキラキラと瞬くこともない。


大きな丸い部屋の天井にたくさんの小さな穴を開けて、部屋の外の光がたくさんの穴を通して自分に降り注いでくる。自分が部屋の中心にいるんだと思えてくる。


16世紀のイタリアの哲学者、ジョルダーノ・ブルーノは、神がそう言ったと人々に教える教会の考えに疑問を感じ、天井を壊し、自分が部屋の中心にいるわけではないことに気が付いた。

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