【48】戦艦[ルイテン] 対 不明艦隊
ピカッ
ビカーーーッ!
ピカッ
戦艦[ルイテン]の右舷遠方で、激しい火花が散っていた。
シュィーーーーン!
巡洋艦のブリッジをかすめて、レーザービームが過ぎていく。
不明艦隊のレーザーが、こちらに届き始めた。
「目標、距離7,000」
「主砲、連続射撃!」
艦長は命じた。
艦隊は、主砲全門の射撃を始めた。
立て続けに響く、レーザー砲発射の振動。
ズバーーーン!
不明艦隊からのレーザーが3番巡洋艦の右舷後部に命中した。
ドァーーーン!
ブリッジに響く大音響と振動。
[ルイテン]の4番砲搭に命中して、3本の砲身は吹き飛んだ。
「まだまだー!撃て!撃てー!」
艦長は命じた。
レーザー砲の発射振動が連続して響く。
「目標、距離5,000」
レーダー士官が言った。
その時、右舷不明艦隊からまばゆい光が放たれた。
今までレーザービームが激しく飛び交っていた宇宙空間は、動きの無い青白い光で包まれるだけの空間になった。
[ルイテン]のブリッジには、音も振動も無かった。
「くそっ、どういうことだ」
艦長はじめ、人間の全乗組員は、耳や頭を守るような姿勢でしゃがんだり、倒れこむ格好をしていた。
主砲は沈黙し、ブリッジのコントロールパネルやディスプレイに光は無く、時たま回路ショートの火花が散っている。HDも頭部や胸、指先などから火花を散らしてほぼ全てが倒れた。
ブリッジの窓からは、接近してくる不明艦隊が目視できるようになった。
先頭を航行してくるのは、間違いなく宇宙軍の戦艦で、ミサイル発射管から、青白い強力な光が放たれていた。
「意識のある者はいるか…」
艦長はなんとか声を出した。
ブリッジは静寂に包まれている。
もう、電力も止まって、回路ショートも起きない。
エルテ艦長は、コンソールにつかまって
やっと立ち上がった。
コントロールボックスの間の通路には、倒れた副長の足が見えた。
航海長は座席に座ったまま、上半身をのけ反らせ、天井を目を開けて見たまま、動かなかった。
不明艦隊はブリッジの外、100メートルほどまで近づいていた。
エルテ艦長は、人類バージョン2.4.5だった。
眼球の集光量と焦点距離を調整して敵艦の状態を確認し、艦橋部分の艦名を読んだ。
[GBー151 ASAHI]
* * *
こちら第38連合艦隊、旗艦[ジョージア]。くじら座方面第5防衛隊[ルイテン]応答せよ」
「…………」
こちら第38連合艦隊、旗艦[ジョージア]。くじら座方面第5防衛隊[ルイテン]応答せよ」
「…………」
くじら座惑星ミラ・アルファ星系に到着した戦艦[ジョージア]からの呼び掛けに対し、[ルイテン]からの応答は無かった。
「とりあえず、作戦司令部に現状を報告せよ」
[ジョージア]艦長、ケサン少将が通信担当士官に言った。
「測距、通信、環境、各部署、異常はないか?」
「レーダー、浮遊残骸を多数探知」
「通信、異常なし」
「環境ですが、空間に電磁場の異常を探知」
「どのようなものだ?」
艦長が尋ねた。
「通常の宇宙空間に存在する電磁場より大きい磁場です。しかも、チリやガスから検出した電磁波は、人工的なものと思われますし、浮遊残骸もその証拠を裏付けています」
「不明艦隊が関与しているのか?」
「そこまでは分かりませんが、戦闘があったことは確かです」
ケサン艦長は、腕組みして言った。
「とにかく、逐一、司令部へ報告せよ」
* * *
「クロ。また戦闘があったようです」
[しらかぜ]のハンガーで、サクラが言った。
「え?クロ? あ、俺のことか」
サクラに急にクロなんて呼ばれて、ビックリした。
「どこで?」
「くじら座ミラ星系の惑星ミラ・アルファ付近です」
「勝ったのかい?」
「いえ、艦隊が行方不明です」
「え?また、そのパターンなの?」
「不明艦隊の目的が不明なうちは、いたしかたないかと」
「そっか」
「私としては、このHDの回収以外に、[SRL5150便]の調査の必要性は無いかと思われます」
同感だ。サクラの進言に従うことにしよう。
銀河系は厚みが1,000光年。だけど、直径は10万光年にも及ぶ。
上から見ると、太陽系は銀河系の中心から4分の3ほど行った端っこの方にある。
とは言え、それでももし銀河系の中と外の境界線があったとしたら、そこまででも1万5,000光年ある。
しかし、銀河系を横から見ると、太陽系が真ん中の線上にあったとして、上へ行っても下へ行っても500光年ほどで、銀河系の外へ出てしまう。だから、銀河系を脱出しようとするなら、距離の短い上下方向へ飛んだ方が近道だ。
「で、サクラは、こいつらがどっちの方向へ行ったと思う?」
「写っている恒星から判断すると、銀河系を水平方向から見たとして、上の方向へ去って行っているように見えます」
やっぱりな。
俺は、サクラの推測に対して、そう思った。




