【47】やはり、敵は、エイリアンなのか
「トラクター・ビーム?」
[しらかぜ]のハンガーで、俺は、サクラに聞いた。
「電磁力で目標を捕獲してしまう電磁波です」
「スター・トレックかなんかで、なかったっけ?」
サクラに聞いた。
「あったかもしれませんね」
サクラは、ミスター・スポックか?
思わず吹き出しそうになってしまった。
とんがった耳を作って、くっ付けてやろうかな。
「なにか?」
サクラは、俺がニヤけてるのを見て言った。
「あーー、いや、なんでもない」
「トラクター・ビームで牽引されて行ってしまったのでしょう」
「そんなことができるのか?」
「このHDには、そう記録されています」
「他に分かる事はないの?」
「これ以降は、このHDが漂流中の記録になります」
「そうか」
じゃ、あまり分かる事はないか。
「ただ、このHDの目の記録から、牽引されて行った方角は、銀河系の外側方向かと思われます」
サクラは言った。HDの見た星の配置などから分かるのだろう。
「それと、わずかに写っているのですが、牽引ビームを発射しているのは、宇宙軍の艦艇のように見えます」
サクラはHDに接続した端末に写し出された映像を見せて言った。
「この少し写っているエンジンノズルの部分が、宇宙軍の戦艦で採用されている形状に酷似しています」
少ししか見えないが、確かに似ている。
「やっぱり、反乱軍か?」
俺は、腕組みして言った。
「宇宙軍諜報部によると、現在、反乱軍はほぼ壊滅状態で、直接的な反乱行動とは考えにくいかと」
「宇宙軍の諜報部は、そんなに優秀なのかい?」
スター・ウォーズだって、帝国と反乱軍の闘いなのに。
「20世紀に、スター・ウォーズという映画が制作され、宇宙を舞台とした戦争が描かれたのですが、偶然か必然か、現在の銀河系を統治しているのも、[銀河帝国]という統一国家です」
「えーーーー!そうなの?」
「はい」
「で?なに?皇帝とか、元老院とか、ベイダーとかいるわけ?」
俺は、興奮して聞いた。
「ベイダー?」
サクラは、聞き返した。
「あ、いや、なんでもない」
「皇帝はいらっしゃいます」
「えーーーー!?皇帝がいるの?」
俺は、思わず大声を出してしまった。
「はい。銀河帝国は、帝制国家ですが」
「ヤバい奴なんじゃない?」
「何がですか?」
「皇帝だよ!超能力みたいの使えるとか」
俺があまりにも興奮していると、
サクラは、急に立ち上がって、
「お体の具合いでも悪いのですか?」
と聞いてきた。
確かに、気分が悪いというか、恐怖を感じるというか。
「ね、ねえ、ほ、本当に、反乱軍とか無いの?」
「それは、たまにはありました」
「ヤバいじゃん!ヤバいじゃん!」
「何がヤバいのか、私には分かりませんが」
「今は、平和なの?」
俺は、手に汗をかいているのが分かる。
「特に大きな争乱はありませんが」
「そ、そうなのか」
「私は、政治とは無関係ですので」
「HDが反乱を起こすとか!」
サクラは、真っ直ぐ俺の方を向いた。
「そんなに反乱がお好きなのですか?」
「あ、いや、そうじゃないけど……」
「ご納得いただけないのでしたら、歴史と政治と経済について、詳しくご説明いたしましょうか?」
サクラは、呆れたようだった。
確かにHDには、政治的思想とかは無いだろう。
持ち主とか、管理者とかに忠実に仕事をすればいいだけなのだろうから。
「私の推測を申し上げてよろしいでしょうか?」
「あ、頼むよ」
「反乱は、以前はありましたが、今は無い、と言ってよいでしょう。ですので、既存の反乱軍が関与しているとは考えにくいと思います」
「うん」
「そして最近、私たちの前に姿を現している艦艇は、何らかの原因で行方不明となった宇宙軍の艦艇です」
「なるほど、なるほど」
「これらの艦艇が、何者かによってコントロールされている、と考えるのが自然かと思われます」
「誰だい?」
「銀河系外の未知の存在ではないかと、推察します」
「銀河系外の?未知の存在?人間?エイリアン?」
「銀河系内の生物については、人類にとって、ほぼ既知の存在です」
「銀河系内は、調べ尽くしてあるんだね?」
「はい。銀河系内の生物は全て、銀河系内に由来しています。系内のA地点に存在する人類がいると仮定した場合、系の完全に反対側のB地点に別の人類が存在していても、両者の由来はこの銀河系内にあるということです。そして、そのAとBの距離は10万光年です」
「で、結論としては?」
俺は、いつの間にか、サクラの手をとって聞いていた。
「分かりません」
「え、分かんないのかよ」
「銀河系内の生命に由来したものではない何かの干渉を受けたものによるのではないかと」
「………」
正直、俺には分からないんだ。
今、銀河系がどうなっているかも分からないし、
サクラの説明も難しいし。
俺の結論としては……、
「相手は、エイリアンなんだろ?」




