【45】捕獲された民間旅客宇宙船
「まだまだ破片数が多いな」
「[すみだ]と[ひゅうが]だけでは、あり余るな」
調査官たちは、多くの残骸や破片を見て言った。
「同時に、多くの遺体やHDの調査もしなければ」
「もう、これ以上増えないことを願うよ」
* * *
木星の衛星ガニメデの軌道に沿って、7隻の駆逐艦が編隊を組んで航行していた。
ミドルレンジレーダーの3次元サーチ半径は50,000キロメートル。つまり直径100,000キロの球体が横に3個並び、その上に2個、下に2個、合わせて7個の掃除機がガニメデ軌道をきれいに掃き清めて行っているのだった。
中心は[しらかぜ]で、周囲に[はまかぜ][いそかぜ][つきかぜ][あきかぜ][きぬかぜ][さわかぜ]が連なっていた。
しかし、この調査について、俺をはじめ、各艦の艦長たちは大した成果が期待できないのではないかと、薄々感じていた。一応、この世界では軍人の端くれとして行動し、きちんと命令に従い、艦の扱い等の経験を積んでいけば、腕に着けたスキルアップメーターに積算され、じきにレベルアップして昇級に繋がっていく。そのくらいしか今の時点で期待できるものはない。
ピー!
「艦長!レーダーに感あり!方位008、上下プラス2.7、距離45,000」
[しらかぜ]のハロヤ航海長が報告した。
「大きさは分かるのか?」
俺は、航海長に聞いた。
「まだ遠すぎますが、2メートル程度の大きさかと」
「んー、なんだろうな?」
ハロヤ航海の答えに、俺は……、
……何も思いつかなかった。
「SRL5150便が、何かのメッセージを残したのかもしれませんね」
サクラが言った。
「おー!そーか!なるほど!」
なんか、サクラの軽蔑的な視線を感じた。
「ハ、ハロヤ航海長、うまく回収できるか?」
「え?はい、もちろんです」
俺、動揺してるのか?
「じゃ、うまく頼む」
「了解しました」
[しらかぜ]は目標に接近した。
「距離20,000」
航海長の報告。
「ブリッジより、艦外作業班へ」
「船務部艦外作業班です」
「舟艇での漂流物回収準備をせよ」
「作業班、了解」
俺は、回収を指示した。
「[しらかぜ]より艦隊全艦へ、漂流物発見により、距離5,000にて停止し、回収作業を実施する。以上」
艦隊に停止を命令し、
「目標まで、距離5,000」
「回収作業舟艇、発進」
浮遊物に向けて、舟艇を出した。
「こちら回収班。浮遊物はHDです」
* * *
「くじら座方面軍第5防衛隊、旗艦[ルイテン]より火星本部作戦司令部へ!
現在、くじら座ミラ・アルファ星系からの不明艦隊の接近を確認。これより本防衛隊は警戒態勢に入る。付近の艦隊の支援を求める!」
太陽系から約420光年離れたくじら座で緊急事態発生の報が、作戦司令部に入った。
「火星本部作戦司令部から、うお座、おひつじ座、おうし座方面に展開中の艦隊へ。
くじら座方面第5防衛隊より支援要請あり、付近の艦隊は第5防衛隊と連絡を密にし、支援に向かうように」
このくじら座方面では、1ヶ月ほど前から防衛隊が防衛戦構築のために敷設していた探査衛星が、軒並み行方不明となる事案が発生していた。第5防衛隊は原因究明を始めていたが、今回、正体不明の艦隊の接近を探知したというわけだ。
「おうし座方面軍第38連合艦隊、旗艦[ジョージア]より、作戦司令部へ。これより本艦隊は、くじら座方面へ支援に向かう」
「こちら司令部、[ジョージア]了解」
戦艦を旗艦に据える連合艦隊は、宇宙軍でも精鋭艦隊である。その中でも第38連合艦隊は、戦艦[ジョージア]を旗艦とし、戦艦5艦、ミサイル巡洋艦、重巡洋艦、などなど多数の艦艇を擁する大艦隊であり、古くから銀河系領域拡大に貢献し、華々しい戦歴も挙げている艦隊である。
* * *
「このHDは、[SRL5150便]に積まれていたのか?」
「はい。今、メモリーを読んでいます」
[しらかぜ]のハンガーで舟艇から下ろされた、回収されたHDを見て、俺とサクラは話した。
「ガニメデで製造された、一般役務型のHDです」
サクラはメモリーを解析している。
「ガニメデ宇宙港を出航して2日目、航行不能になったようです」
「ん?原因は、故障なのか?」
「いえ、…お待ちください…」
サクラは解析を続ける。
「エンジン及び機関は正常…」
「……」
俺は、待った。
「しかし、船体の座標に変化なし……」
「ん?」
「エンジン出力100%に移行……」
「……」
「船が異常を感知し、システムが自己診断……」
「……」
「船に異常は無く、座標に変化無し」
「と、言うことは?」
俺は、口を出した。
「エンジン最大出力でも、進まない」
「うん」
「何者かに捕獲されました」
「捕獲された?」
「何者かの、トラクター・ビームに捕まりました」
「誘拐かよ?」




