【43】新たな不明艦の発見
「これは、また違うみたいだな」
[むつ]の回収作業員は言って、調査官に破片を見せた。
「塗料が違うな」
「製造年や製造場所が違う、色々な船の残骸でいっぱいだ」
不明艦隊の残骸調査にあたっている作業員は、疲れ果てていた。
「こいつらをくっつければ、もう一つや二つの艦隊ができるだろうな」
「HDの数も増やせるぞ」
そんな笑い話が出るほど、残骸は大量にあった。
「そう言えば、今度は民間船が行方不明らしいぞ」
「旅行に行くのも、気が気じゃないな」
「スペース・レッド・ラインのガニメデ線らしい」
「あー、3,000人クラスだろ」
「また事故調査が大変だな」
* * *
20:30
「ブリッジより機関へ。核融合原子炉出力50%へ」
[しらかぜ]のハロヤ航海長は、機関へ指示した。
「機関、了解」
[しらかぜ]は、トロッコ・フライのために、核融合原子炉の出力を徐々に上げていった。
その頃、他の6駆逐艦内でも、同様の指示が機関室に達せられた。
20:50
ピーッ!フィーッ!
サクラが号笛を鳴らした。
「艦長より達する。
本艦は、これより木星衛星ガニメデ軌道へ向かう。
所要時間は、約5時間30分。
航行中は、航路の安全確保と周囲警戒を厳となせ。
目的および到着地点の詳細は、現時点では不明である。情報が入り次第伝達するので、いかなる状況においても即時対応可能な準備を怠らないように。以上」
フィーッ!ピーッ!
サクラの号笛で終わった。
21:00
「艦長より、航海長」
俺は、ハロヤ航海長に言った。
「時間だ。飛ばしてくれ」
「了解しました」
ハロヤ航海長は答えた。
「こちらブリッジ、航海長より機関へ。
イオンエンジン出力アップ80%へ」
「機関から航海長へ。出力80%了解」
艦内にわずかに響いていた機械音が大きくなった。
体が少し、シートの背もたれに押し付けられる。
「現在、出力50%」
「ベリーウェル。出力100%へ」
俺は、答えた。
シートの背もたれに、体が押し付けられ続ける。
加速が続いている。
「現在、出力80%、時速8億キロ」
「ベリーウェル」
「出力100%、時速10億キロ。亜光速域です」
「おっけーーー。この感じ、いいなー」
俺は、亜光速域に達したことを確認した。
21:10
[しらかぜ]がイオンエンジン全開でトロッコ・フライをスタートさせた10分後、2番艦[はまかぜ]も左へ500メートルほどズレた地点から、イオンエンジンを全開噴射して、スタートした。
「[はまかぜ]トロッコ・フライ、スタート。3番艦[いそかぜ]スタンバイ中」
[つきかぜ]の艦内で、航海長のビルザ軍曹が、艦長のカズに報告した。
大丈夫だろうな………。
カズは、いささか心配だった。
21:20
「[いそかぜ]トロッコ・フライ、スタート!」
3番艦の[いそかぜ]が元気よくスタートした。
* * *
「これは、6975年の事故報告書だ」
火星本部作戦司令部で、宇宙軍総司令官のイアナ提督が言った。
ブリーフィングルームの巨大なマルチスクリーンに映し出されているのは、軽巡洋艦[すみだ]の勇姿だった。
そしてその後映し出されたのは、軽巡洋艦[すみだ]の無数に砕かれた残骸の映像だった。
「これは、戦艦[するが]を旗艦とする、新ワープ航路調査航行で行方不明となった、軽巡洋艦[すみだ]である。今回、この艦の残骸が、おとめ座スピカ星系付近で回収された。いや、正確には、我が軍第4機動艦隊によって破壊された、軽巡[すみだ]の残骸である。問題は、何故[すみだ]が残骸と化したのではなく、残骸となる前の[すみだ]が、なぜそこにいたか。だ」
イアナ提督は、資料の端末を見ながら、
「[すみだ]は艦隊の最後尾を航行していたが、ワープポイント突入直前に小惑星が飛来し、重力の中心物質に衝突、ワープポイントの重力が変化したところへ[すみだ]が突入してしまった。その結果、すでにワープ空間を航行していた艦隊と異なる時空へ移行したものというのが、これまでの調査による見解である」
提督は、端末を操作しながら、
「さて、ここで調査及び研究関係者諸君に解明していただきたいことは、6975年から今までの283年間、[すみだ]はどこにいたのか?ということである。我々とは全く違う時空にいたのか。または、我々と同じ時空にあったとしたならば、何故今になって、我々の前に姿を現したのか。疑問も興味も尽きないとは思うが、今後のためにも、是非、この難問を解決していただきたい」
提督はここまで言い、また端末を操作しようとしたが、
ふいにその指を止めた。
端末が受信した情報を、注意深く読んでいるようだ。
イアナ提督は会場を見回して言った。
「今入った情報を提供する。
[すみだ]を確認した調査チームが、新たな艦の証拠を発見した。艦は戦艦[ひゅうが]。6980年に行方不明となった艦だ」




