【39】新米の寄せ集めから始めよう
「宇宙軍火星本部作戦司令部より、おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊旗艦[しらかぜ]へ」
艦長、司令部から入電です。
俺がまた宇宙図鑑を観ていると、サクラが報告した。
「分かった」
俺は、図鑑の投影を消して、通信コンソールへ行った。
「こちら[しらかぜ]艦長、クロダです」
「クロダ中尉、大変お待たせした。警備行動開始だ」
司令部は、そう命令してきた。
「太陽系外周警備行動でしょうか?」
「その通りだ。7艦編隊で要請する」
「[しらかぜ]了解しました」
「警備行動計画は、すぐに送る。以上」
「了解しました」
俺は、通信を切ろうとした。が、
「あ、中尉、もう1件連絡だが、
大尉へ昇級だ。腕のスキルアップモニターを確認しておいてくれ。
昇級、おめでとう。大尉。以上」
俺は、いつの間にか大尉になった。
「サクラ、聞いたかい?」
「はい。おめでとうございます」
俺は、左手首の腕時計を見て、タッチした。
画面には、LEVEL-27 と出ていた。
たしか、以前は LEVEL-25 だったと思うが。
「サクラ、知ってたのかい?」
「はい」
「なんで教えてくれなかったの?」
「一応、司令部からの任命を待ちました」
サクラは答えた。
数分後、司令部から警備行動計画書が送られてきた。要は、太陽系の周りをグルグル回って、何か起きたら急行すればよい。単純でつまらなそうで、敵と遭遇して戦闘なんて起こりそうもない。
「[しらかぜ]艦長クロダより、第3駆逐艦隊全艦へ達する。本日、司令部より太陽系外周警備行動命令が発令された。行動開始は3時間後の1500時とし、それまでに出航及び戦闘の準備をおこなうこと。
我が艦隊への初命令である。警備行動とは言え、敵との遭遇が無いとは言えない。命令の趣旨を理解し、それぞれの任務を全うすることを願う。以上」
「艦長訓示も、板に着いてきましたね」
俺の訓示を聞いていたサクラが言った。
「俺らの駆逐艦隊は、どの程度のレベルなんだ?」
「レベルというと、何についてのレベルですか?」
ただ単にレベルと言っても、サクラには分からないか。
「何て言うの?強さと言うか、立ち位置と言うか」
「あー、なるほど、お知りになりたい趣旨が分かりました」
サクラは、少し考えた。
「おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊は、グレード7の中のクラス8、レベル10に分類されます」
「その数字が大きい方が、大したことない、ってことかい?」
「率直に言って、そうです。
まずグレード別では艦名で分けられます。[かぜ型]はグレード7及び8相当で、軍内での存在位置を示します。
次にクラスは、艦の大きさ及び規模で分類されます。[かぜ型]は比較的小型軽量艦で、それなりの武装となっています。
そしてレベルですが、乗組員の経験及び熟練度で分類されます。
艦長も当然ご承知の通り、現在の第3駆逐艦隊は訓練用軽武装艦で編成され、乗組員も訓練途上で実戦経験もありません。
ですので、我が艦隊はこのような分類での立ち位置になります」
サクラは、詳しく説明してくれた。
「サクラ、よーく分かったよ」
新米の寄せ集めってことだ。
「[いそかぜ]より[しらかぜ]へ。出航準備完了」
出航準備完了の報告1等賞は、シンヤの[いそかぜ]だった。
「こちら[しらかぜ]、[いそかぜ]了解。以後、別命あるまで待機せよ」
「[いそかぜ]了解」
シンヤは、学校でも頭がいい方だ。色々と要領良く物事を進めるのだろう。
アツシはリーダー的素質を感じる。
心配なのはドジなカズだが、まー仕方ない。
あとの新米3艦長は、まだよく知らない。
今回の出航準備のように、軽く競わせるのもいいかもしれない。
「サクラ、この腕時計は、みんなに配ってあるのかな?」
俺は、このスキルアップモニターとかいう腕時計を、みんな着けているのか、サクラに聞いた。
「はい。人類バージョン1.0は体外に着脱式となっていて、人類バージョン2.0以降は内蔵型となっています」
「このスキルアップの数値は、意図的に操作できるのかい?」
「基本的には、全ての行動や思考や判断等が自動的に中央システムに送られて処理され、レベルアップの判定基準として使用されます。しかし、計画的または緊急的に各種査定を目的として、所属部署長や上官、司令部の評価が反映される場合もあります」
「なるほど!
俺の意見を反映させることも可能なのかな?」
「司令部に上申するとよいと思います」
「おっけー!ありがとう!サクラ」
「[あきかぜ]より[しらかぜ]へ。出航準備完了しました」
「[しらかぜ]了解」
2等賞は、[あきかぜ]のヤマナカ艦長だ。
「こちら[はまかぜ]」
「[さわかぜ]より[しらかぜ]へ」
「[きぬかぜ]出航準備完了!」
残るは、
やっぱりカズの[つきかぜ]だ。
時計の針は、1500時まで、あと5分のところまできていた。




