【38】不明艦隊の痕跡
「[はまかぜ]より、[あきかぜ][きぬかぜ][さわかぜ]へ。そろそろ訓練終了でいいだろう」
[はまかぜ]イシダ艦長は、戦闘訓練中の3艦に伝えた。
「了解」3艦は答えた。
「戦闘能力も操艦能力も上がったか?」
「各艦とも、操艦については、もっと練習を積んだ方がよいと思います」
[あきかぜ]のヤマナカ艦長が答えた。
「また、じきに機会があるだろう。実戦かもしれないが」
アツシは言った。
練習を終えた3駆逐艦は、再びトンボー地域での着陸待機態勢に入った。
* * *
第15連合艦隊の各艦は、小型舟艇を出して、第17連合艦隊の残骸回収、調査を開始した。
真っ二つに折れた戦艦[コロラド]のブリッジ周囲には、多くのHDとともに、一目で人間と分かる物体も数多く浮遊していた。
「Oh! my god ひどすぎる」
舟艇の回収作業員たちは、悲痛な思いで大量の遺体回収をおこなった。また、大量のHDも。中には宇宙空間で手足をバタつかせて浮遊しているHDもあり、異様な光景だった。
残骸はあまりにも多く、舟艇はあっという間に満杯になり、何度も母艦と往復しなくてはならなかった。
「海王星軌道で攻撃された輸送船団の残骸についてのデータは見たか?」
「解析済みの分は、すでに司令部のデータベースに載ってたな」
回収作業員たちは、残骸や破片を見ながら言った。
「ここも同じだな」
「レーザーによる破断痕ばかりだな」
「ミサイルは使われてない」
「何故だろうな?」
「持ってないんじゃないか?」
* * *
「目標、距離10,000!射程に入りました!」
戦艦[むつ]のレーダー担当ニニロ大尉が報告。
「入ったら撃つんだよ!撃って、撃って、撃ちまくれ!」
艦長のエレノ少将はわめき散らした。
シュィーーーーーン!
シュィーーーーーン!
シュパ、パ、パ、パッ!
[むつ]の主砲と速射砲が発射を開始した。
音と振動がブリッジに響く。
後続の艦も、射程に入ったものから射撃を再開した。
シュィーーーーーン!
シュパーーッ!
後続の戦艦[のと]が発射したレーザー砲やミサイルが
[むつ]の右舷をかすめて前方へ飛んで行く。
ピカッ!
ビカッ!!
ピカッ!
前方でレーザーが不明艦隊に命中している。
ミサイルもあとわずかで命中するだろう。
その時、前方の宇宙空間で、眩い光が煌めき、
不明艦隊は、レーザーから消えた。
「逃げられました!」
ニニロ大尉が言った。
「バッカもーん!!なにやってる!!」
エレノ艦長は激昂した。
そんなこと言われても…。
レーダー担当のニニロ大尉は、
心の中で、そう思った。
「しかし艦長、先ほどの戦闘と今回の戦闘ともに、相手に損害を与えたと思われる交戦をおこなったのは、我が艦隊が初めてですよ」
怒り鎮まらないエレノ艦長に、副長のシダク大佐は言った。
「不明艦隊が消える時のあの光や、レーダー上の航跡残像から、航行方法はプラズマEMドライブと思われますので、やはり宇宙軍由来の艦隊と思われます。今回の接触でここまで分かったのは、我々の功績でしょう」
副長は、語った。
「そうか!そうだな!我々の功績だ!
早速、今回のデータを司令部に送れ!」
「了解しました」
エレノ艦長の機嫌は直った。
「測距、ロスト地点までどのくらいだ?」
副長は、レーダー担当ニニロ大尉に聞いた。
「あと3,000です」
「よし、後続のフリゲート艦群に、ロスト地点の残骸回収を指示せよ」
「アイアイサー」
「[むつ]よりフリゲート艦群FG-01、02へ。方位00、距離3000で、浮遊残留品を回収せよ」
ニニロ大尉は、後方の回収作業隊に指示した。
「こちらFG-01、アイ」
「ロストポイントまで、あと1,000」
「むつ」のフタラ航海長が報告。
「あそこらのが、そうかな?」
ブリッジの窓から前方を注視していか副長のシダク大佐が、何かを見つけて言った。
「キラキラしてますね。HDの破片でしょうか?」
暗視双眼鏡を見ながら、フタラ少佐が言った。
「後方より、フリゲート艦FG-01と02が回収に向かいます」
レーダー担当のニニロ大尉が報告した。
するとほどなく、[むつ]の艦橋左舷を、2隻のフリゲート艦が追い越して行き、前方のロストポイントで舟艇を降ろし始めた。
2隻のフリゲート艦は、3隻ずつ舟艇を降ろし、計6隻で回収作業をしている。
ここにある浮遊残骸及び破片は、全てがワープ逃亡する前に機動艦隊が発射したレーザーによって破壊された不明艦隊のものだ。きっとさらなる詳細なデータが得られるだろう。
その後、[むつ]の左舷をもう1隻のフリゲート艦FG-03が通過し、計9隻の舟艇がくまなく回収作業をおこなった。




