【36】不明艦隊へ攻撃開始!
「艦隊全艦!亜光速80%!9億キロを突っ走れ!」
ミニ・ワープを終えた戦艦[むつ]は、イオンエンジン・ハイパワーモードに切り替え、亜光速航行の態勢に入った。そして、各艦もそれに続く。
「航行中にレーザー・エネルギーを充填せよ!また、ミサイルも予想到達点をセットしておけ!亜光速域から出たら、一斉攻撃を開始する!」
[むつ]の艦長、エレノ司令は、全艦に命令した。
「距離、あと2億キロメートル、所要時間20分」
「あと20分だぞ!」
司令がはっぱをかける。
「レーザー、エネルギー充填完了」
「よろしい!」
「距離、あと1億キロメートル」
「全艦、減速開始」
「全艦減速開始、ようそろー」
司令である艦長と戦術長と航海長とのやりとりのもと、
戦艦[むつ]は不明艦隊の背後に迫りつつあった。
* * *
「第15連合艦隊、旗艦[カリフォルニア]より、火星本部作戦司令部へ」
「こちら司令部、[カリフォルニア]どうぞ」
「戦艦[カリフォルニア]艦長、カジン少将だ。本艦隊は先の命令を受け、現在、ふたご座ポルックス星系警備行動を実施中である。しかしながら、情報と相違し、ワイドレンジレーダーによる索敵に対しても当該宙域に異常はみられない。よって、本艦隊は、こいぬ座プロキオン方面へ第17連合艦隊の救援に向かうことを進言するものである。検討を要請する。以上」
時間軸的には、約1週間ほど前から、
クジラ座ミラへ向かう不明艦隊の探知。
オリオン座リゲルへ向かう不明艦隊の探知。
海王星軌道での輸送船団への攻撃。
こいぬ座プロキオンでの第17連合艦隊の交戦。
おとめ座スピカ遠方で不明艦隊を発見。
というように、不明艦隊による広範囲かつ多様な干渉が発生していた。
で、広範囲かつ多様なため、宇宙軍としても、対応が間に合っていないのが現実だった。そして一番の問題が、不明艦隊は神出鬼没であり、予測が全く不可能なことだった。
よって、宇宙軍作戦司令部が、第15連合艦隊司令官、戦艦[カリフォルニア]の艦長であるカジン少将の進言を認めるのに、何の異論も無かった。
「火星本部作戦司令部より第15連合艦隊[カリフォルニア]へ」
「こちら[カリフォルニア]。どうぞ」
「宇宙軍総司令からの直令として、こいぬ座プロキオン方面へ、第17連合艦隊の救援に向かうことを認める。生存者の救出を最優先任務とし、当該宙域の警戒を厳とし、万一不審な干渉があった場合は、これを排除せよ」
「こちら第15連合艦隊司令カジン。了解した」
* * *
「目標、方位018、上下0、距離30,000、速力500で航行中」
戦艦[むつ]の測距長、つまりレーダー担当士官のニニロ大尉が報告した。
「艦隊全艦へ達する!速力800へ増速!有効射程距離10,000に達したら、全砲門開け!」
エレノ艦長は、大声で命令した。
ウィーーー
かすかな機械音とともに、
第4機動艦隊の全艦艇の全砲門と、全ミサイル発射管が方位018に向けられた。
「目標艦隊、戦艦級2、重巡級4、軽巡級2、駆逐艦級4
、他小型艦艇6と判明。
本艦隊も敵レーダーに捕捉されました」
ニニロ大尉が報告した。
「距離は?!」
司令が確認する。
「12,000です!」
大尉が答える。
「くそ!発射だ!撃てー!」
エレノ艦長は大声で命令した。
シュィーーーーーン!
シュィーーーーーン!
シュパ、パ、パ、パッ!
シュパ、パ、パッ!
シュィーーーーーン!
ズバーーーン!
ズバーーーン!
ブリッジに音響と振動が響きわたり、
戦艦[むつ]の艦首砲塔全門、速射砲全門、
前方向へのミサイルが
一斉に発射された。
その一瞬後、
[むつ]が攻撃開始したのを確認したかのように、
戦艦[ひたち][のと][ひだ][みかわ]が一斉射撃を始め、ミサイル巡洋艦、重巡洋艦、駆逐艦が続いた。
大口径レーザー砲、小口径速射砲、
大型艦対艦ミサイル、高速ミサイル、誘導ミサイル。
ありとあらゆる武装が稼働し、束になって前方の不明艦隊へ向かった。
10,000キロ彼方の不明艦隊は、後方へ向けてレーザーを撃ち始めた。第4機動艦隊の接近に気付くのが遅れたのか、準備が間に合わなかったのか、バラバラと撃ってくる。艦隊同士の中央付近で、不明艦隊からのレーザーと第4機動艦隊からのミサイルが交差し、命中したミサイルの爆発の明滅がこれまでに見たこともない花火大会のように、真っ暗な宇宙空間に展開された。
機動艦隊から発射されたレーザーは射程が足らず、第1波は不明艦隊まで届かなかったが、連射しているうちに双方の距離は縮まり、第2波射撃からは命中するようになった。そして、相手からのレーザーも[むつ]の舷側をかすめた。
「レーザー、敵艦に命中!」
「敵、最後方巡洋艦にミサイル命中!」
レーダーを見ている士官たちが立て続けに報告する。




