【34】銀河系外 不明艦隊を探せ
「こちら第17連合艦隊、旗艦[ニュージャージー]。宇宙軍火星本部作戦司令部、聞こえるか。
繰り返す。こちら[ニュージャージー]、作戦司令部、聞こえるか」
[ニュージャージー]の呼び掛けに反応するものはなかった。
「アンテナがやられたのか?」
艦長のスラト中将は、通信士官に聞いた。
「損傷がひどすぎて、分かりません」
「他の艦の状況はどうだ?」
「通信システムがダウンし、あらゆる方向に戦域離脱したので、詳細を知ることは極めて困難かと」
「本艦の機関はどうなっておる」
「こちらブリッジ、機関、とれるか?」
「… 」
機関部からの応答は無い
「基本行動計画では、この宙域の緊急避難場所として、プロキオン第3惑星、プロキオン・カイに退避することとなっております」
今、ブリッジで唯一生存している通信士官は、スラト艦長に言った。
「では、なんとか生存者を探しだし、機関を確認し、カイにたどり着くよう、全力を上げよう」
「了解しました」
しかし、通信士官の腰は上がらず、
「生存者は、ブリッジに集合せよ」
と、マイクに向かって言っただけだった。
スラト艦長も、通信士官も知らなかったが、宇宙空間から見た[ニュージャージー]は、艦の全長が建造時の3分の2ほどになっていた。つまり、艦の後部3分の1の部分には機関室があり、イオンエンジンも核融合原子炉もそこにあり、それらのエネルギーを噴射するエンジンノズルが付いていた。そして、それらをひっくるめた部分が今の[ニュージャージー]には無かった。
破損箇所から空気が漏れ出すのを防ぐ閉鎖隔壁は自動で作動したが、艦内の空気が保たれたのはほぼブリッジ付近のみで、艦長と通信士官以外の人間は、艦内で生き残ることは不可能だった。
HDは空気が無くても作動するので、艦内を動き回ったり、足を滑らせて破損箇所から艦外へ飛び出してしまったりしていた。ブリッジ付近までたどり着いたHDは、今は電源喪失し開閉不能となった隔壁ドアの外で不必要に動き回っているだけだった。
通信士官は、ゾッとした。もし艦が破損する前に宇宙服を着るのが間に合った人間がいて、さっきの自分の呼び掛けでこの隔壁ドアの外へ来て、電源喪失でドアが開かないことが分かり、手動ギアでドアを開けたら…。
ブリッジの空気は一瞬で放出されるだろう。
士官は、必死で宇宙服を探した。
* * *
「司令!ワイドレンジレーダーに感あり!
方位063、上下角プラス72度、距離10光年。
おそらく艦隊です。当該宙域は厳密には銀河系外になります」
第4機動艦隊旗艦、戦艦[むつ]の通信士官ハキン少佐は艦長のエレノ少将に報告した。
「見つけたか!絶対、逃がすな!」
エレノ少将は艦長席で立ち上がり、コンソールパネルに拳を叩き付けた。
「速力は、どのくらいなんだ?」
「500程度の通常航行のようです」
艦長の問いにハキン少佐は答えた。
「航海長、ミニ・ワープだ。1億キロ後ろまで着けろ」
「ミニ・ワープ、了解。1億キロ手前へ」
航海長のフタラ少佐は復唱した。
「ブリッジより機関。ミニ・ワープ準備」
「機関、了解」
にわかにブリッジが活気付いた。
「奇襲なんか掛けやがって。正体を暴いてやる」
エレノ艦長は、決意を固めた。
「直近の時空の歪み点、方位352、上下プラス0.6、距離2,700」
フタラ航海長が報告した。
「向こう側はどうだ?」
艦長が聞いた。
「いい所に出そうです」
航海長は答えた。
「では、全て任せる!驚かせてやれ!」
艦長は、未確認艦隊の追跡を命令した。
* * *
「火星本部作戦司令部より[しらかぜ]」
「こちら[しらかぜ]。司令部どうぞ」
火星本部から、冥王星に着陸待機中の[しらかぜ]に連絡が入った。
「総司令官より直令。
おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊は、緊急組織改変のため、7艦編成とする。現在冥王星へ航行中の3艦が到着しだい、一旦、太陽系広域警戒を任となせ」
「[しらかぜ]了解」
俺は、答えた。
突如、艦隊の編成と任務の変更か。
最近異常事態が多いが、いくらなんでも10艦編成を7艦に減らすのは、少し心許ない。
「艦編成と任務の変更だってさ」
俺は、サクラに言った。
「任務を全うすればよいだけです」
分かってるよ。
たぶん、おれの口はとんがってただろう。
「駆逐艦[あきかぜ]より[しらかぜ]へ」
「こちら[しらかぜ]。[あきかぜ]どうぞ」
俺は通信しながら、サクラと顔を見合わせた。
「はじめまして[あきかぜ]艦長、ヤマナカ少尉です」
「代わりまして[きぬかぜ]艦長、シモダ少尉です」
「続きまして[さわかぜ]艦長、タグチ少尉です」
「[あきかぜ]のヤマナカです。第3駆逐艦隊追加艦3艦、ただ今冥王星圏に到着いたしました。これよりトンボー地域への着陸態勢に入ります」




