【33】冥王星で 一休み
「てんびん座方面軍第6機動艦隊、旗艦[ながと]より、宇宙軍火星本部へ。これより本艦隊は、先に要請のあった、おとめ座方面軍支援のため、スピカへ向けてワープ航法で航行するための準備にはいる。許可及び記録を要請する」
「こちら火星本部作戦司令部。[ながと]了解。超遠距離圏行動のため、至急作戦計画を作成し提出すること。司令部から許可しだい、作戦行動を実施せよ」
「[ながと]了解」
戦艦[ながと]艦長、ウスダ少将は司令部に答えた。
「さて、さて、シナリ副長、今回の未知の敵からの数回の攻撃について、ある程度共通な要素を持った敵であるという前提に立って対応を検討した方が効率的であると考えるが、何か意見はあるか?」
「これまでの情報では、
敵は目標に対し、直上または直下から攻撃してきています。しかも、現在までは、銀河系の外縁部で多く発生しています」
シナリ副長は続けた。
「噂では、反乱軍の可能性も示唆されていますが、これまでの反乱軍であれば、ゲリラ戦法的な攻撃もあり得るはずですが、それがありません。さらに、反乱軍であれば、わざわざレーザーのみの攻撃にこだわり、ミサイルを使用しない戦術を取る必要性はありません」
「そうだな。そこが一番の関心事だ」
ウスダ司令は言った。
「そこで最も優先的に考えられる敵の目的は、敵の正体を徹底的に秘匿することです。ミサイルでは、残骸の痕跡が残ります。敵は、これを必死に隠そうとしています」
「では、単なる海賊か?」
「それこそ、あり得ません。物資、資材が全く持ち去られていませんので」
「そうか。
一体、どのように結論付ければよいものか」
「あと特徴的なのは、攻撃は、銀河系外縁部で起きています。ご存知のように、銀河系は直径こそ10万光年の大きさですが、厚みはわずか1,000光年ほどの薄い円盤状の形をしています。
で、攻撃は銀河系の端の方の薄い部分で、上または下から銀河系を挟むように攻撃を仕掛けてきています。ですので、敵の基本的な居場所、というか基地のようなものは、銀河系の直外にあるのではないかと思われます」
シナリ副長は、このように推論した。
「なるほど!なるほど!論理的だな。
では、その方向で報告書を作ってみてくれ」
[ながと]のウスダ司令は期待して言った。
* * *
[しらかぜ]は、冥王星のトンボー地域に着陸していた。冥王星の引力はごくわずかなので、6本のアンカーを地表に打ち込み、張力を一定に保つことのみで艦は安定していた。
また、せっかくだから、ということで、科学調査部数名が雪原に降り立ち、調査をおこなっていた。
冥王星のトンボー地域、つまり白くハート形に見える所は、冥王星の衛星等による潮汐効果で、その地下で何らかの活動が起きているのではないかと推測されてきた歴史がある。そういうことに興味のある科学調査部員などは、現場を目の当たりにすれば、居ても立ってもいられなくなるのが普通なんだろう。
[しらかぜ]の科学調査部員が地質調査をおこなっていると、上空に3つの光点が現れた。
「[はまかぜ]より[しらかぜ]へ。ただ今、冥王星圏に到着。距離15,000キロメートル。トンボー地域へ向けて微速航行中」
[はまかぜ]のイシダ艦長が[しらかぜ]へ報告した。
「[しらかぜ]より[はまかぜ]へ、了解。着地点、トンボー地域に異状なし。気を抜かず着陸して、旨いものでも食って、十分休んでくれ」
「[はまかぜ]了解。ご厚意に感謝します」
冥王星上空に、同型駆逐艦3隻が間隔を保ったまま、ゆっくりと近付いてきた。
「なかなか、壮観なもんだ」
俺は、サクラに言った。
「後は、良い戦績を残せると良いですね」
「そうだね。それにはサクラの協力が必要だ」
サクラは、コクりとうなずいた。
「[はまかぜ]上空100メートルで静止。
これより、微速降下開始。アンカー射出準備」
[はまかぜ]が降下を開始すると、少し離れて、[いそかぜ][つきかぜ]も降下を開始し、地表にアンカーを打ち込み、4艦が冥王星に着陸して堂々と並んだ。
「おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊、旗艦[しらかぜ]より、火星本部作戦司令部へ。ただ今、本艦以下4艦、冥王星に着陸。これより残りの艦の到着待機いたします」
「火星本部作戦司令部より、[しらかぜ]へ、了解」
司令部から返答が入って、通信は終了した。
「はあーーーーー!」
みんなそれぞれ、思いっきり伸びをした。
航海は、面白いけど、疲れる。
これに戦闘が加わったら、こんなノンビリすることはできないだろう。
「さー、食事だ、食事!」
「艦長!多少の飲酒は許されますか?」
みんな一気に緊張が解けたようだ。
「私たちHDは、充電をおこない、希望者にはシステム点検を実施いたします」
サクラは言った。
「いい機会だ。ゆっくりしてくれ」
俺は、サクラの肩を叩いた。




