【30】プロキオン星系の戦い
「艦長!ケンタッキー被弾!第3砲塔使用不能!」
ウィーーーーーン!
ウィーーーーーン!
艦内に警報が鳴り響く。
ドガーーーンッ!
大きな衝撃。
「本艦右舷中央に被弾!隔壁閉鎖!」
ガーーーンッ!
ドドドドッ!
「艦尾被弾!機関室火災発生!」
ウィーーーーーン!
警報が鳴り続く。
「原子炉、出力低下75%!」
戦艦[ニュージャージー]のブリッジは壮絶を極めていた。
「敵はどこだ?!どこから撃ってくる?!」
スラト艦長は混乱していた。
「レーダーが破壊されて、索敵不能です!」
「目視では、分からんのか?」
「遠方からのレーザー攻撃で、位置は分かりません」
「レーザーが発射された付近を狙って撃て!」
「やっていますが、当たっていません」
「ミサイルはどうした?!」
「全て、迎撃されています!」
「なんということだ」
ウィーーーーーン!
ウィーーーーーン!
警報が続く。
ドーーーーーーンッ!
ドガがガガカーンッ!
集中砲火を浴びているのは明らかだ。
「アラバマ、大破!航行不能です!」
第17連合艦隊は、宇宙軍の中でも最大級の艦隊だ。
旗艦の戦艦[ニュージャージー]を中心に、
戦艦6、空母3、イージス巡洋艦5、ミサイル巡洋艦5、重巡洋艦8、フリゲート艦10、駆逐艦15、さらに潜宙艦5隻までも加わった大艦隊だった。
それが、池に浮かべられた船のプラモデルが、上から降ってくる小石に破壊されていくようであった。
艦どうしが衝突している状況も見える。
駆逐艦が大爆発を起こして、完全に飛び散った。
「全艦退避!この戦闘宙域から離脱せよ!」
スラト司令は、全艦に命じた。
動ける艦は徐々に、散開しはじめた。
「魚雷艇、哨戒艇、掃海艇は、救助活動せよ」
完全に統制を失った艦隊は散り散りになり、
逃げ惑う大型艦の間を縫いながら、
小型艦艇が救助活動をおこなった。
しかし、その間も、レーザー砲の雨が降ってくる。
敵の攻撃はレーザー砲のみで艦隊を破壊している。
ミサイルなどでの攻撃が無いので、
敵の兵器の痕跡が残らない。
「全艦、撤退せよ!この戦闘を放棄せよ!」
第17連合艦隊は、この戦いから撤退した。
宇宙軍本部への第1報では、
大型戦艦[ニュージャージー] 大破。航行不能。
大型戦艦[アラバマ] 大破。航行不能。
戦艦[ケンタッキー] 中破。艦長死亡。
戦艦[コロラド] 大破。航行不能。艦長死亡。
その他艦船の詳細は不明。
以上が報告された。
* * *
「艦長、こいぬ座プロキオン星系で、大規模戦闘があったようです」
[しらかぜ]のブリッジで、サクラが報告した。
「プロキオン?」
「艦長も、もう少し宇宙について勉強するといいですね。こいぬ座のプロキオンは、おおいぬ座のシリウスと、オリオン座のベテルギウスとともに、冬の大三角形として有名ですよ」
「あ!冬の大三角ね!それなら知ってる!」
「冬の大三角という名前だけ知っているという意味ですよね?」
「あ、はい、おっしゃる通りです」
「しかし、一体、何が起こったのでしょう?」
サクラは、ネットワークで探りをいれているようだ。
「交戦したのは、第17連合艦隊のようです」
「連合艦隊となれば、デカいんだろ?」
「戦艦6隻、空母2隻を中心とした、大型艦艇だけでも50隻から成る大艦隊です」
「で、どうなったんだ?」
「全艦が戦線離脱、撤退しました」
「被害は?」
「艦隊全体の被害率は、93%です」
「敵の見当はついてるのか?」
「ここ海王星軌道でも要検証な事態が起きましたが、
状況としては、酷似しています。
つまり、敵の痕跡が不明です」
「どうも、おかしいな。未知の新しい敵か?」
「現時点では、何ともいえません」
「分かった。進展があったら、教えてくれ」
「了解しました」
「航海長、進路を冥王星へとれ」
「進路、冥王星。了解しました」
ハロヤ航海長は復唱した。
「方位725、両舷半速前進、速力500」
微妙な機械音と振動が[しらかぜ]のブリッジに伝わった。
* * *
ピュー!フィー!
[はまかぜ][いそかぜ][つきかぜ]3艦の艦内に号笛が
響いた。
「[はまかぜ]より各艦に達する。
これより本艦隊は、おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊集結地点の冥王星へ向かう。目標までの距離は、59億キロメートル、所要時間は約6時間である。航行中は前方航路の異常確認と周辺宙域の警戒を厳となせ。3艦、無事に目標へ到達することを望む。以上」
「機関、アイドルから出力50%へ」
「エンジン出力50%、了解!」
各艦長は航海長へ命令し、
3隻の駆逐艦は、2基のメイン艦尾エンジンノズルからイオン化ガスを噴射し、編隊航行態勢で前進を始めた。
目標の冥王星までの距離は59億キロ。トロッコ・フライ航法で、約6時間の道のりである。




