【29】とりあえず 3艦合流
「第223回収部隊より、トリトン基地へ。浮遊物回収第1段階終了。これより帰投する」
「トリトン基地より、223カーゴリーダーへ。了解」
海王星軌道上の輸送船団の残骸回収作業が始まった。
交戦したと思われる宙域から海王星の衛星トリトンの基地まで、輸送船たった30隻ほどでピストン輸送する。
全て回収し原因が特定されるまで、どのくらいの時間が必要だろうか。
「艦長より達する。本艦は1300時まで現宙域で待機する。この間、各自、適宜休息を取るように。以上」
俺は、艦内全員に通達した。
少しここで待機、監視して、冥王星を第3駆逐艦隊の集結地として、そこで他の艦を待つことにしたのだ。
「艦長、冥王星は、良い選択です」
サクラは言った。
「そうだろ?太陽系の中を見るのも、外を見るのも、
ちょうどいい」
俺は、自慢気にそう言った。
「それはそうと、ドバシ艦長の[つきかぜ]が出航し、現在、訓練航行中のようです」
「よーし。みんな動き出したか」
サクラの報告に答えて言った。
「[はまかぜ]と[いそかぜ]は2隻で遊んでるらしいな」
「両艦で、共同訓練を実施しているのですよ」
「分かってるよ。例えだよ。例え」
「あ、人間は、そういう言い方をするんですね」
サクラは人間のジョークを理解したようだ。
* * *
「第17連合艦隊、旗艦[ニュージャージー]より宇宙軍本部へ。
現在、本艦隊は、こいぬ座方面警戒機動艦隊として警備航行中。
今より10分前、本艦のスーパーワイドレンジレーダーが、銀河系外部よりこいぬ座プロキオンに向かう飛行物体を探知。現在、自然物か人工物かの判別は不能。対応の協議を要請する」
火星の宇宙軍総司令部に、銀河系のはるか彼方から緊急通信が入った。
プロキオンは、夜空に明るく輝く冬の大三角の1つである、こいぬ座の恒星で、太陽系から11.4光年の距離がある。
先の、クジラ座のミラへ向かう飛行物体と同様のパターンとも考えられるため、宇宙軍としては、この2件に関連性ありとして、対応協議を始めることとした。
* * *
俺は、この情報を、サクラから聞いた。
そこでまた驚いたことだが、この宇宙軍の通信システムについて、速度が驚異的なのである。
電波の速度は、光の速度と同じである。
1光年離れた場所と通信するには、片道1年かかる。
現在宇宙軍は、宇宙船を飛ばすのに、通常航行と、トロッコ・フライと、ワープ航法と、ワーム・ホール航法を実用化している。
ワープは、宇宙空間の所々にある重力の歪みの穴から別の穴まで、時間の流れの違う次元の空間を飛ぶ技術である。
また、ワーム・ホール航法は、安全な重力のブラックホールから事象の地平線を越えてワーム・ホールに入り、別の出口つまりホワイトホールから宇宙空間に戻る技術である。
宇宙船はこれらの技術を使って高速航行するわけだが、なんと、人類は、ワープで使う別の空間、つまりパラレルワールド的な空間に、通信送受信機を設置することに成功した。
これを銀河系内に張り巡らし、銀河系の端から端までも、光速どころではない、ほぼ瞬間的な通信を可能にしたのだ。
* * *
「[つきかぜ]艦長ドバシより、[はまかぜ]艦長、イシダ少尉へ」
「[はまかぜ]イシダだ。ようやくお出ましだな」
「大変、お待たせいたしました」
「戦闘訓練はどうした?」
[いそかぜ]カドマツ艦長が聞いた。
「すでに、両艦の反対側で実施してきました」
「俺たちが飛んでる反対側でコソコソやったのか」
「ちゃんと高速魚雷艇2隻、やっつけました」
「ほー、やるじゃん」
イシダ艦長、つまりアツシが感心した。
「艦は壊さなかったか?」
カドマツ艦長、つまりシンヤがからかった。
「出航前から壊れてますから」
「あは、は、は、は、は」
3人で笑ったのは、久しぶりだった。
「そう、そう、アツシ、じゃなかったイシダ艦長は、
中尉に昇格のようで、おめでとうございます」
「さっき、ウメから聞いた。
貴様らも、戦闘訓練だけでもかなりのスキルアップになるから、じゃんじゃんやった方がいいぞ」
「貴様らって、旧日本軍みたいな言い方だな」
「昔と今と未来がごっちゃになっちゃって、
よく分かんねーよ」
「時間がある時にHDから情報収集しとくといいぞ」
ピーン
「入電です」
「[しらかぜ]艦長クロダより、[はまかぜ][いそかぜ][つきかぜ]各艦長へ。
本艦は現在、海王星軌道ポイント195にて輸送船団被破壊事件を監視中。今後、第3駆逐艦隊の集合地点を冥王星と定めるので、適宜訓練を重ねつつ、3日後の1200時までに冥王星に到着せよ。以上」
「[はまかぜ]イシダ了解」
「[いそかぜ]カドマツ了解」
「[つきかぜ]ドバシ了解」
「冥王星か、太陽系の果てだな」
「冥王星は、太陽系の惑星じゃないんだぜ」
「水、金、地、火、木、どっ、天、海、めい。だろ?」
「冥王星は、準惑星なんだよ」




