【28】サクラの宇宙図鑑解説
「船体の破片と、護衛艦の速射砲の砲身、輸送積載物の破片、HDの一部を回収しました。現在、本艦第5物資搬入減圧室で放射能及び宇宙線量を測定中です」
[しらかぜ]のブリッジで、サクラが報告した。
「攻撃被弾で破壊されたのか?」
「ほぼ間違いないでしょう」
何者かからの攻撃を受けて輸送船団が全滅したと、
サクラは推測した。
「宇宙軍の物以外の痕跡は?」
「今のところ、発見されていません」
「交戦の痕跡は?」
「もちろん、直衛艦隊は応戦しています」
「では、宇宙軍同士の戦闘だと?」
「その可能性が非常に高いと思われます」
サクラは、仲間である我ら宇宙軍が輸送船団を襲ったと言っている。
だとしたら、目的は何か。
物資の強奪か。
または、反乱か。
「また、まだ完全な計算結果を得ていませんが、浮遊物の総質量と元々の輸送船団の総質量が合致します」
「と、言うと?」
サクラに、先の説明をうながした。
「直衛艦隊が応戦したはずですが、敵の艦艇等の痕跡が含まれていません」
「敵には、1発も命中しなかったというのか?」
「いえ、総質量が変わっていないということは、物資の強奪ではなく、船団の破壊が目的だったと思われます」
「なるほど。調査、ご苦労。データは火星本部へ送っておいてくれ」
「了解しました」
とりあえずこの事件の初動調査は終わった。
おそらく今ごろ、回収部隊が編成され、これらの大量のの浮遊残骸は、海王星の衛星トリトンの基地に運ばれ、詳細な調査がおこなわれるだろう。
* * *
カズは[つきかぜ]のブリッジに戻った。
ピィー!フィー!
「艦長はブリッジ」
スミレが号笛を鳴らして、艦長の所在を告げた。
「さてスミレ、遅れをとったな。行くか!」
「了解しました。ちなみに私、専任曹長の任命を受けました。よろしくお願いいたします」
「おー!おめでとう。たとえ人間でも、部下には厳しく命令してくれよ」
「了解しました」
スミレは向きを変えて、
「ビルザ航海長、出航準備せよ」
「出航準備、了解」
航行システムコンソールにいたビルザ航海長が、
スミレに復唱した。
「ブリッジより機関へ。
イオンエンジン、アイドルから出力30%へ」
「こちら機関。了解」
「[つきかぜ]より地上管制へ。これよりアンカー解除する」
「こちら地上管制。アンカー解除了解。地上員退避します」
63番ハンガーで空中に固定されていた[つきかぜ]は、全てのアンカーから解き放たれ、晴れて自由の身となった。
「[つきかぜ]より防空管制へ。これより出航する」
「火星基地防空管制より[つきかぜ]へ。出航を許可する。グッドラック」
「下方スラスター噴射。垂直上昇100メートル」
スミレは、全ての指示を流れるようにおこなう。
[つきかぜ]は63番ハンガー上空100メートルで静止した。
* * *
「これから、どうするか」
俺は、サクラに問い掛けた。
「そうですねー。特段の命令もありませんから、この太陽系内で我が第3駆逐艦隊の集結を待つのがよろしいかと」
「どこで待つのがいいかな?」
「土星の雲の中を漂うか、タイタンのメタンの海にプカプカ浮かんで待つとか」
サクラは答えた。
「面白いこと言うねー」
俺は、ブリッジのモニタースクリーンで星の図鑑を見ながら言った。
「太陽系に一番近い恒星は、プロキシマ・ケンタウリか」
「はい。ケンタウルス座の赤色矮星で、地球から、4.2光年の距離です」
「赤色矮星ってのは、太陽の未来の姿なのかい?」
「いいえ。例えれば、太陽の赤ちゃんです」
「赤ちゃん?」
「はい。太陽になりきれていないというか」
「へーーー。太陽の赤ちゃんか」
「太陽より小さいため、内部の核融合反応がゆるやかで、今後、太陽よりもはるかに長い時間、輝き続けます」
「ほおーーー。あの近くに、惑星もあるんだよな?」
「プロキシマ・ケンタウリ・ベータ惑星があります。
プロキシマ・ケンタウリのハビタブル・ゾーン内にあり、水の存在が確認されています」
「宇宙ってのは、すごいよなー」
俺は、宇宙が大好きだ。
「太陽も大きくなってるんだろ?」
「膨張と収縮を繰り返す傾向のようです」
「で、爆発するの?」
「太陽程度の質量では、超新星爆発には至らず、赤色巨星となった後、白色矮星となり、冷めていきます」
「デカい恒星は、爆発するの?」
「そうです。そして大爆発後の残骸やガスが大きな重力で集まり、中性子星やブラックホールになります」
「あの、真ん中に串が刺さったみたいのが、中性子星?」
「そうです。高速で回転し、秒単位で規則正しくX線や、ガンマ線を放出しているので、パルサーと呼ばれます。世界で最初のパルサーは、1960年代に発見され、CP1919と名付けられ、地球から2,300光年離れています。ちなみに一番最近発見されたパルサーは、PS72系パルサーといいます」




