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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
26/132

【26】海王星軌道 到着

火星基地の50番ハンガーと63番ハンガーの半球形のドームが開き始めた。


07:30

駆逐艦[いそかぜ]と[つきかぜ]は安定スラスターを噴射し、アンカーを解かれて、ハンガー内の空中に停止した。


07:45

「駆逐艦[いそかぜ]より太陽系方面軍司令部へ。

出航準備完了」

「司令部より[いそかぜ]へ。了解。出航を承認する。

幸運を祈る」


シンヤは司令部とのやり取りを終え、

「艦長より達する。本艦はこれより出航する」

と、艦内に通達した。


「航海長、垂直上昇100メートル」

「垂直上昇100メートル。アイ」

カドマツ・シンヤ[いそかぜ]艦長は、

命令発出と復唱の方法を、こう決めたようだ。

[いそかぜ]は艦下方スラスターを噴射し、火星上空100メートルまで垂直上昇した。


「[いそかぜ]より[つきかぜ]へ」

シンヤは、[つきかぜ]が上がって来ないので連絡をとってみた。


「こちら[つきかぜ]専任曹長スミレです」

「[いそかぜ]艦長カドマツだが、どうした?」

「右舷エンジンに不具合が発生しました。現在、艦長と機関長が機関室で調査中です。司令部へは報告済みですので、貴艦は予定通り出航してください」

「こちら[いそかぜ]了解した。ドバシ艦長に、先に行くと伝えてくれ」

「[つきかぜ]了解しました」

スミレが答えて、通信終了した。


「よし、航海長、試験航行だ」

「試験航行、アイ。

方位020。速力200。高度2,000メートル」

「ベリーウェル」

シンヤが承認すると、駆逐艦[いそかぜ]は、高度を上げながら試験航行を開始した。


* * *


ピュイーーーーーン!

接近警報が[しらかぜ]のブリッジに響いた。

「レーダー、感あり。前方に多数の浮遊物を探知」

レーダー担当HDが報告した。


「機関停止」

「機関停止、了解」

ハロヤ航海長が、復唱した。

海王星軌道へ向かっていた[しらかぜ]は減速を続けていて、時速200キロ程度まで落ちたところで、レーダーに多数の浮遊物の存在を確認した。

[しらかぜ]は、艦首スラスターを前方に噴射し、完全停止した。


「なんだろうな?」

俺は、サクラに聞いてみた。

「可能性が高いのは、船の残骸でしょう」

まー、そうだろうな。


「この辺りの最近の航行記録をあたってみてくれ」

俺は、サクラに調査を命じた。

サクラは、自分のコンソールパネルの穴の1つに、自分の人差し指を接続した。


「ところで、なぜ、着替えないのですか?」

唐突にサクラが言った。

「なにが?」

「制服です。艦長室に、中尉の制服を用意してありますが」

「あ、そうなんだ。これじゃ、変か?」

俺は、カーキ色のシャツの裾を引っ張って、言った。


「艦長、ここは一応、軍隊です。

変とかなんとかよりも、階級に応じた制服を着用してください。

尉官ともなれば、上着制服も制帽もありますから」

「あ、はい、すんません」

俺は、なんか、サクラに頭が上がらないことがある。


「現地時間で6日前、

太陽系方面軍、第41輸送団、第2327輸送隊が消息を絶っています。

編成は、護衛艦2、駆逐艦2、魚雷艇4で、輸送船20を直衛していました」

サクラが報告した。


「なるほど。

もう少し近付いて調べよう。

航海長、漂流物に注意し、ギリギリまで接近せよ」

「直近まで接近。了解。方位0、両舷微速100」

[しらかぜ]は、ゆっくり前進しはじめた。


* * *


「艦長、[いそかぜ]から入電です」

[はまかぜ]のタラン軍曹が報告した。

「つなげ」

アツシは、タラン軍曹に命じた。


「こちら駆逐艦[いそかぜ]艦長、カドマツです。

大変お待たせしましたが、ランデブーお願いします」

「こちら[はまかぜ]。待ってましたー。

[つきかぜ]は、調子悪いって?」

「みたいだな。早く直るといいけど」

「出航直前のトラブルじゃ、最悪だな」

「あいつは、マヌケだからな」


両艦長は、しだいにため口になってきた。

ウメがアツシに小声で言った。

「軍のオープン回線ですからね」


[いそかぜ]は、[はまかぜ]の後方1,500メートルに

ピタリと付けていた。


「じゃ、訓練航行といこうか」

アツシは言った。

「お手柔らかに」

シンヤが答えた。


ドワーーーーーッ!

[はまかぜ]はイオンエンジンを全力噴射した。

[いそかぜ]を、どんどん置いてきぼりにしていく。


「ちくしょー。両舷、全速前進!」

[いそかぜ]カドマツ艦長は、航海長のハンタ軍曹に命じた。


「両舷、全速前進!アイアイサー!」

ドーーーーーーンッ!

ハンタ航海長がパネルのダイヤルを回しスイッチを押すと、轟音とともに大きな推力が生み出された。

ブリッジのパネルやディスプレイやガラスや色んな物がビリビリと音をたてて振動した。


「なんか、大丈夫かな?この振動」

シンヤは、ユリの顔を見ながら言った。

ユリは正面を見たまま反応しなかった。

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