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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
24/132

【24】海王星まで、4時間30分

「太陽系方面軍司令部より全官へ達する。

本日の太陽系方面軍最高司令官による定例ブリーフィングは中止とする。よって、本日は各部隊司令部からの命令に基づいた職務を最優先として遂行されたい」


「よし!よし!急ぐぞ!」

シンヤは、ユリを急かして準備を始めた。


ピー!フィー!

ユリが号笛を吹いた。

「艦長は、ブリッジ」

艦長の居場所を明らかにする。


「艦長より達する。

出航まで12時間だ。各員さらに気を引き締めて準備にあたるように。以上」

「艦長、どうも忙しなくなってきましたね」

ユリがシンヤに言った。


「なにか、おかしいか?」

「なにか、予期しないことが起きたのかもしれません」

「HDネットワークで、分からないのかい?」

「アクセス権限の無いレベルです」

「俺の勘としては、未知の敵だな」

「それ、今、一番言ってはいけない事です」

「あはははは」

シンヤは、笑いながら手だけは動かしていた。


「よし!俺は、機関室を見てくる」

「了解です。ヘルメットを着用してください」

ユリは気を使った。


「あ、そうそう、未到着のHDはどうした?」

シンヤは思い出したように聞いた。


「未到着のままです」

「そうか。じゃ、欠員のまま出航するぞ」

「了解です」


「太陽系方面軍司令部より緊急入電です」

サクラが報告した。


「こちら[しらかぜ]、艦長のクロダです」

「おお、クロダ君。緊急事態だ」

モニターの中のハゲた将軍は、頭の汗を拭きながら言った。そもそも俺はあんたを知らないのに、あんたはクロダ君と呼ぶほど俺を知ってるのか?


「至急、海王星軌道195地点へ向かってくれ。詳細な位置データは、追って連絡する」

俺は小声で、そーっとサクラに聞いた。

「これは、承認された命令か?」

「はい、正式な手続きを経ています」

サクラは、小声で答えた。


「[しらかぜ]艦長クロダより、

太陽系方面軍司令部へ。ただ今の命令、了解しました」

俺は、普通の声に戻して言った。


「よかった。後から応援部隊も向かうと思うが、とりあえず急行してくれたまえ。以上」

通信が切れた。


「航海長、専任曹長、海王星軌道ポイント195までの航路を計算せよ」

「サクラ、[はまかぜ]艦長へホットライン繋げ」

とりあえず、アツシと話さなきゃ。

俺は、ヘッドセットを着けた。


「イシダ艦長に繋ぎます」

ププッ、ププッ

「これは、クロダ中尉」

アツシが出た。


「おい、ふざけんな」

「悪りぃー、悪りぃー」

「海王星への要請あったか?」

「聞いた。今、準備中だ」

「すぐ発てるのか?」

「火星上空で補給を受けてからだ」

「じゃ、こっちは先に行くが、いいか?」

「お先にどうぞ、中尉殿」

俺は返事をしないで、オフラインにした。


「ふざけんな、っつーのに」

「計算結果、出ました。」

ハロヤ航海長が言った。


「目標地点、海王星軌道ポイント195。現地点からの距離、44億8550万6309キロメートル。

トロッコ・フライで約4時間30分で到着します」

「航海長、ご苦労。

中途半端な距離だから、それがベストだろうな」

俺は、ハロヤ航海長に言った。


「艦長より、機関へ。

トロッコ・フライの準備を開始せよ」

まずは、機関室へ準備開始の指示。


「専任曹長、トロッコ・フライの経験は?」

「ありません」

サクラは答えた。


「艦長は、あるのですか?」

「あるわけないっしょ」

「知識は、どうやって?」

「教えてくれるかい?」

「では、これを」

サクラは、別のヘッドセットをくれた。


「普通に着けて、このパッド部分を左右のこめかみに触れるようにしてください」

俺は、指示通りに装着した。

「艦長に、トロッコ・フライの説明を」

サクラは、ヘッドセットに言った。


「目を閉じて、気分を落ち着かせてください」

イヤホンから機械的な声がして、目を閉じた。

その後、イヤホンからは、声ではなく電子音が連続的に流れてきた。気分的なものだろうが、耳とこめかみから、大量のデータが頭の中に入ってくる感じがした。

気分的なものだろうが。


「終了します」

声がして、俺はヘッドセットを外した。

「これはお預けいたしますので、ご自由にお使いください。きっとお役に立つと思います」

サクラは、ヘッドセットをくれた。


トロッコ・フライか。

素粒子を使って、艦の前方の重力を重くして、艦の後方の重力を軽くする。

艦は引力で前へ引っ張られて、後ろから反発力で押し出される。


前で引っ張り、後ろで押す。

瞬間的に交互に。

なるほど、トロッコみたいに、前と後ろで、

えっちら、おっちら。


で、艦は、時速10億キロくらいのスピードで飛べる。

イオンエンジン全開のスピードでは遅すぎる。

通常ワープ航法では、1光年以上遠くへ行ってしまう。

ワームホール航法では、危険が大きすぎる。

よって、トロッコ・フライがベストな選択だ。

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