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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
23/132

【23】駆逐艦[いそかぜ][つきかぜ] 出航準備

「おはよ」

カズは50番ハンガーにやってきて、シンヤに声をかけた。


「おー。寝てきたのかよ」

シンヤは、ハンガーの隅でパソコンをいじっていた。


「そんなのいじって、なんか分かんのかよ?」

カズは聞いてみた。


「知りたいことは、全部分かるぜ」

シンヤは懸命にパソコンをいじっている。

よく見ると、パソコンのコネクタにユリが人差し指を差し込んでる。

なーるほど、パソコンで調べながらユリから情報を引き出してるのか。


「さて、俺も寝てくるかな」

シンヤは立ち上がって、ユリと出て行った。


カズがハンガーを見回して、空中にある駆逐艦[いそかぜ]を見上げていると、

「おはよー」

シンヤがユリと戻ってきた。

先ほど出て行ってから、10分も経っていない。


「よく寝たかよ?」

「あー、ちと、寝すぎたかもな。ふぁ~」

シンヤはまだ眠そうに大きなアクビをした。


「さて、やるか」

カズは、スミレとともに63番ハンガーに向かって、ムービング・ロードに乗って行った。


「しかし、便利だよな。時空転移だっけ?」

「はい」

シンヤの質問にユリが答える。


「ここの転送室からウチに帰って、好きなだけ寝て、メシ食って、マンガ読んで、また時空を飛んで、ここを出発した時間に戻ってくれば、こっちでは全然時間が経ってないんだもんな」

「人類がこの法則を証明するのに、2,000年の時間が必要でした」

「そうなんだねー。発見者は偉大だね」

シンヤは感心した。


「ただ残念ながら、人類はこの法則を発見しましたが、不可能なことがただ1つ。

どうしても、過去に行くことはできません」


「そこなんだけどさー」

シンヤには納得できない部分があるらしい。


「俺が往き来してるのは、ここと過去じゃないの?」

シンヤは、首をかしげながら言った。


「カドマツ少尉は、2020年5月19日の人類です。

その日が少尉の[今]であって、[現在]なのです。そして、この7200年代は未来です。少尉の[今]とこの未来の中では往き来できますが、少尉の[今]より前の過去に行くことができない。ということです。

ですので、先ほどは2020年5月19日13時00分に戻りましたが、また戻りたいと思った場合、13時00分より0.1秒たりとも前には戻れないということです」

ユリは、詳しく説明した。


「なるほど。うん。うん。なるほど。なるほど。

なんか、分かる気がするよ。

過去も含めて自由に時間が往き来できると、どう考えても、なんかメチャクチャだよな。俺の生きてる[今]よりも前には行けないってのは、なんか、分かる気がするよ」

カドマツ・シンヤは、高校1年生としては、頭が良い方である。


「さて、出航時刻36時間前です。平均的にはこのあたりで乗員召集し、各部署の出航準備を開始すべきかと思われます」

ユリは50番ハンガーで、シンヤに、

スミレは63番ハンガーで、カズに進言した。


「そっか、分かった。じゃ、手配を頼む」

で、別々の場所で、

シンヤもカズも、同じ指示をした。


ユリとスミレは、HD間コミュニケーションシステムで駆逐艦[いそかぜ]と駆逐艦[つきかぜ]の乗員に召集命令を発出した。


2000時。

順次、乗員が集まってきた。

しかし、やたら人数が多い。おそらく、[いそかぜ][つきかぜ]だけの乗員ではないのだろう。しかもやたら気になるのは、人間に対し、HDが100倍以上はいるだろう。


「少尉、服をお着替えください」

ユリが、シンヤに制服を持って来た。

カーキ色のシャツにパンツ。茶のネクタイにオリーブ・グリーンの上着。金ボタンに、襟章、肩章、袖章。

気持ち曲げて制帽をかぶってみた。


パチパチパチパチ。

シンヤの制服姿を見て、

これも制服姿のカズと、ユリとスミレが拍手した。


「記念に写真をお撮りしますか?」

ユリとスミレは、

シンヤとカズの制服姿の写真を撮った。

古ーい、古ーい、アメリカのミュージカル映画のようだ。あれは、ジーン・ケリーだったか、フランク・シナトラだったか。「錨をあげて」なんてのもあったな。

あ、あれは水兵さんのスタイルか。


「ユリ、点呼はとったか?」

「現在、5体のHDが未到着です」

「よし!急いで出航準備を進めるぞ!」


0800時

50番ハンガー駆逐艦[いそかぜ]


「出航予定時刻まで、あと24時間となった。出航準備について不足物品や問題点、改善箇所がある場合は、優先的に所属長へ報告の上、対処すること」

ユリが全員に通達した。


0800時

63番ハンガー駆逐艦[つきかぜ]


「出航予定時刻まで、あと24時間となった。計画的に休憩を取り、自身の体調について慎重に管理を行い、多少にかかわらず気になる点がある場合は、速やかにドクターの診察を受けること」

スミレの声が、63番ハンガーに響いた。


「体調管理は大切だね。さすがスミレだ」

カズは、スミレを褒めてやった。

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