【20】4人でスタートラインに
「現在本艦は、高度2,500メートル、上下角15度、時速6,800キロで航行中」
航海長のハロヤ軍曹が報告した。
ブリッジの左側の窓の外には、少し遅れて同型の駆逐艦[はまかぜ]が800メートルほどの距離を取って並走している。
「航海長、出航は合格かな?」
「お見事でした」
俺は、艦の出航状況について、ハロヤ航海長に聞いた。
「サクラは、どう思った?」
「私も、同感です」
サクラに褒められた。嬉しいもんだ。
左手首の腕時計がバイブレーション振動している。
ふと見ると、「LEVEL-UP-25」と表示されていた。
「サクラ、レベル25って?」
俺は、サクラに尋ねた。
「艦長職務の初級クラスに合格です。出航準備と発進操艦のスキルアップが高得点だったのでしょう。
また、間もなく中尉への昇級となるでしょう。駆逐艦といえど、艦長の階級が少尉では低すぎますので」
サクラは、説明した。
「自分が少尉で航海長に任命されたのも、本艦独自の特例だと思われます」
ハロヤ航海長も、今の[しらかぜ]での階級編成に違和感を感じているようだ。
「順調にスキルアップして、艦長としてならば、少なくとも佐官クラスへ昇級してください」
サクラは進言した。
「はい、はい、了解」
俺は、サクラに敬礼してみせた。
* * *
バスの座席のようなシートで、
シンヤは目を覚ました。
「どこだ?ここは」
シンヤはキョロキョロと辺りを見回した。
シートだけが並んだ、窓の無いバスのような室内。
「火星基地です」
後ろの方に座っていたシンヤ付きのHDが言った。
「か、火星?」
「はい」
「おい!カズ!起きろ!」
シンヤは、隣のカズを揺り起こした。
「ふがっ?、どーした?」
カズは寝ぼけているようだ。
「火星だってよ!」
「なに言ってんだ?」
すぐには、飲み込めないだろう。
「とりあえず、ここから出てください」
2体のHDに続いて、シンヤとカズは、廊下に出た。
広々としてにぎやかな、火星基地である。
「それ、なんだ?」
シンヤが、自分付きのHDの左胸を見て言った。
「ユリの花のシールです」
「なんだ?そりゃ」
「クロダ少尉のサクラから連絡があり、少尉の部屋にあるシール帳からユリの花のシールをはがして、私の胸の部分に貼っておくようにと」
HDは、説明した。
「クロダ少尉のサクラ?」
「少尉付きのHDは、サクラという名前です」
「なんで、サクラなんだよ」
シンヤは笑った。
「桜の花のシールが貼ってあるからです」
「あ!なるほど!」
カズが手を打った。
「じゃ、これはなんだ?」
カズは、自分付きのHDの胸を指して聞いた。
「スミレ。というようです」
「スミレちゃんか!」
カズは、手を叩いて笑った。
「総合します。
クロダ少尉のHDは、サクラ。
イシダ少尉のHDは、ウメ。
カドマツ曹長のHDは、ユリ。
私、ドバシ曹長のHDは、スミレです」
スミレは、説明した。
「なるほど、あいつ、うまいこと考えたな」
シンヤは感心したようだ。
「ちなみにこの後、先に行われた太陽系方面軍司令官の録画ブリーフィングをご覧いただき、お2人とも少尉昇級の任命を受けていただきます」
ユリが説明した。
「メチャクチャ撃たれちまったのに?」
シンヤは意外に思って言った。
「大丈夫です。今後のスキルアップを頑張れば」
「はい、はい」
「そして、その後、艦を任されます」
「ん?」
シンヤはユリに聞いた?
「艦を任される?」
「カドマツ、ドバシ、両少尉は、
それぞれ駆逐艦の艦長に任命される予定です」
「か、か、艦長?」
ユリの説明に、シンヤは驚いた。
「おい!カズ!俺ら、艦長だってよ!」
シンヤはカズに言った。
「内定段階ですので、大声で言わないでください」
スミレが怒って言った。
「あ、はい、すんません」
シンヤは小さくなった。
「でも、そんな簡単に艦長になれるもんか?」
シンヤは、率直にユリに聞いた。
「現在の宇宙軍には、初級練習用駆逐艦が余っているのです」
ユリは、率直に答えた。
「現在募集中の候補生には、それでスキルを積んでいただき、その後、現在建造中の高等及び大型艦艇へ移籍していただき、銀河系防衛の中核及び上層部へと昇格していただくのが、宇宙軍中枢部の計画です」
「壮大な計画だな」
カズは、腕を組んで感心した。
ユリとスミレに連れられて、
シンヤとカズは、ブリーフィングルームに入った。
部屋には他に十数名の候補生らしき人がいた。
モニターに司令官が映り、訓示をたれた。
話が終わり、起立して敬礼すると、
ブリーフィングルームのガラス張りの天井の上を、
2艦の駆逐艦が編隊航行していくのが見えた。
「クロダ中尉の[しらかぜ]と
イシダ少尉の[はまかぜ]です」
ユリが、天井を見上げて言った。
「今後、お2人も、あそこへ編入していただきます」




