【17】貴官を、駆逐艦の艦長に任命する
「太陽系方面軍司令、エスナ中将だ」
ブリーフィングルームの出口で、
俺とアツシは、これまた貫禄のある制服軍人に呼び止められた。
「クロダです」
「イシダです」
俺らは挨拶した。
「上官殿には、敬礼が必要です」
サクラが、俺らに忠告した。
俺たちは、改めて、エスナ中将に敬礼した。
中将、すなわち司令が答礼して手を下ろすと、
俺らも、手を下ろした。
「ブリーフィングは、ご苦労だった。本来であれば、
この後、任官式を行うのだが、緊急時であるため、割愛する。
今後、クロダ君は少尉となり、駆逐艦[しらかぜ]の艦長を命ずる。
また、イシダ君は少尉となり、駆逐艦[はまかぜ]の艦長を命ずる。
2名とも、銀河系全体の期待に応えるべく、任務にあたってもらいたい。以上」
司令はそう言うと、俺たちに敬礼し、
返礼を確認する間もなく去ってしまった。
「俺、艦長だって」
アツシが言った。
「[はまかぜ]ブッ壊したのにな」
俺は、言ってやった。
「実艦で訓練を積んで、スキルアップしてください」
サクラは言った。そして続けて、
「命令を受信しました。
クロダ艦長は、27番ハンガーの駆逐艦[しらかぜ]に乗艦すること。
配属は、おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊、旗艦とする。
イシダ艦長は、31番ハンガーの駆逐艦[はまかぜ]に乗艦すること。
配属は、おおいぬ座方面軍第3駆逐艦隊、2番艦とする。
両名とも乗艦後ただちに出航準備を開始し、2日後の0800時までに完了し、報告すること。
命令は、以上です」
と、俺たちに伝えると、敬礼した。
「少尉殿。命令を受諾しましたら、私に向けて了解の言葉とともに答礼してください。私はそれを、発令者に報告いたしますので」
「クロダ少尉、了解しました」
「イシダ少尉、了解しました」
俺らは、それぞれ、指示どおりにした。
まだ、軍隊ごっこをしている夢を見ているようだ。
「シンヤとカズは、どうしたかな?」
ハンガーに向かいながら、俺は、アツシに聞いた。
「シンヤとカズは、どうした?」
アツシは、ウメに聞いた。
「お2人とも、現在シミュレーション中です」
「おー!そうなのか!
あははは、艦を消滅させなきゃいいけどな」
俺は、笑ってしまった。
「でもさ、お前の相手は、単なる偵察衛星で、
俺の相手はクラスターミサイルを撃ってくる巡洋艦なんて、すげー不公平じゃねーか?」
アツシは、不平たらたらだ。
「あれは、どんな目標でも、どんだけ適した対応ができるか見たんだろ」
俺は、自慢気に言った。
「なにを、偉そうに」
アツシはとっとと前へ歩いて行ってしまった。
* * *
ウィーーーン!
ウィーーーン!
被害警報が鳴り響き、赤色警報灯が点滅している。
「はい、そこまでで」
シンヤに向かって、HDは言った。
「艦首に小型ミサイルが命中。前部にレーザー砲が2発、艦橋基部、上方ミサイル発射管、艦後部にそれぞれレーザー砲が1発ずつ。全て艦の右舷側です。
敵に対しては、側面は見せない方がいいですね」
シンヤは、ガックリした。
「ま、どーせ、遊びじゃん」
* * *
ビーーーッ!
ビーーーッ!
警報が鳴り響いて、エンジン音と振動が止まった。
「はい、そこまでで」
カズに向かって、HDは言った。
「大型のデブリを左舷エンジンノズルに吸い込んだようです。
周囲の小惑星の運動予測と、デブリなどの障害物を避けるための的確なスラスター噴射など、操艦自体はお見事でしたが、前方の避けられない小惑星は事前にレーザー破壊すべきであって、艦をバックさせるのは、やめた方がよかったですね」
HDは、そう論評した。
「そうだよな。トラックじゃねーんだし」
カズは、ため息をついた。
シンヤとカズは、同じタイミングで廊下に出た。
全面、真っ白な狭い廊下。
2体のHDがついてくる。
「クロとアツシは、どうしたかな?」
シンヤは、カズとHDを交互に見ながら言った。
「クロダ少尉とイシダ少尉は、火星基地にいらっしゃいます」
シンヤ付きのHDが答えた。
「少尉?あいつらが?」
「はい」
「シミュレーションで高得点だったのか?」
カズが聞いた。
「クロダ少尉は敵の偵察衛星を破壊し、
イシダ少尉は、敵のミサイル巡洋艦の攻撃を受け、大破しました」
HDは、説明した。
「それで、少尉になれるのか?」
シンヤが不服そうに言った。
「被害を受けましたが、やむを得ない対応だと評価されました」
「ふーん」
HDの評価を聞くと、カズは腕を組んでうなった。
「で、それから?」
シンヤが聞いた。
「クロダ少尉は[しらかぜ]艦長、イシダ少尉は[はまかぜ]艦長に任命され、現在出航準備中です」
HDの説明を聞くと、
「シミュレーションで大破しても、艦長になれるのか」
カズがボヤいた。
「上層部の判断です」
HDがなだめた。




