【15】駆逐艦[はまかぜ] 大破
「頭が良くなって、よかったじゃん」
俺は、アツシをからかった。
「頭が良くなったところで、シミュレーションに移りましょう」
「え?」
ウメが言うと、アツシはまた不安顔になった。
アツシは、ウメに連れられて出て行った。
まるで、囚人のようだ。
「そうだ、サクラ。
シンヤとカズは、どうしてる?」
「お2人とも、月面基地で手続きをしています」
サクラは答えた。
「2人とも順調なのかな?」
「特段の問題は報告されていませんが、クロさんほどではないかもしれませんね」
「と、言うと?」
「多くの人を見てきましたが、クロさんの順応性及び適応力は、かなり高いと思われます」
おー、悪い気はしないな。
ウメに連れられて、アツシは部屋に入った。
駆逐艦[はまかぜ]のブリッジと同じに作られた、シミュレーター室だ。
とは言うものの、[しらかぜ]と[はまかぜ]は同型艦なので、さっき[しらかぜ]で使ったシミュレーターの流用だろう。
「すんげーな」
初めて入ったアツシも感激しているようだ。
「では、シミュレーションを始めます」
ウメが言った。
「おい、おい、ちょっと待った」
アツシが手を広げて制止した。
「どーすりゃいいのか、なんも聞いてないし」
アツシの焦りの言葉を聞きながら、
「これから起こる事態に対応すればいいだけです」
ウメは、淡々と答えた。
「現状報告。本艦は、海王星軌道118.6度地点を、速力800にて航行中」
航海長の席にいるHDが報告した。
キュィーン!キュィーン!
突然、警報が鳴った。
「なんだ?どうした?」
アツシは、慌てだした。
「レーダーに感あり。
方位320。上下角プラス27.5。距離5万。速力250で本艦へ接近中。敵ミサイル巡洋艦の可能性65%」
レーダー担当HDが報告した。
「敵か?」
アツシは、つぶやいた。
「艦長、どうしますか?」
アツシは、艦長席のHDに尋ねた。
「最適な対応をせよ」
艦長HDは答えた。
「最適な対応ったって」
アツシは、またつぶやいた。
ウメは、隣で黙って立ったままだ。
「目標、方位・速力変わらず、距離4万5千」
レーダー員の報告。
「目標からの測距電波及び各種通信電波の発信を探知。
敵ミサイル巡洋艦の可能性90%」
通信担当HDの報告。
「まー、シミュレーションだし」
アツシは、またもやつぶやいた。
「CICへ。こちら副長。現在捕捉中の目標に対し、攻撃準備を開始せよ」
アツシは、気持ちを切り替えたようだ。
「こちらCIC。了解」
CICのHDからの返答を受けた。
ピュィーン!
警報だ。
「目標が小飛翔体を発射。
数2。方位320。上下角0。速力2000。距離4万から急速接近中。高速ミサイルです」
レーダー員の報告は、事務的だ。
「副長へ、こちらCIC。迎撃レーザー、発射準備完了」
CICからアツシへ報告が入った。
「ベリーグッド」
アツシは、カッコつけて承認した。
「目標、方位・速力変わらず、距離3万」
レーダー員から報告。
「副長からCICへ。1番2番砲搭、計6門か?」
「はい。1番3門で左舷の1本、2番3門で右舷のを狙います」
アツシは、CICの戦術を確認した。
「ベリーグッド」
アツシは、ゾクゾクしてきた。
アドレナリンが分泌されているのだろう。
ピュィーン!
警報が鳴った。
「目標、数量増加。数20。
方位320。速力3000。距離2万。急速接近中」
「なんだと?!」
アツシの腋の下に汗が流れるのが分かる。
「目標、さらに数量増加。数200。
クラスターミサイルです」
人間なら焦るところ、HDは機械的だ。
「副長よりCICへ。クラスターミサイルに対応せよ」
アツシは、戦闘指揮所に命令した。
「CICより。対応策装填、間に合いません」
「チキショー!」
アツシはディスプレイパネルを叩いた。
「目標、距離1万。有効射程距離に入りました」
レーダー員が報告した。
「入ったら撃てよ!」
アツシは怒鳴った。
「CICより副長へ。発射許可を」
「撃てよ!」
ブリッジの窓に映る艦首砲搭2基6門から、レーザー砲が発射された。ブリッジ内に音響と振動が響く。
前方でいくつかの明るい光が点滅する。
レーザー砲が、いくつかの小さいクラスター弾に命中しているのだ。
それと引き替えに、いくつかの小さな白い点がこちらへ向かって来た。
ドーン!
ドーン!
ドカーン!
ズドーン!
大音響と振動が、ブリッジに響いた。
艦首に、砲搭に、右舷に、
敵の小型クラスターミサイルが命中した。
ウィーーーン!
ウィーーーン!
被害警報が鳴り響き、赤色警報灯が点滅している。
「はい。そこまでで」
ウメは、アツシに言った。
「撃沈は免れたようですが、修理にはだいぶ時間がかかりそうですね」
ウメの見立てである。
「クラスター弾による攻撃も、想定しませんとね」




