【13】宇宙軍 火星本部
俺は、体を揺さぶられて、目を覚ました。
俺を起こしたのは、サクラだった。
隣のアツシは、ヨダレを垂らして寝ている。
というか、気を失っているのか。
かく言う俺も、眠っていたのか気を失っていたのか、
よく分からない。
このバスみたいのに乗ってきた他の人たちは、もういなかった。終点に着いたみたいだ。
俺らは寝過ごして車掌に起こされた酔っ払いか。
「ここは、どこだい?」
俺は、アツシを揺りお越しながら、サクラに聞いた。
「ここは、火星基地です」
「え?」
俺は動きを止めた。
「火星?」
「はい」
サクラは答えた。
「時間は、どのくらいかかった?」
「1分15秒です」
サクラは、淡々と答える。
「これは宇宙船で、すげー速さで飛んだのか?」
「違います。時空転移です」
「ワープ?」
「どちらかというと、物質転送の領域です」
「転送って…」
「最初のアイデアは、1960年代からありましたよ」
「スター・トレックか!」
「そうです。仕組みは全然違いますが」
サクラは、なんか楽しそうだ。
「うーーーんーーー」
アツシが目を覚ました。
「おい、降りるぞ」
俺は、アツシのシートベルトを外してやった。
「ここ、どこだよ」
アツシは、キョロキョロしている。窓は無いのに。
「火星だとよ」
「おい!ふざけんな!」
火星と聞くと、アツシはキレた。
「降りるって言ったじゃねーか!」
「まあ、落ち着けよ」
「落ち着けねーえっつーの!」
「間に合わなかったんだよ、仕方ねーだろ」
「おい、おい、おい、おい、なんとかしろよ」
「まー、ここにいても仕方ねーから、
とりあえず、ここから出ようぜ」
まずは、アツシを落ち着かせないと。
バスのような部屋から外へ出ると、
さっきまでの月面基地とは、だいぶ違っていた。
通路は月面基地の3倍くらい広くて、床や壁や天井には色々な文字で表示があり、配管やディスプレイや、色々なものが取り付けてあった。まさにSF映画でよく見る、宇宙ステーションのようだ。しかも、たくさんの人やアンドロイドみたいのがいる。軍関係者が多いようだが、服装は色々だ。後は、作業員ふうの人たち。
しかし、ここでも思ったが、みんなスマートで、規格が決まった整った顔の人形のような表情をしている。
サクラを先頭に、俺、アツシ、ウメの順に、廊下を歩いた。
「お伝えするのが遅れましたが、カドマツ・シンヤ様とドバシ・カズト様も、クロさんたちと同様の手続きを進めております」
サクラは言った。
「俺らと同じように地球から拉致して、月面で洗脳したのかい?」
俺が聞くと、
「その言い方は、なぜかヒドい感じがします」
サクラは答えた。
「そもそも我々は、あなたたちに素晴らしい経験をしていただこうと努力していることを理解していただきたいのです」
「悪かったよ」
俺は、サクラに謝った。
「ま、おふざけはこのくらいにして、ここからは真剣になってください」
「あー、はい、はい」
「真剣になっていただきませんと、生命に関わります」
サクラは、いたって真剣のようだ。
サクラが、「注意!」「危険!」「確認!」
などのたくさんの表示が書いてある扉の横のスイッチを押すと、天井の黄色い非常回転灯が点滅し、端の部分がゼブラゾーンで注意喚起している赤いドアが中央で上下に分割して開き始めた。
かなり厳重警戒エリアのようだ。
ドアが徐々に開くと、中は明るい光で満たされていることが分かった。中から流れ出てくる空気も、廊下の空気と違う。広い場所から、大量の空気が流れ出て来るのだ。
4人で中に入ると、思ったとおり、ドーム状の巨大な空間だった。
おそらく、宇宙船の発着場か、駐機場か、整備場だろう。野球のドームグラウンドぐらいの広さはゆうにあり、半円ドームの高さも、かなりある。
ミサイル巡洋艦クラスなら、入るだろう。
「整備技術士官が27番ドックでお待ちです」
サクラが言った。
俺とアツシがドック番号順に歩いて行こうかと思った時、ウメが呼び止めた。
「こちらに、ムービング・ロードがありますから」
確かに、巨大空間の壁に沿って、両方向に動いている水平なエスカレーターみたいなものがあった。
「歩くより、楽だと思われますが」
4人はムービング・ロードに乗って、俺とアツシは、ドック内をよーく見て、記憶に刻むよう頑張った。
3番ドックには、小型高速魚雷艇が入っている。
11番ドックには、新型の駆逐艦。
15番には、かなり損傷した巡洋艦。
そして、27番に到着すると、
そこには、駆逐艦[しらかぜ]が空中に浮いていた。
艦尾の乗降艦用エレベーターに近づくと、整備担当の服を着た整備員が2人、しゃべっていた。
2人の整備員は俺たちに気が付くと、揃って敬礼した。
「艦長」
「もう、知ってるのかい?」
俺は、
敬礼を返しながら聞いた。




