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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
127/132

【127】白いHDの出現

恒星が中心部の水素を核融合で使い果たすと、一旦収縮を始める。収縮すると内部の圧力が高まり、今度はヘリウムを燃料とする核融合反応が始まる。と同時に中心部の周りに残存していた水素が核融合反応を再開し、恒星は膨張を始める。

恒星の一生はその星の元々の質量によって決まるが、太陽よりも小さい恒星はヘリウムの核融合反応までも至らず、水素を使い果たした後そのまま白色矮星となる。

質量が太陽の8倍程度までの大きさの恒星は中心部の核の元素がヘリウム、炭素、酸素、窒素まで進み、赤色巨星を経て白色矮星になっていく。

太陽質量の8~10倍程度の恒星は、内部の核融合が酸素からネオン、マグネシウムまでおこなわれ白色矮星となり、内部では陽子、電子、中性子の攻めぎ合いが起こり、重力の均衡が保たれなくなると核の周囲で衝撃波が発生し超新星爆発を起こす。この超新星爆発は、核の周囲を吹き飛ばすもので、中心に残った核が中性子星である。

ちなみに太陽質量の10倍以上の恒星は、中心の核融合が鉄まで進み、その後白色矮星となり超新星爆発を起こす。この場合、道筋は同じでも中心に残った核がブラックホールになることがある。

太陽質量が30倍以上の恒星は、ほとんどがブラックホールとなるが、それより質量が小さいと中性子星になるかブラックホールになるかは分かっていない。

今、第1遊撃機動艦隊がいる星系はPS72パルサーと呼ばれる星が主星となっているが、このパルサーは中性子星の1種である。パルサーにはX線、ガンマ線、電波とパルス状に発するものに違いがあるが、このPS72は電磁波を周期的に放射するマグネターと呼ばれるパルサーである。電磁波は、電子機器や生物に直接的に影響を与えるので、我々は今、非常に厄介な場所にいるわけである。


しかし近年、我々銀河帝国に対して敵対行為をおこなう者が、このパルサー星系に本拠がある可能性が出てきたため、第1遊撃機動艦隊及び、海兵隊が投入され、各種調査を実施しつつ戦闘さえも経験してきたが、未だに人間の姿を見たことは無く、改造された艦艇やHDを確認したに留まっている。

しかしこれらは、そもそも銀河帝国の物であり、敵の本質が一切判明していないにもかかわらず、敵は我々の事を理解していると考えられる点が、最大の問題であった。

我々が遭遇した敵の艦艇やHDの中には、このパルサー星系内の電磁波の影響を受ける場所でも活動できる物があることを確認している。

人間の存在は不明だが、電子機器や機械は電磁波から防護する技術を、敵は既に持っている。

以前、我々の目の前から堂々と逃げを打った巡洋艦[ちくご]が、まさにそれである。

艦首には傘の骨のような物が装着され、それを避雷針のように使って電磁波を避けていた。

我々が陰踏みのようにパルサーの陰から陰へと移動しなければならないのを尻目に、堂々と日向へ出て行けたのだ。

そして、そのような不明艦の出現が、昨今さらに頻発しているとの情報を、連絡用潜宙艦でホスム軍曹がもたらしてくれたのである。

「今度は、どこに現れたんだ?」

俺は、[もがみ]の司令官室でホスム軍曹に聞いた。

「しし座のレグルス星系です」

軍曹は答えた。

「太陽系からは、どのくらい離れているんだ?」

「約79光年です」

「そうか。で、艦隊が出動したのか?」

「はい。付近の第61連合艦隊が急行し、敵の戦艦1隻と巡洋艦3隻を撃沈しました」

「それは、なかなかの戦果じゃないか」

俺と軍曹の話は続いた。

「敵の戦艦は[せっつ]だったのですが、撃沈して浮遊していた残骸の中に人間の姿は無く、代わりに奇妙なHDがあったのです」

「今までも、人間は確認されていないな」

「はい。で、その奇妙なHDというのは、全身が白く塗装されていたのです」

「白いHDか。奇妙だな」

俺は不思議に思った。

なぜ、HDを塗装する必要があるのだろうか。

「サクラ、白く塗られたら、どう思う?」

俺はサクラに聞いてみた。

「私が白く塗られることには何も思いませんが、塗装するということ自体には、意味があると思います」

「どういう意味がある?」

「組織の明確化などです」

「組織?」

俺は、サクラに確かめた。

「HDを組織化したということか?」

「はい。

少し前、奇妙なHDコミュニケーション・ネットワークからのメッセージを受信したのですが、宇宙軍のものではありませんでした」

「我々のものではないというと?」

「敵のネットワークから、漏洩したのでしょう」

「内容は?」

「集合命令でした」

サクラは、淡々と答える。

「敵がHDに集合を掛けてるのか」

「はい。問題はメッセージの宛先です」

「宛先?」

「特定のHDに向けての集合命令です」

「特定のHD?」

「名称は[突撃隊]となっていました」

「[突撃隊]?そんなのがあるのか?」

「私たち宇宙軍にはありません」

サクラは言った。

「おそらく、塗装されたHDは、何らかの組織に属しているのでしょう」

「なるほど」

俺は、納得した。


しし座のレグルス星系では、旗艦を戦艦[ワイオミング]とする第61連合艦隊が18隻の艦艇を連ねて、詳細な調査をおこなっていた。

司令官はエリレ少将で、あの[ジョージア]のケサン少将と同期であった。エリレ少将はケサン少将の最後を知って仇を討つことを心に誓い、しし座方面への警備にあたっていたところへ不明艦隊接近の報を受け、情報収集もそこそこに戦闘開始の命令を下した。

不明艦隊は7隻ほどの艦隊であったが、[ワイオミング]がレーダーに捉えた時、[コスモ・カーゴ]社の貨物船[CCL4050便]を牽引ビームで拉致しようとしていたのである。

後からの照会で明らかになった不明艦隊の旗艦は戦艦[せっつ]で、[ワイオミング]からの呼び掛けにも応じず、救難信号を発し続ける[CCL4050便]を強引に拉致しようとしていたため、[ワイオミング]率いる61艦隊は敵対行為と判断し、攻撃を開始した。

その結果、戦艦[せっつ]と巡洋艦3隻を撃沈し、貨物船を保護することに成功したが、残る敵艦にはワープで逃走されてしまった。

そして[せっつ]の残骸調査をおこなったところ、旧型の通常モデルのHDとともに、白い塗装の個体が破損したものを含めて約20体分回収された。

ちなみに保護した[CCL4050便]には、増産された現行型HD2,000体が積載されていた。

[ワイオミング]のHD維持管理部で白いHDの調査及び解析をおこなったところ、[突撃隊]宛て通信を受信していたことが明らかになった。これは、同時に回収された旧型ではあるが通常モデルの銀色のHDでは、受信した形跡が無かった。


「こちらBチーム[いそかぜ]、第19番惑星まで200,000キロ。夜の面に人工的な光を確認。警戒態勢をとり接近する」

[いそかぜ]のカドマツ艦長、シンヤから連絡が入った。

Cチームは、20番惑星より内側への調査に向かった編隊だ。シモダ艦長の[きぬかぜ]とペアを組んでいる。

「こちら[もがみ]、了解。

敵HDについて、[突撃隊]なる情報があり、これについて詳細を送るので、共有を図るように」

通信担当のタレク少尉は、[いそかぜ]へ伝えた。

白いHDの出現は、敵の意図が次の段階に入ったことを物語るものであろう。

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