【125】[はまかぜ] 、敵基地攻撃 成功
「司令官室のホスム軍曹に繋いでくれ」
俺は[もがみ]のコセラ専任曹長に言った。
「はい。ホスムであります」
「クロダだ。軍曹、申し訳ない。急遽、外出することになった。司令部からの連絡等があったら、私のサイトに記録しておいてくれないか」
「あ、かしこまりました」
俺は、連絡要員のホスム軍曹を、置いてきぼりにしてきてしまったのだ。
格納庫で、急に[たちばな]行きが決まったからだ。
俺たちを乗せた魚雷艇は、徐々に[たちばな]に近付いて行った。
発艦した時のまま、艦底部の発着口は開いたままになっている。残っているHDたちは、2便目の魚雷艇が戻ってきたと思っているだろう。
ガコン
魚雷艇が[たちばな]に着艦した。
…………シューーーーーッ!!
…………ィィイイーーーンッ!!
発着場が密閉され、エアが充填されると、エンジン音が響き渡った。
イイィィーーン…………
魚雷艇のエンジンが停止し、格納庫へと移動した。
俺たちが降りると、数体のHDが待っていた。
「さて、さて、どっちのHDでしょう」
維持管理部の技師が言って、リモコンのような小さな器具を向けた。
「[もがみ]所属です」
その器具の表示を見て、技師は言った。
「そんな便利な物があるんだったら、もっと早く出しておいてほしかったな」
俺は、技師に言った。
「今度、作っておきます」
シュイー
俺たちは格納庫を出て、ブリッジへ向かった。
20名の臨検隊の隊員たちも、静かについて来る。後ろで屈強な大尉が、隊員たちの言動に目を光らせているからだった。
シュイー
[たちばな]のブリッジに入ると、15、6体のHDがいた。
カシャッ!カシャッ!ガシャ!
臨検隊の隊員たちが、レーザー小銃を構えた。
「落ち着け!!貴様ら!」
警備部の大尉が大声を張り上げると、隊員たちは、ビクッとして銃口を下に向けた。
「状況は分かった。人間は、一旦ブリッジを出ろ」
と、俺は言って、HDと人間を分けた。
「隣のCICでブリッジをモニターし、[もがみ]のHDに両方の胸部を開かせろ」
俺は、技師に指示した。
[もがみ]所属で臨検隊の隊員として行動していた10体のHDが、お互いに胸部を開き合った。
そして、そのうちの1体が、[たちばな]所属の6体のHDの胸部を開いた。
その様子はHDの目を通してCICに拡大モニターされ、[たちばな]の6体には、[もがみ]のHDには無い爆発物と思われる部品が取り付けてあることが確認された。
「爆発物を取り外せるか?」
俺は技師に聞いた。
「はい。彼らにやらせられると思います」
「じゃ、胸部以外も調べて、取り外しを頼む」
俺は、爆発物処理を、技師に任せた。
「これでみんなで帰れるな」
俺は隊員たちに言った。
ギュウウウウウーーーーーン!!
パシュ!パシュ!
パシューーッ!
カサナ中尉ら突撃部隊を収容した[はまかぜ]は、エンジン出力を上げ、広い空間内で浮上した。
ドオオオオオーーーーーッ!!
空間内にエンジンの大音響が響き渡る。
すでに破壊してしまったが、ここには何隻かの艦艇もあったが、[はまかぜ]クラスの宇宙軍艦など入って来るべき場所ではないのだろう、天井や壁に亀裂が入り始め、バラバラと破片が落下してきた。
ドドドドドドオオオーーーーーッ!!
[はまかぜ]は出力を上げて、全方向への噴射量を均一に保ったまま、来る時に通ってきたトンネル部に向かってゆっくり進み始めた。
「中央部から向こう側を破壊しろ」
アツシは、戦術長に命令した。
「艦尾主砲、発射!」
シュ、シュ、シュイーーーン!
シュ、シュ、シュイーーーン!
ドガッ、ドカッ、ドガーン!
ドドッ、ドカッ!、ドガガーーン!!
大空間の壁にあった、スリット状の窓らしき部分に向けて[はまかぜ]のレーザー主砲が発射され、内部の壁や天井は崩落を始めた。
キュイイイイイーーーーーン!!
[はまかぜ]はトンネル部に艦の半分を突っ込んだ。
「艦尾主砲、乱射します!」
ウィーーッ
ウイィーン
主砲が向きを変え、砲身が角度を変えた。
シュ、シュ、シュイーーーン!
シュ、シュ、シュイーーーン!
ドガッ、ドカッ、ドガーン!
ドドッ、ドカッ!、ドガガーーン!!
[はまかぜ]はトンネルに進入し、最後の砲撃を加えた。
シュ、シュ、シュイーーーン!
シュ、シュ、シュイーーーン!
ドガッ、ドカッ、ドガーン!
ドドッ、ドカッ!、ドガガーーン!!
[はまかぜ]は出力を上げ、トンネルを突き進んだ。
ドドドーーーーーッ!!
エンジン音が
トンネル内に大反響する。
「ミサイル、後方へ水平発射します!」
バシュ、バシューーッ!!
バシュ、バシューーッ!!
4発のミサイルが、トンネルを通って後方の空間へ向かって発射された。
ドオオオォォォーーーーーン!!
ドオオオォォォーーーーーン!!
ミサイルが、敵基地にとどめを刺した。
キュイイイイイーーーーーン!!
[はまかぜ]はトンネルから地上へと飛び出した。
急上昇しながら旋回し、地上部を見ると、トンネルから繋がっていたと思われる部分の山が、数キロにわたって陥没し、もうもうと土煙を上げていた。
戦果としては、上出来だ。
アツシが腕のスキルアップ・メーターを見るとレベル38で、階級が中佐になっていた。
「こちら[はまかぜ]。[さわかぜ]お待ちどうさま」
2艦は、次の調査を開始した。
「レーダーに感あり!方位310、上下プラス9、距離100,000」
[つきかぜ]のレーダー担当、ホロテ少尉が報告した。
[つきかぜ]は[あきかぜ]と共に、このパルサー星系の20番惑星より外側の調査に当たるCチームになっていた。
「船か?」
艦長のドバシ少佐、カズは言った。
「おそらく、船と思われます。速力500で接近中」
ホロテ少尉が答えた。
「情報を収集して、目標を特定せよ」
「了解しました」
カズの命令に従い、少尉はワイドレンジ・レーダーの軌跡や通信データなどを活用して、レーダーが捉えた船の特定を急いだ。
「艦長、戦艦[ジョージア]のようです」
「[ジョージア]は、[もがみ]と共に20番惑星の陰にいたんじゃないのか?」
カズは、少尉に聞いた。
「いえ、通信データなどからすると、大変なことになっているようです」
「なんだ?大変なことって」
「[ジョージア]の反乱としか考えられません」
「反乱だと?」
「[ジョージア]が[ドク・ワン]を撃沈したようです」
「マジか?」
少尉の話を聞いて、カズは驚いた。
「艦長のケサン少将がHDに殺害され、乗っ取られた[ジョージア]が[ドク・ワン]を撃沈し、逃亡したようです」
「なんてこった。
乗ってきた海兵隊がほぼ全滅して、[ドク・ワン]は空っぽのマッチ箱と言える状態だったが、多少の兵器や資材があっただろうから、もったいないことをしたな。
せめて、乗組員が脱出してくれていればいいが」
「空っぽのマッチ箱とは、言えてますね」
ホロテ少尉は笑った。
「とりあえず[もがみ]に報告しておいてくれ」
「分かりました」
艦長席にケサン少将の亡骸を乗せたままHDが操艦する[ジョージア]は、この星系の外側へ向かって航行していた。HDはコンピューターとして優秀な機能を持っている。パルサーの電磁波の影響を最小限にするコースを計算し、陰から陰へと[ジョージア]を導いていた。




