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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
124/132

【124】突撃部隊、決死の300メートル走

[たちばな]のブリッジでは、[もがみ]所属のHD2体で、[たちばな]にいて電源を切られたHD1体を運ぶという方法で、合計3体の敵のHDを[もがみ]に持ち帰ることにした。また魚雷艇による運搬方法についても、第1便で人間の隊員は先に帰艦し、第2便でHDのみを帰艦させるべきという意見が具申され、ヒラセ副長は俺に報告した上で、この意見を了承した。

HD搬送前の検査で、頭と体が吹っ飛んだ[たちばな]艦長代理と同様に、敵のHDには爆薬がセットされていたことが判明したが、[もがみ]所属のHDには爆薬は無い、と我々のHDが検査について自己報告しても、隊員たちの信用度が回復しなかったためである。

キュイイィィーーーーーン………………

[もがみ]の発着場に空気が充填され、着艦した魚雷艇はエンジンを停止し、隔壁が開かれると格納庫へと移動した。

「おい、待て。

なぜエンジンを停止する?

なぜ格納庫へ移動させるんだ?」

ヒラセ副長が言った。

「貴様らだけ降りればいいことだろう?!」

副長は、語気強く言った。

「もう、魚雷艇は発艦する必要が無いからですよ」

臨検隊のリーダー格である警備部の軍曹が言った。

「何を言ってる」

「危険なHDを[もがみ]に戻すわけにはいきません」

副長と軍曹が険悪な雰囲気になってきた。

いや、副長と、軍曹以下臨検隊全員が対立している。

「司令、お忙しいところ、恐れ入りますが、格納庫までおいでください」

副長は、俺に連絡した。

一応、忙しいんだけどな。と、俺は思いながら、サクラと一緒に格納庫へ向かった。

シュイー

ドアが開き、一瞥しただけで異様さが分かった。

副長と、その他全員が対峙していたからだ。

臨検隊のメンバーには、小銃こそ下に向けているが、腰の拳銃に手を掛けている者すらいた。

「臨検、ご苦労だった」

俺は、すかさず言った。

サクラには、こういう雰囲気は分かるのだろうか。

全員、一応は俺に敬礼した。

「[たちばな]に人間はいたのか?」

「いいえ、いませんでした」

俺の問いに、副長が答えた。

「自動操縦だったのか?」

「いいえ、HDが操艦していました」

副長は答えた。

「で、HDは持ち帰ったのか?」

「いいえ!危険なので置き去りにしました!」

今度は、軍曹が答えた。

「危険?」

その理由についての報告は受けていない。

「HDが爆発したのです。[たちばな]のHDには爆薬が仕掛けてあったのです」

軍曹が説明した。

「本艦所属のHDに、相手の電源を切らせ、本艦へ運搬しようとしたのですが…………」

副長が口ごもった。

「HDは信用できません!奴らは声を出さなくても専用コミュニケーションで意志疎通させています。奴らが実施した爆発物検査の結果など信用できません!電源でさえ、本当に落としたかどうか」

軍曹は唾を飛ばして力説した。

「それで、ウチのHDも置き去りにしてきたのか」

俺は言った。

「危険は、未然に排除すべきです!」

軍曹は興奮している。

「行きは、信用して一緒に乗って行ったんだろ?」

「え? あ、はい、まー、その時は」

「自分の目で、ウチのHDに爆発物が無いことを確認できれば、納得するのか?」

「あ、はい。そうです」

軍曹は答えた。

「よし、じゃ、みんなで行こう」

俺は言った。


俺はHD維持管理部の少尉と技師、警備部の大尉、そして副長とサクラを伴い、魚雷艇に乗り込んだ。魚雷艇には、先ほどの臨検隊の人間20人が乗っていた。彼らは警備部所属だったので、上官の大尉が同行すると知って、今は大人しく座っている。

ガコーーッ

魚雷艇は格納庫から発着場へ移され、隔壁が閉じられた。

ウィーーッ!ウィーーッ!ウィーーッ!

警報が鳴る。

「警告!排気まであと2分。風防、乗降口、閉鎖密閉」

プシュー、ガシャ

シュー、ガチッ

魚雷艇は、操縦席の窓や、乗降口ドアを密閉し、パイロットがロックを確認し、グッドサインを出した。

ウィーーッ!ウィーーッ!ウィーーッ!

キュィィィイイイーーーーーン!

「警告!排気開始。警告!排気開始」

イエローの回転警告灯が、レッドに変わった。

ブッシューーーーーーーーー

発着場のエアが抜かれ始め、

ウィーーッ!ウィ…………

キュィイーーー…………

……………

発着口が開くと、無音になり、魚雷艇は再び[もがみ]の外に出た。


[はまかぜ]までは、300メートルくらいだろうか。

艦の周囲に敵の姿は無いが、だだっ広い空間を300メートル駆け抜けるのは、どこかで何者かが狙っていたとしたら、格好の標的になってしまう。

身を隠せる場所は、この出入口の前にある、[はまかぜ]が破壊した敵艦の残骸だけである。

カサナ中尉は、どうしたらよいものか悩んでいた。

「ピピ [はまかぜ]どうぞ」

「こちら[はまかぜ]」

「ピピ 現在、10時の方向300メートルの、敵艦裏の出入口内にいる。援護射撃は可能か?」

「死角でなければ、可能だが」

「ピピ 了解。一かばちか、やってみる」

カサナ中尉はそう言うと、全員にジグザグに走って[はまかぜ]にたどり着くよう命令した。

それを聞いた隊員たちは、ゴクリと生唾を飲んだ。

遮る物が何も無いスタジアムで、観客席のどこかから照準器の中に捉えられていると思うと、恐怖を通り越した奇妙な感覚に襲われた。

「ピピ [はまかぜ]、3分後にダッシュする」

カサナ中尉は、[はまかぜ]に連絡した。

「了解。警戒する。絶対に着けよ」

[はまかぜ]のイシダ艦長だ。

「敵が撃ってきても、走り続けるんだぞ!」

中尉は、全員に檄を飛ばした。

クィーン

クゥィィーーン

[はまかぜ]の連装機銃が周囲を警戒して、あちこちに向けられている。

「5、4、3、2、1、ゴー!」

中尉の号令で、30人が一斉に飛び出した。

全員、全速力でジグザグに走った。

がむしゃらなので、お互いにぶつかって転倒する者もいた。

ピュン!

ピュン!

どこからか、レーザーを撃ってきた。

ピュン!ピュン!

「うあっ!」

誰か撃たれて、倒れた。

「くそっ!」

カサナ中尉は、倒れた隊員の方へ走る向きを変えた。

「ピピ おい!大丈夫か!」

「ピッ 足がっ」

ピュン!ピュン!

レーザーの銃撃が迫ってきた。

ダラララララララッ!

ダラララララララッ!

ドガガーーーン!!

ガガーーン!

[はまかぜ]が壁の上の方へ向けて機銃を発射した。

ガラガラと壁の破片が降ってくる。

中尉はその間に、隊員に肩を貸し、なんとか走りだした。

「ピピ もう少しだ、がんばれ!」

ピュン!ピュン!

二人をかすめて、レーザーが飛んでくる。

ダラララララララッ!

ガガガーーン!

[はまかぜ]の援護射撃が効いている。

ピシュッ!

ピシュッ!

先に[はまかぜ]に着いた隊員たちが、小銃で援護射撃をはじめた。

ピュン!ピュン!

カン!ガンッ!!

ピシュッ!

ピシュッ!

「ピピ よーし!よくやった!」

中尉と、足を撃たれた隊員がようやくゴールした。

中尉が振り返ると、撃たれた隊員数名が、まだ倒れたまま取り残されていた。

「ピッ ダメです!中尉!」

「ピピ 放せ!」

「ピッ もう、死んでます!」

「ピピ まだ間に合う!」

「ピッ 無理です!諦めてください!」

「ピピ くそっ!!」

カサナ中尉は、隊員たちに抱えられるようにして[はまかぜ]の艦内に入った。

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