【122】戦艦[ジョージア]の反乱
「こちら臨検隊ヒラセ。[たちばな]に到着。現在、艦底発着口に接近中。開口要請を試みます」
ヒラセ副長からの連絡だ。
「こちら[もがみ]臨時検査隊である。艦底発着口を開くよう、要請する」
ヒラセ副長は、[たちばな]に要求した。
第20番惑星と[もがみ]との中間地点の宇宙空間で、特務護衛艦[たちばな]の艦底発着口がゆっくりと開いた。
「行け」
ヒラセ副長は、パイロットHDに言った。
臨検隊を乗せた魚雷艇は、ゆっくりと発着口に進入して行った。
ガコッ
魚雷艇が発着場に着艦すると、開口部がゆっくり閉じ始めた。
………………シュゥゥウウーー!
………………キィィイイーーン!
発着口が閉じると艦内の圧力に調整され、何らかの気体で満たされたため、魚雷艇のエンジン音が激しく反響した。
発着場と格納庫の間の隔壁が開き、[たちばな]所属の艦載機が並んでいるのが見えるようになった。
キュイイィィーーーン………………
魚雷艇はエンジンを停止し、環境調査担当HDが外の気体の成分を調べると、人間に適した状態であることが判明した。
「よし、行くぞ」
ヒラセ副長は、魚雷艇のドアを開けた。
プシュー
隊員たちは銃を構えながら機敏に艇を降り、物陰に身を隠しながら格納庫の外へのドアに向かった。
「敵の姿は無いか?」
「クリアです」
副長と隊員たちは連絡を取りながら、周辺調査しつつ進んだ。
「通路へのドアを開ける。念のためフェイス・シールドを下ろせ」
違う区画に行く度に注意しなければ、ドアを開けたら空気が無かった、という状況も考えられる。
シュイー
副長は、ドアを開けた。
「呼吸可能です」
環境調査担当HDが報告する。
これで初めてシールドを上げて呼吸することができる。
格納庫には誰もいなかったし、通路にも誰もいない。
副長は、隊員たちを3班に分け、ブリッジに一班、CICに一班、機関室に一班を捜索に向かわせた。
カサナ中尉率いる第25番衛星の突撃部隊は、[はまかぜ]のスラスターの風圧を背中に受けながら、そして物陰に隠れながら前進した。
ヒュオオオーーー!
ピュイーン!
ピュイーン!
パシュパシュー!
パシュー!
ヒュオオオーーー!
嵐の中の銃撃戦である。
「ピッ 中尉、あそこにドアが」
「ピピ よし、突撃だ」
大きな両開きドアの両側に隊員たちが身を潜め、ドアの正面にHDが立ち、小銃をキャノン・モードにして発射した。
バション!
ドガーン!!
ドアの中央に、大きな穴が開いた。
両側にひそんでいた隊員たちが中になだれ込んだ。
ピュイーン!
パシュパシュー!
ピュピュイーン!
パシュー!
ドガン!
パシュー!
ピュイーン!
ドーン!!
今までにない激しい銃撃戦になった。
シャキッ、ピッ、ピッ、
ビュン
隊員が手榴弾を投げた。
ドドドオオーーン!!
ピュイーン!
ドガーン!!
爆煙やら浮遊物やらで、全く視界が利かないが、敵からの攻撃が減ったのは確かだ。
シャキッ、ピッ、ピッ、
ヒュン
手榴弾をもう一発。
ドドドオオーーン!!
オオーン、オーン、オン…………
爆発音の反響が収まると、室内は静かになった。
ガラガラガラ……
シュー……
バチッ、バチバチッ!
銃撃戦と手榴弾の爆発で照明が破壊され、室内は真っ暗だった。
隊員たちはヘルメットと小銃のライトを点け、周囲の観察を始めた。
「ピピ 隊内の被害はあるか?」
中尉は隊員の状況を確認した。
「ピッ 大丈夫そうです」
ガラガラン
ガシャン
足元にも空間にも、色々な物が散乱し浮遊しているので、物に当たらずに進むのが難しいが、ドアから風が流れ込んできているので、煙や浮遊物が徐々に奥へと流されていく。
床にはHDの残骸が転がっている。
中には、ショートしてスパークを発しているものもある。
「ピピ コントロール・ルームの雰囲気だな」
「ピッ そのようです」
「こちら突撃隊カサナ、敵コントロール・ルームとおぼしき部屋を制圧。そちらに変化は?」
カサナ中尉は、[はまかぜ]に連絡した。
「中尉、ご苦労。こちらの敵の動きは止まった。と言っても、戦車やHDをスラスターで吹き飛ばして、隅の方へ山積みにしてしまったが」
よし、制圧の第一段階は終った。
「ピピ [はまかぜ]に戻るぞ」
中尉は言った。
何人かの隊員とHDが、コントロールパネルから記憶媒体を外したり、HDの頭からメモリを取り出したりして、中尉とともに[はまかぜ]のある空間に戻ってきた。
[はまかぜ]の周囲200メートルほどは、ホコリ一つ無いほど真っさらな状態になり、大挙して来ていた戦車やHDは、全て広大な空間の壁際に押しやられていた。
「司令、[ジョージア]が始動しました」
[もがみ]のレーダー担当ナラル中尉が報告した。
「[ジョージア]が? ケサン少将から何か言ってきたか?」
俺は、通信担当のタレク少尉に聞いた。
「いえ、事前には何も」
「少将に、一応伺ってみてくれ」
「分かりました」
俺は少尉に、[ジョージア]と連絡をとるよう言った。
「こちら[もがみ]。[ジョージア]ケサン少将、応答願います」
「………………」
ジョージアからの応答は無い。
「[ジョージア]エンジン点火。本艦から離れます。距離42,000」
ナラル中尉が言った。
「20番惑星から離れるのか」
俺には、ケサン少将の意図が分からなかった。
「[ジョージア]加速します」
中尉が報告した。
「どこに向かっているんだ?」
「進行方向には、[ドク・ワン]がいます」
「修理でもするのか?」
俺とナラル中尉でやり取りしていると、
シュシュシュィーーーンッ!!
シュシュシュィーーーンッ!!
「[ジョージア]が主砲を発射しました!」
中尉が大声を出した。
「レーザーを発射?」
ビカー!!
ビカ!!ビカーー!!
ビカ!!ビカーー!!
シュシュシュィーーーンッ!!
シュシュシュィーーーンッ!!
「レーザー、[ドク・ワン]に命中! [ジョージア]立て続けに発射します!」
ビカ!!ビカーー!!
ビカ!!ビカーー!!
シュシュシュィーーーンッ!!
ビカ!!ビカーー!!
シュシュシュィーーーンッ!!
「メーデー!メーデー!こちら[ドク・ワン]、
現在、攻撃を受けている!メーデー!メーデー!」
シュシュシュィーーーンッ!!
[ジョージア]は撃ち続ける。
「ケサン少将!何をやってるのですか?!」
タレク少尉は、[ジョージア]に呼び掛けた。
シュシュシュィーーーンッ!!
[ジョージア]は撃ち続ける。
「ケサン少将!止めてください!」
「………………」
[ジョージア]からの応答は無い。
シュシュシュィーーーンッ!!
「メーデー!メーデー!こちら[ドク・ワン]」
ピカーーーーーッ!!
[ドク・ワン]は大爆発を起こした。
「………………」
「………………」
[もがみ]のブリッジも、[ドク・ワン]からの緊急通信も沈黙した。
「[ジョージア]との距離は?」
俺はナラル中尉に聞いた。
「げ、現在、75,000。急速離脱中です」
ケサン少将の意図が分からなければ、攻撃するわけにもいかない。
「距離123,000の位置で痕跡確認。[ドク・ワン]は完全に破壊されました」
理由は分からないが、[ジョージア]によって[ドク・ワン]は撃沈されてしまった。




