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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
117/132

【117】第25番衛星、敵基地攻撃

「艦長、私の見間違いでしょうか?」

[もがみ]のレーダー担当のナラル中尉が言った。

「どうした?」

俺は、中尉に聞いた。

「これは20番惑星の映像ですが、この夜の面の海に、海兵隊の特務護衛艦[たちばな]が漂流しているのですが、自分には照明が点いているように見えるのです」

中尉が言った。

[もがみ]は今、第2番衛星の陰にいる。

第20番惑星から離れてしまっていて、解像度は落ちているが、確かに海上の船のシルエットに明かりが見える。

「[たちばな]は、放棄されて、無人のはずだったな?」

俺は、ヒラセ副長に確認した。

「はい。そのはずです」

副長は、答えた。

「まずかったな。敵が手に入れたか?」

俺は、ミスったと感じた。

「あの時点では回収の方法も無かったので、仕方がないですよ」

副長が言った。

「どうにか取り戻すか、やむを得なければ破壊するしかないだろうな。

これまで敵が手に入れてきた船は、旧型ばかりだが、あの[たちばな]は新鋭艦だ。我々の技術で、敵が優位になってしまう」

俺は言った。

「そうですね。それはマズいです」

副長が考え直したようだ。


「艦長、再攻撃の許可を!」

[つきかぜ]のCICから、カズに進言があった。

「いや、結果は同じだろう。ミサイルが無駄になるだけだ。なので、このまま接近し、レーザー攻撃する」

カズは、決断した。

「敵は、電波を照射したのですよ?大丈夫でしょうか?」

航海長のビルザ少尉が言った。

「んーーー」

少尉に言われて、カズの決断も揺らいだ。

「スミレは、どう考える?」

カズは聞いた。

「発射された電波の詳細が分かりませんが、危険度は高いと思われます」

スミレは答えた。

「しかし、あいつを野放しにするわけには……」

カズは悩んだ。

「行きましょう!我々の任務は、敵の殲滅です」

戦術長の、ナステ少尉が言った。

「確かに。それは否定できませんが」

航海長は、一応、認めた。

しかし、その時だった。

ブリッジの電源が全て落ち、艦内は真っ暗になった。

ウィィーーン…………

エンジンの音と振動も止まった。

と、同時に、[つきかぜ]は、ゆっくり落下し始めた。

「全員、装備を着用!衝撃に備えよ!艦内に伝えろ!」

カズは、叫んだ。

ブリッジの全員は、緊急事態に備えて元々宇宙服を着ていたので、ヘルメットをかぶるだけで生命維持の対応ができた。

装備を着けた者は、各部署へ伝令に走った。

艦内の電源が全て失われたため、通信や酸素供給もストップした。緊急時に反応する座席のベルトも作動せず、グラビティ・コントロール・シューズも今は作動していない。したがって、全てのものがブリッジの天井へ吸い付けられた。

元々この衛星の重力は大して大きくないので、落下はゆっくりであるが、墜落したら、損傷は免れないだろうし、最悪、人的被害も発生するだろう。

「クロ、申し訳ない」

カズがそう思った時だった。

突然ブリッジの照明が点き、天井に吸い付けられていた物が自由になった。

ウィィイイーーーーーンッ!!

エンジン音が復活し、コントロールパネルにデータ表示が戻ってきた。

困ったのが、グラビティ・コントロール・シューズであった。突然作動し始めたシューズは、ブリッジ内を浮遊していた乗組員の足を無理やり床に引っ張り着けたからである。床に着地した者は良い方だった。シューズは場所を選ばず床方向に働いたので、コンソールや座席や、たくさんの障害物にはお構い無しに、足を引っ張り着けたのだった。

「全部署、被害を報告せよ」

カズは、全艦に通達した。

「艦長、各部署、かなりの被害が出ています。負傷者も多数います」

副長が報告してきた。

復旧前に伝令に出た者が、ブリッジに戻って来た。

「なんですか?あれは」

航海長がメインモニターを見て言った。

「アナタタチハ、スグニ、ココカラ、タチサラナケレバナラナイ」

カズをはじめ、ブリッジの全員がこれを読んだ。


「敵基地出入口らしき地点を発見」

[はまかぜ]のレーダー担当タラン少尉が報告した。

「どれだ?」

アツシがレーダー画像に見入った。

「なるほど。らしいな」

アツシは言った。

距離10,000の地点で、敵機を示す光点が、現れたり消えたりしていた。

「よし!行くぞ!」

アツシは、ここが敵基地だと確信した。

ドオォーーーーー!

[はまかぜ]と[さわかぜ]は、揃ってエンジンを噴射した。

ダラララララッ!

ピカッ!!

ヤブ蚊を叩き落としながら、2艦は基地とおぼしき地点に近付いた。

拡大モニターには、2つ平行に並んだトンネルで敵機が出入りしている様子が映し出された。

トンネルは、左が入口で、右が出口のようだ。

「結構、大きそうだが、艦が通れるか?」

アツシが航海長のハイニ少尉に聞いた。

「ええー?!艦長も大胆ですねー!」

少尉は、驚いた。

「大胆か?」

アツシは言った。

「あんなトンネルへ、艦ごと入ろうなんて考える艦長は、そうそういないでしょうね」

少尉は笑いながら言った。

「入れる腕が無いのか」

アツシは言った。

「バカ言わないでください」

アツシは、ハイニ航海長に火を着けた。

「方位000、距離1,000、速力200。手動操艦へ移行」

航海長は、自分で操縦することにした。

「[はまかぜ]より、[さわかぜ]は出口で待機せよ」

「[さわかぜ]、了解」

「距離300」

航海長は、操縦桿を微調整しながら、左側のトンネルへ艦首を向けた。

ダラララッ!

ドォーン!

この25番衛星には、大気があるようで、爆発音が聞こえた。

「突入します」

航海長が言った。

ゴオオーーーーーッ

[はまかぜ]は、トンネルに突入した。

エンジンの噴射音がトンネル内に響く。

ダラララララッ!!

ドドーーーンッ!!

パパパパパッ!!

ガガーンッ

大きな交戦音が響く。

「前方に光が見えます」

トンネルの先に、光が見えた。

ギ、ギギッ、ギ、ギギギギッ

艦橋上部のアンテナが、トンネルの天井に接触した。

ゴオオーーーーーッ

航海長は、[はまかぜ]の速力を落とさずに操艦した。

ピーンッ!ピキーンッ!

後方から敵機がレーザー機銃を撃ってくる。

ダララララッ!!

ドドーーーンッ!!

「空間に出ます!」

[はまかぜ]は、明るく広い空間に出た。

敵基地だった。

「全砲門、射撃開始!」

アツシは大声で命じた。

シュシュシュイィーーーーーンッ!!

シュシュシュイィーーーーーンッ!!

ドドーーーンッ!!

ダララララララララッ!!

ダララララララララッ!!

ドーーーンッ!

シュシュシュイィーーーーーンッ!!

ドガーーンッ!!

シュシュシュイィーーーーーンッ!!

ドドドーーーンッ!!

空間の地表面にビッシリ駐機されていた敵機に向けて、[はまかぜ]は全てのレーザー砲を撃ちまくった。

トンネルの外では、[さわかぜ]が出てくる敵機をことごとく撃ち落としていた。

内部の空間は、非常に広かった。

駆逐艦が方向転換しながら攻撃を継続できるほど広い空間だった。

「艦長、あれを」

アツシが、航海長が差す方を見ると、艦艇が何隻か並んでいた。

シュイーーーーーンッ!!

シュイーーーーーンッ!!

ドドドーーーンッ!!

ドドドーーーンッ!!

[はまかぜ]の主砲が、艦艇に命中した。









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