【116】第4番衛星に不明艦、発見
シュバ、シュバーーーン!
シュバ、シュバーーーン!
[はまかぜ]がクラスター・ミサイルを発射した。
シュバ、シュバ、シュバーーーン!
シュバ、シュバ、シュバーーーン!
編隊を組む[さわかぜ]も、負けじとクラスター・ミサイルを6連発した。
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
クラスター・ミサイルは、1発から20発の子ミサイルが分化して展開する。
連続して輝く爆発光は、敵機編隊に子ミサイルが命中している証だが、子ミサイルの命中をかわした敵機がその光の間隙を突いて真っ正面から突っ込んで来る。
シュ、シュ、シュイィーーーン!
シュ、シュ、シュイィーーーン!
そういうしぶといやつらには、主砲から不集束レーザー砲をお見舞いして殲滅する。
シュ、シュ、シュイィーーーン!
シュ、シュ、シュイィーーーン!
[さわかぜ]も、この効果的な攻撃方法をマスターしたようだ。
ダララララララララッ!
ダララララララララッ!
主砲の不集束レーザーも、運良くかわせたやつは、目標に近付き過ぎたのが運の尽き。対空速射砲の餌食となって、宇宙の藻屑となるのである。
「気持ちいいほど藻屑となってくれるが、こいつぁキリがないほどやってくるな」
[はまかぜ]のアツシは言った。
「この25番衛星に基地があるのは、間違いないでしょう」
ウメが言った。
「こちら[つきかぜ]、[あきかぜ]と共に、第4番衛星の索敵を続行する」
「こちら[もがみ]、了解」
ピィーン!
「レーダーに感あり。方位082、距離100,000。敵機の編隊です」
レーダー担当ホロテ少尉が報告した。
「あまり、クラスター・ミサイルも無駄遣いできないな」
カズが言った。
「ありったけ、ブチ込んでやればいいんですよ」
[あきかぜ]のヤマナカ艦長が伝えてきた。
「ヤマナカ、大丈夫か?」
「ドバシ艦長、お気になさらずに」
「いや、気になるよ」
カズは、何か異常を感じとった。
「仇討ちのチャンスを狙ってるだけです」
ヤマナカ艦長は答えた。
「あんまり自暴にならないようにな」
カズは、戒めた。
「分かってます」
ヤマナカ艦長は、答えた。
「どこだっけ?25番衛星だっけ?
あそことは、表面がだいぶ違うようだな。町のようなものなど全然無いようだし」
カズは、副長に言った。
「とりあえずは、10,000まで引き付けて、主砲の不集束レーザーが一番効果的ですね」
ヤマナカ艦長が、伝えてきた。
「ミサイルは、温存しよう」
カズは、同意した。
「ワイドレンジ・レーダーに感あり。方位085、距離148,000」
ホロテ少尉が報告した。
「現在、昼側になっている面の山から飛行物体が発進しているようです」
航海長のビルザ少尉が言った。
「正に秘密基地だな」
カズが言った。
「アナタタチハ、スグニ、ココカラ、タチサラナケレバナラナイ」
[もがみ]の格納庫にある特殊作業室の中にあったHDが、突然、おかしなイントネーションで勝手に喋り出した。
暗号解読のために端末をいじっていた管理部の技師は、とても驚いてHDの方を見た。
HDは、普通にイスに座っているだけだった。
技師は、HDが何と言ったのか聞き逃していたし、驚きのあまり、思い出せもしなかった。
技師は辺りを見回すと、壁の一ヶ所に監視カメラが取り付けてあることを見つけ、格納庫の管理室へ走った。
「アナタタチハ、スグニ、ココカラ、タチサラナケレバナラナイ」
管理室で技師が、当該カメラの記録を巻き戻し、音量を上げて、やっと聞き取れる音声だった。
「なんだこれは?突然」
技師は、独りで呟いた。
記録された映像では、HDそのものには全く動きは無かった。声を出しただけである。
技師は、急いで特殊作業室に戻り、HDの首のブレーカーを見たが、電源は落ちたままだった。
背中のパネルを開けると、技師はログイン・データを記録したチップを取り外した。
データを解析すると、ある電波を受信した後に電源がオンになり、20秒間と15秒間の2回、別の電波を受信し、6秒間喋って、電源が落ちたことになっていた。
技師はそれぞれの電波の特徴を解析したが、一番最初と一番最後の電波のみ、電源をオン、オフする違いだけの信号であることが分かっただけであった。
やはり、最後の暗号文にたどり着くためのフィルターが、どのドット・パターンを当てはめればよいのかが分からない。
「今度は、言葉を投げ掛けて来ました」
技師は、俺の所へ報告に来た。
「あなたたちは、すぐに、ここから、立ち去らなければならない?」
俺は、言葉をなぞって技師に聞いた。
「この星系から、出て行け。ということか?」
「そう捉えるのが、普通でしょう」
俺の問いに、技師は答えた。
「なぜ?」
「それは、分かりません」
「一体、誰が?」
「我々に、ここにいてほしくない者でしょう」
俺はもう少し具体的な答えが欲しかったが、今の段階では、致し方の無いことだろう。
「距離100,000。レーダー、ノーマル・モード」
[つきかぜ]のレーダー担当ホロテ少尉が言った。
「山が、夜になります」
航海長が言った。
「よし、行ってみよう」
カズが命じた。
「両舷全速、方位085」
ドオォーーーーー!
[つきかぜ]と[あきかぜ]は、エンジンを噴射し、敵機が出入りしているらしい山を目指した。
「方位009、距離1,000に敵機」
ホロテ少尉が報告した。
「戦術長、雑魚は見つけ次第、叩き落とせ」
ダラララッ!
ピカッ!
小さな敵機が、夏の夜に飛んでくるヤブ蚊のようで、非常に鬱陶しい。
そのヤブ蚊が、山の頂上から出入りしているようなのである。
ダラララララッ!
ピカッ
ピカッ
「目標まで、あと50,000。山の標高は2,500メートル程度です。
あ!山の頂上付近に不明艦を探知。宇宙軍の巡洋艦クラスの大きさです」
ホロテ少尉が報告した。
「お出ましか!」
カズが身を乗り出した。
「方位085、速力150%アップ」
ビルザ航海長がコールした。
「CIC、戦闘準備!」
「CIC、ミサイル、主砲、対空砲、発射準備、アイ!」
カズの命令に、戦術長が答えた。
「不明艦、距離40,000、高度2,550。本艦を探知しました」
ホロテ少尉が不明艦からの、測距電波を探知した。
「CIC、戦闘準備完了!」
CICから、オッケーサインが出た。
「通常ミサイル、1番から4番まで発射!」
カズが命じた。
「通常ミサイル1番から4番まで発射!」
シュバ、シュバーーーン!
シュバ、シュバーーーン!
両舷のミサイル発射管から、4発のミサイルが発射された。
「不明艦、位置変わらず」
レーダー担当からの報告。
ダララララッ!
ピカッ!
ヤブ蚊がしつこくまとわりついてくる。
「ミサイル、目標まで20,000。
あ!目標が転回、艦首をこちらに向けたようです」
「何をする気だ?」
ホロテ少尉の報告に対し、カズは不明艦の意図を予測できなかった。
「不明艦がミサイルに電波を照射しました!」
少尉が言った。
「目標まで10,000の地点で、ミサイルは全て撃墜されました!」
戦術長のノリチ少尉が、CICから報告した。
「電波でミサイルを迎撃したのか」
アツシは、やっと現実を理解した。




