【114】この星系に人間はいるのか?
「これは、人間がいれば、生活空間だろうし、HDだけだったら、機械の町。ということなのか?」
25番衛星上空3,000メートルにいる[はまかぜ]のイシダ艦長アツシが、専属HDのウメに言った。
「はい。この星系は、かなりの部分で人為的な変化が認められます。生命体が生存可能な場所は、その生命体による開発がなされたでしょうし、生命の維持が困難な場所は、HDに開発させたのでしょう」
ウメは答えた。
「問題は、その生命体の正体と、そいつが何故、我々の艦船やHDを保有して使っているのか。ということだ」
アツシは言った。
「その生命体の正体は、やはり銀河系内の人類に由来する者の可能性が最も高いでしょう。人類の科学技術が進歩しているにしても、遅れているにしても、それを共有できる、人類とは無関係の生命体の存在する可能性は、限りなく0に近いでしょう」
ウメは、解説した。
「自分も、そう思う。
そして、そう仮定すると、この件の首謀者は、人類の一部の反乱。と言うことになる」
アツシは、自分としての結論を出した。
ピィーン!
「レーダーに感あり。方位284、距離50,000。先ほどと同じ迎撃機の編隊と思われます」
レーダー担当のタラン少尉が報告した。
「CIC対応せよ」
アツシは、戦術長のノリチ少尉に命じた。
「CICより、クラスター・ミサイルと対空速射砲で対応します」
「ベリーウェル」
* * *
第4番衛星では、[つきかぜ]がフォックス・チームのパイロットを救助し、パンサー・チームの待機地点へ向かっていた。
ピィーン!
「艦長、レーダーに感あり。方位185、距離50,000」
レーダー担当のホロテ少尉が報告した。
「戦術長、対応せよ」
ドバシ艦長カズは、戦術長のナステ少尉に命じた。
「CICより、敵機多数を確認。クラスター・ミサイルで第1次対応します」
グゥーーーン
[つきかぜ]の両舷にミサイル発射管が出てきた。
「敵機多数!第1次迎撃は、6発!」
「目標、距離40,000」
「3、2、1、ファイア!」
シュバ、シュバーーーン!
シュバ、シュバ、シュバーーーン!
シュバーーーン!
クラスター・ミサイルが後方へ発射された。
「目標、距離30,000。後部主砲、不集束レーザー攻撃準備」
少尉が告げる。
「クラスター、展開」
クラスター・ミサイルが子ミサイルを展開した。
「あ!距離20,000で、敵機拡散!編隊が散ります!」
レーダーのホロテ少尉が言った。
「艦尾主砲、対応速射砲、発射準備」
戦術のナステ少尉がコールした。
ビカッ!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
「クラスター、数発、命中。
残存機、接近中。距離10,000」
「艦尾主砲、不集束レーザー発射!」
シュイイィィーーーン!
シュ、シュ、シュイィーーーン!
シュイイ、シュイイィィーーーン!
艦尾主砲、2基6門から、立て続けにレーザーが発射された。レーザーは距離が延びると少し拡散する不集束型で、小型の敵機の群れなどには有効である。
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
「敵機、さらに接近中!距離5,000」
「艦尾主砲、発射!」
シュイイィィーーーン!
シュ、シュ、シュイィーーーン!
シュイイ、シュイイィィーーーン!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
ビカッ、ビカッ、ビカッ!
「レーザー、命中!数機が接近!」
パパパパパッ
パパパパパッ
敵機が機銃を放ってきた。
「対空速射!発射ー!」
ダララララララララ!
ダララララララララ!
ビカッ!
ピカッ!!
「敵機、全制圧」
「よし。全員、ご苦労」
カズが戦闘終了を通達した。
「こちら[あきかぜ]、[はたかぜ]の調査を終了し、これから合流します」
ヤマナカ艦長から連絡が入った。
救助兼調査隊であったが、成果は[はたかぜ]と直衛機隊全てがHDさえいない、完全な無人で制御されていたということだけだった。
* * *
「もしかすると、パルサーの電磁波を相殺しつつ、空白となった周波数帯に暗号化した信号を組み込んでいるのかもしれません」
[もがみ]のHD維持管理部の技師が言った。
「そんな方法ができるのか?」
情報部の大尉が聞いた。
「それでなければ、有害電磁波を無効にしつつ、電波を用いた制御はできないでしょう。しかも、我々に容易には解読できない方法で」
技師は言った。
「かなり、高度な技術なのか?」
「タイミングを合わせる部分が難しいでしょうね」
管理部大尉の問いに、技師が答えた。
「これから格納庫で、回収した敵のHDでテストしますが、立ち会われますか?」
技師は、大尉たちに声を掛けた。
[もがみ]の格納庫には、2体の敵のHDが作業台にあった。1体はかなり破損が激しいが、もう1体は[ドク・ワン]から借りてきた状態の良い物である。
[もがみ]へ持ち込まれた時は、頭部や手足は胴体から切り離されていたが、今は、技師と管理部員によって復元されていた。
技師は、状態の良いHDを、電磁波からでも細菌からでも隔離できる特殊作業室へ入れた。
「この型は、首の後ろに電源スイッチがあります」
技師はHDの首に触れ、起動させた。
フィィーーーン
どこかに冷却ファンが付いているのか、軽いモーター音がしている。
サクラのような新型HDは、何もしていなければほぼ完全無音であるが、この旧型のように音がしては隠密行動はできないだろう。
「まずは、パルサーと同じ波長の電磁波を、HDに向けて発信します。もちろん、出力は下げています」
技師は、実験を開始した。
「まず、頭部のアンテナの先で、パルサーからの電磁波を受信し、周波数と出力を検知します。その後、と言うかほぼ同時ですが、アンテナの円盤状の部分からそれに対する同出力の逆波形電波を発生させ、自分の体を保護します。これが電波相殺です」
技師はすでにHDに色々な装置を取り付けていて、様々な状態を再現できるようにしてあるようだ。
「実験として、パルサーの電磁波を直撃させてみます」
技師は、全ての電磁波を一旦止めて、パルサーからの電磁波だけをHDに当てた。
バチンッ!
音がして、HDの首のスイッチ近くに付いているブレーカーが落ちた。
「これは、オリジナルのHDでも、同じことが起きます」
特殊作業室内のHDは、ブレーカーが落ちたままになっている
「見ものは、これからです」
技師は言った。
ピィー
カチッ
フィィーーーン
ブレーカーが勝手に上がり、
冷却ファンが回り出した。
バチンッ!
電磁波が当たり続けていたので、再びブレーカーが落ちた。
「小型バッテリーのおかげで、自動復旧しました。
今度は、電磁波相殺システムをオンにします」
技師が、HDに繋げてあるコントロールパネルをいじった。
「電磁波を当てます」
ピィー
カチッ
フィィーーーン
ブレーカーが勝手に上がり、
冷却ファンが回り出した。
今度は円盤状のアンテナから、相殺電磁波が出ているので、ブレーカーは落ちない。
技師は、今度は無線端末をいじった。
カシャ
ギギギ
ガシャッ
体育座りをしていたHDが、床に手を付き、膝を伸ばし、ゆっくり立ち上がった。
「それは、リモコンか?」
情報部の大尉が言った。
「そうです」
技師は、答えた。
「今、パルサーの電磁波は相殺されて、HDには実質的に電波は通じないんじゃないのか?」
俺も途中からだが格納庫に降りて、その様子を見ていた。




