【113】「かぜ」型駆逐艦 1番艦[はたかぜ]
「こちらAチーム[はまかぜ]。第1次迎撃を制圧。これより地表面へ降下し偵察航行をおこなう」
「こちら[もがみ]、了解」
[はまかぜ][さわかぜ]の2艦は、降下軌道に入り、高度4,000メートルの位置にいた。
地表面の拡大画像では、他の衛星と同じく、岩石ででき
た表面の所どころに幾何学的な模様や人工的な建造物が確認できた。
「艦長、様々な種類の電波を探知しました」
[はまかぜ]の航海長、ハイニ少尉が報告。
「信号や音声なども含まれるのか?」
アツシは聞いた。
「はい。信号、音声、映像、様々です」
少尉は言った。
「我々が理解できるものなのか?」
「いえ、全て、理解できません」
アツシの問いに、少尉は答えた。
「面白い映像でも流れているんじゃないか?」
アツシは、興味津々だ。
「では、映像を出します」
少尉が言うと、ブリッジのメインモニターにモノクロの映像が映し出された。
「なんだこりゃ」
アツシはガッカリした。
映像は、画面全体で100粒ほどのドットが不規則に並び、右から左へ流れているものだった。
「映像化された暗号ですね」
少尉が言った。
「地表の映像を見た方が面白いな」
アツシは、衛星の地表にも興味があるようだ。
「荒野にある町ですね。家もあればビルもある。道路もあるし、何かが動き回っているのも分かります」
少尉が言った。
第20番惑星の第25番衛星には、町があった。
太古の、例えば20世紀頃の地球人が、惑星探査機を打ち上げて、こんな画像を探査機が撮影したら地球外生命体とのファースト・コンタクトとして、狂喜乱舞するか、恐れおののくかのどちらかだっただろう。
衛星の夜の面にある町の建造物には照明があり、道路状の直線構造物にも、規則正しく光が並んでいる。そして、その道路上には、乗り物のような物も動き回っていた。
いくら宇宙人の存在を信じない人でも、いきなりこれを見たら、考えを変えるに違いない。
* * *
「こちらCチーム[つきかぜ]、第4衛星まで、2万キロ地点」
「[もがみ]了解。付近の不明駆逐艦及び、直衛戦闘機に注意せよ」
「[つきかぜ]、フォックスの待機地点を発見。急がないと夜が明けてしまう」
「[あきかぜ]が援護する。[つきかぜ]は、救出活動に専念してくれ」
「[つきかぜ]了解。頼んだぞ」
[つきかぜ]はさらに接近降下し。舟艇を使わず、直接乗艦させることとした。
[あきかぜ]は、[つきかぜ]より遅れて、周囲警戒しながら衛星に接近した。
ピィーン!
探知警報だ。
「艦長、衛星上空750メートルに不明艦を探知」
[つきかぜ]のレーダー担当、ホロテ少尉が言った。
「フォックスとの距離は?」
ドバシ艦長、カズは聞いた。
「5,100メートルです」
少尉が答える。
「ギリギリか。誘導ミサイルで対応せよ」
カズは、戦術長のナステ少尉に命じた。
「CIC、ナステ、了解しました。20秒後に発射します」
グゥーーーン
[つきかぜ]の両舷側面からミサイル発射管が出てきた。
「3、2、1、ファイア!」
バシューーーッ!
バシューーーッ!
左右からの発射管からミサイルが発射された。
「ミサイルが目標を認識しました。距離17,000」
ナステ少尉が報告する。
「方位、本艦下方018。距離18,000に敵機群、探知」
レーダー担当のホロテ少尉が言った。
「下からじゃ、仕方ない。クラスター・ミサイルで対応せよ」
カズは、CICへ命じた。
「CICより、クラスター・ミサイル20秒後に発射します」
戦術長のナステ少尉が、ミサイルにプログラムした。
「3、2、1、ファイア!」
バシューーーッ!
バシューーーッ!
再び、発射管からミサイルが発射された。
「誘導ミサイル、目標まで3,000」
「クラスター、分化します」
クラスター・ミサイルが子ミサイルを放ち、40発に分裂した。
ビカーーーーッ!!
ビカーーーーッ!!
地表面を映してしたモニターに閃光が煌めいた。
「誘導ミサイル、目標に命中。不明艦を破壊しました」
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
「クラスター・ミサイル、全弾命中」
戦術長が報告した。
「よろしい。よくやった」
カズは、答えた。
「こちら[フォックス・リーダー]、[つきかぜ]、お見事!3キロほど東に、敵艦が墜ちた。もうこちらへの脅威は無いかと思う。ありがとう」
「貴隊に被害は及びませんでしたか?
本艦はこれより降下し、貴隊の乗員を救出します」
「[フォックス・リーダー]より、感謝する」
「[つきかぜ]から[あきかぜ]へ。本艦は直接降下し、[フォックス]救出後、パンサー救出に向かう。
そちらは、撃沈した不明艦の調査にあたってくれ」
「[あきかぜ]、了解」
フォックス・チームが着陸している平地近くに[つきかぜ]が着陸したのは、それから20分ほど経ってからだった。
「艦長、あれが撃沈した駆逐艦です」
[あきかぜ]の航海長、ツイテ少尉が言った。
「同型の[かぜ]型じゃないか?」
艦長のヤマナカ大尉が気付いた。
「あれは、7115年に行方不明になった[はたかぜ]で、[かぜ]型駆逐艦の1番艦です」
艦長専属HDのキクが説明した。
「行方不明になった原因は分かるのか?」
ヤマナカ艦長は、キクに聞いた。
「航行データでは、ワープ航行中の航法システム異常となっています」
「じゃ、ワープ空間内で行方不明になったのが、またこの空間に現れたのか」
「そういうことになります」
艦長の問いに、キクが答えた。
「しかし、まずは救助活動だ」
ヤマナカ艦長は命じた。
「[はたかぜ]の近くに、降下します」
ツイテ航海長が言った。
「主砲を向けておけ」
艦長は戦術長のナロル少尉に命じた。
ドオオォォーーーッ
パスッ
パスーッ
[あきかぜ]は、[はたかぜ]の西1キロの地点に降下し、
副長であるカヤニ中尉を隊長とした救助兼調査隊を乗せた舟艇を発進させた。
ヒュイイーーーン
「後部甲板が無事なようです」
パイロットHDが隊長の中尉に言った。
「では、注意してそこに着艦しろ」
ヒュウゥー
パスッ
パスッ
シュィーーン…………
舟艇は、[はたかぜ]の後部甲板に着いた。
隊長以下5名の人間と、5体の警備用HDが舟艇から降り、艦体の破壊された部分から中へ入った。
「動体反応、生体反応、共に無し」
探知機を持った隊員が言った。
かなり破壊された鋼材や部材を乗り越え、大きな穴を迂回しながら、スクラップ置場状態の艦内を進み、苦労しながら10名はブリッジに着いた。
「こちら救助隊長、カヤニより[あきかぜ]、どうぞ」
「こちら[あきかぜ]。副長、どうぞ」
「現在[はたかぜ]のブリッジに到達。後部甲板から進入したが、破損状態が甚大にもかかわらず、人間やHDの痕跡無し」
「[あきかぜ]了解。必要箇所を調査し、帰還してください」
「了解」
「よし、取得可能なデータだけ持って行こう。HDは、接続してくれ」
隊長は、同行のHDにデータ収集を頼んだ。
「艦側の電源が完全に遮断され、データ収集ができません」
HDが言った。
「補助かバックアップか、何かしらが来ているはずだろ?」
隊長がHDに言ったが、
「いえ、端末側で、遮断されています」
と、反論されてしまった。




