【112】フォックス、パンサーを救出せよ
「[ドク・ワン]から許可が出るまで、この下で待機するしかないな」
フォックス・リーダーは、ある程度の平地を見つけて、一旦着陸待機することとした。
無闇に飛び続けても燃料を消費するだけだし、今の駆逐艦攻撃に対する敵の迎撃を受けて、多大な損害も出してしまった。
とりあえず待機し、[ドク・ワン]からの指示を待って、起死回生の一手を考えた方がいいかもしれない。
シュゥゥーーーーーン
着陸したフォックス・チームは、8機だけだった。
* * *
「こちらAチーム[はまかぜ]。現在25番衛星まで20,000の距離。多発する敵迎撃機による攻撃に対応するため、艦による直接調査をおこなう」
「こちら[もがみ]、了解」
「航海長、第25番衛星に降下せよ」
アツシは、航海長のハイニ少尉に命じた。
「衛星に降下、アイ」
少尉が復唱した。
「こちら[さわかぜ]、続きます」
ペア艦[さわかぜ]のタグチ艦長からも連絡が入った。
駆逐艦2艦が、第25番衛星への着陸軌道に入ると、早速、敵迎撃機の歓迎を受けた。
「敵機、接近。距離10,000。地表方向から上がって来ます」
レーダー担当のタラン少尉が報告。
「戦術長、迎撃せよ」
「CIC了解」
艦長の命令に、戦術長のノリチ少尉がCICで対応した。
「クラスターミサイル、発射準備。対空速射砲、発射準備」
「敵機、距離8,000」
「クラスターミサイル、発射!」
シュバーーーン!
シュバーーーン!
シュバ、シュバーーーン!
シュバ、シュバーーーン!
[はまかぜ]のミサイル発射管から6発のクラスターミサイルが発射された。
ミサイルは目標を認識し、初期水平飛行から艦の真下の地表に向けて進行方向を変えた。
「全員、耐衝撃防御!」
アツシは、全艦に通達した。
バッ!
ミサイルは高度15,000で、子ミサイルを放出した。
1発のミサイルが20発の子ミサイルに別れ、計120発が敵機に向かう。
ピカッ!
ピカッ!!ピカッ!!
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
ピカッ!!ピカッ!!
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
多数の爆光を確認したが、何機かミサイルをすり抜けた敵機が上がって来た。
ダララララララララッ!
ダララララララララッ!
対空速射レーザー砲が光を放った。
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
ピカ、ピカ、ピカ、ピカッ!
レーザーの弾幕が、残存敵機を一掃した。
「敵機、完全排除」
ノリチ戦術長が報告した。
「よろしい。よくやった」
アツシは答えた。
* * *
「暗号なのか、パターンなのか」
[もがみ]のHD維持管理部の技師が言った。
「そうだな。制御方法が分かればな」
維持管理部のトルヤ大尉が言った。
「あと、どこが本拠なのか。この支配力は、この星系全体に及んでいる可能性もありますからね」
技師は言った。
「そんなに広い範囲に影響するのか?」
大尉は聞いた。
「ご指摘いただいたような、HDによる機械化軍団なら、制御方法が確立されていれば、人間のように自然環境に左右される制限が減りますからね」
技師は答えた。
「なるほど。人類よりも広い範囲に及ぶか」
大尉は、感慨深げに言った。
「水の中も、制覇しているかもしれません」
「水の中?」
「また偵察隊長のトクセ大尉が、有力な情報をもたらしてくれました」
「それが、水の中だと言うのか?」
「第2番衛星の、海の中です」
「海中に何があるって言うんだ?」
「おそらく、海底基地でしょう」
技術が答えた。
「どうやって制御するんだ?」
大尉が聞いた。
「人為的な超長波電波を検知しました」
「水中で阻害されない電波か!」
「そうです。
通常なら、使う必要の無い領域の電波です。それをわざわざ使うということは、目的がある証拠です」
「そうだったのか」
大尉は、納得した。
* * *
「これが、巨大なアンテナです」
戦術長のサバラ大尉が、画像を指して言った。
「前回撮られた立方体で構成された部分は、管理棟とも呼べるものかもしれません」
「で、このアンテナで超長波通信をおこなっていると」
俺が、聞いた。超長波通信なんて、知らないからだ。
「通常使われる電波は波長が短く、物や空気や水の表面で反射します。それに対し波長の長い電波は反射せずに直進性が高くなります。太古の地球での戦争で、海中で活動できる潜水艦が開発されましたが、初期のころはアンテナ・ブイを海面まで上げて通信をおこなっていたのですが、この超長波電波が潜水艦との通信に有効ということで、開発が進みました。しかし、いかんせん巨大なアンテナ設備が必要で、高額な建設費がかかるため、当時の軍部も、積極的には推進しませんでした」
「じゃー、ここでは、大昔の技術を使っているのか」
大尉は、驚いた。
「技術は常に進歩していますが、使う目的と、常に合致しているとは限りません。今お話しした技術は、昔から人類によって開発されていましたが、昔に必要だったものは昔に使われ、昔の技術でも、今必要であれば、今、使われているということです。
だだ、昔人類が開発したにもかかわらず必要としなかった技術を、今になってHDが必要とすることに、非常な矛盾というか、不可解な感じを持ちます」
技師は、説明した。
「もしHDの反乱みたいのだったら、その理由は何なんだ?」
俺は、試しに聞いてみた。
「それは、まだ分かりませんね。機械的な故障のようなものがきっかけなのか、何者かの悪意によるものなのか。しかし、一つ言えるのは、HDの自主的な反乱ではないだろう、ということです」
技師には、理由は不明だが、HDが故意に起こしたことではない自信があった。
「どうして、そんなことが言えるんだ?」
大尉が言った。
「人類に反乱を起こしても、HDにはメリットが無いからですよ」
技師は、言った。
「人類を滅ぼしでもしたら、HDの天下じゃないか!」
大尉は、主張した。
「人類が滅んでも、HDに何ら得する事はありません」
技師も、なかなか引かない。
「俺なら、宇宙を統一して、トップになりたいぞ!」
大尉は、自分の野望を語った。
「じゃ、大尉が反逆者の親玉なんじゃないですか?」
技師は言った。
「なんだと?!」
大尉はコンソールを叩いて、立ち上がった。
「まあ、まあ、落ち着いて」
とりあえず、俺がなだめた。
* * *
「こちら、[ウルフ]所属、
フォックス戦闘機部隊、及びパンサー攻撃機部隊より、
第1遊撃機動艦隊、旗艦[もがみ]、応答願います。」
「こちら[もがみ]、フォックス、どうぞ」
「本隊は、母艦である[ウルフ]が壊滅したため、現在第4衛星上に着陸待機中。
しかし、不明駆逐艦との交戦により損害多数。よって、救援を求めるものなり」
「こちら[もがみ]、現在、第20番惑星の全衛星調査へ出ている艦を差し向ける。もうしばらく、お待ちいただくように」
「こちら、フォックス・チーム。ご手配に感謝します」
[もがみ]でこの救援要請を受けた通信担当のタレク中尉は、俺に対応を報告し、Cチームの[つきかぜ]へ第4衛星に急行するよう、連絡した。
「こちら[つきかぜ]、[あきかぜ]と共に、急行します」
[つきかぜ]のカズが答えた。
ドバシ艦長は、そのまま航海長のビルザ少尉に、第4衛星へ向かうよう、命令した。
「フォックス及び、パンサー・チームは、不明駆逐艦の反撃を受ける可能性があります。
急いでください」
スミレが、カズとビルザ航海長に言った。




