【111】データを集めると、海底基地が見えてきた
「こちらパンサー・リーダー、方位095、距離2,500に、平地がある。全機一旦そこへ着陸せよ」
「オール・パンサー、了解」
[ウルフ]の攻撃機隊のパンサー・チームは、4番衛星の平地で待機することとした。
「こちらフォックス・リーダー、まだレーダーで敵影を捉えている。全機こいつに一発お見舞いしてから、着陸地点へ向かえ」
「オール・フォックス、了解」
フォックス・チームは、[ウルフ]の地点まで1,500に迫った。
「あそこだ。煙が上がってる」
誰かが機番のコール無しで、[ウルフ]から爆煙が上がっていることを伝えてきた。
「敵は、そのすぐ向こうだ!」
「確認次第、攻撃!」
バシューーーッ!
バシューーーッ!
フォックス・チームがミサイルを発射した。
バシューーーッ!
バシューーーッ!
パシュ!パシュ!パシュ!
パシュ!パシュ!パシュ!
煙の向こうに、船が見えると、レーザー攻撃も始めた。
「リーダー!あれはウチらの駆逐艦じゃないですか?」
ピカ!!
ピカ!!
ビカーッ!!
ビカーッ!!
レーザー機銃とミサイルが前方の駆逐艦に命中した。
「一旦、攻撃中止!」
フォックス・チームが[ウルフ]の上空を通過すると、爆煙の合間から、ベイ・ドアや上甲板が大口径レーザー砲に何ヵ所も撃ち抜かれた[ウルフ]が見えた。
あれでは、B、Cエリアに残っていた機体も使い物にはならないだろう。しかも船首部分や、操縦室は跡形も無くなっていた。
「前方より敵機!」
連絡が入るやいなや、駆逐艦にまとわり付いていたと思われる護衛機が大群を成して攻撃してきた。
パパパパパッ
パパパパパッ
ガガッ!!
「くっそ! 5-2、被弾!」
パシュ!パシュ!パシュ!
ビカッ!!
パパパパパッ
パシュ!パシュ!
ビカッ!!
パパパパパッ
ドガガン!
「うわーっ!」
パシュ!パシュ!
「だめだ!キリがない!」
ガガーーン!
フォックス・チームは、数が少なくなってきた。
敵機は、素晴らしい機動性でフォックスを翻弄する。
「全機、ミサイルを駆逐艦にブチ込んで、撤退だ!」
フォックスは残りのミサイルを全弾、駆逐艦へ向けて発射した後、パンサーが着陸した所とは少し離れた平地の地点へ向かった。
* * *
「こちら偵察1号、画像のポイントデータを送ってくれ」
2機編隊で再度偵察に出た航空隊長のトクセ大尉は、前回の偵察の時に撮影した場所のデータ送信を[もがみ]に依頼した。
薄茶色か灰色の岩石ばかりでできた第2衛星の表面は、撮影地点のデータが無ければ、前回の撮影地点など全く分からない。
「こちら[もがみ]了解。ただ今、送信します。
それと大尉、間もなく夜の面になる辺りから、どうやら海があるようです」
[もがみ]の戦術長のサバラ大尉が、情報を伝えた。
「そうか、海か。
しかし、今、夜の側にしては電波の状態がおかしいな」
トクセ大尉は、通信の異変を敏感に感じとっていた。
「何か、変ですか?」
戦術長には、分からないらしい。
「俺の親が、耳を敏感にしたのかな?」
トクセ大尉は、冗談を言った。
「ポイントデータを受信しました」
コクピットのコンピュータが言った。
「よし。そのポイントへ。日向を避けて」
大尉は、音声で機体に命令した。
クゥィィーーーン
機体が大きくカーブし、直進進路に変わった。
「間もなく指示されたポイントです」
コクピットが喋った。
しかし、大尉には目視では確認できない。
「自動撮影」
大尉は、コンピュータにオーダーした。
「撮影完了しました」
自動撮影が終わったらしい。
「こんな所だったかな?」
大尉は、すぐには思い出せなかった。
と言うより、イメージと違った。
立方体が組合わさったように記憶していたからだ。
しかし、今見ている物とだいぶ違ったから、すぐに分からなかったのだ。
実際には、1キロ程度の直線部分のある構造物だった。
まあ、一応撮影は済んだので、帰艦してから検証すればいい。
「偵察1号より[もがみ]へ。海はまだ昼か?」
「[もがみ]より、偵察1号。沖合い4キロまで夜になっています」
サバラ大尉が言った。
「了解。海を撮影し、帰艦する」
「[もがみ]、了解」
キュゥゥーーーン
2機の偵察機は、昼と夜の境界近くの高度200メートルを飛行した。
かなり平坦で障害物は無い。
おそらく海の干満で、地表を侵食していると思われる。
しばらく飛行すると、左舷から海が迫ってきて、2機は、海上に出た。
「電波異常を検知しました」
コクピットのコンピュータが喋った。
「電波異常?どういうことだ?妨害電波か?」
大尉は、コンピュータに聞いた。
「超長波電波です」
コンピュータが答えた。
「なんだそりゃ?データを記録しておいてくれ」
大尉は、コンピュータに命じた。
「[もがみ]へ、これより帰艦する」
「[もがみ]、了解」
2機の偵察機は、海上を離れ、夜の中を[もがみ]へ向かうコースに乗った。
* * *
「敵の目標は、自動軍隊か?」
[もがみ]のHD維持管理部のトルヤ大尉は言った。
「あー、いい着眼点ですね」
技師も同調した。
「問題は制御の方法ですね」
技師は重ねて言った。
「人為的な電波は、検知したのか?」
大尉が聞いた。
「それは以前から、時折あります。しかし、完全に暗号化されていて、現在のところ、解読不能です」
技師は答えた。
「解読できれば、敵のHD軍団を叩けるのか?」
情報部の軍曹が割り込んできた。
「軍曹は盗み聞きの達人だな」
大尉は皮肉を込めて笑った。
「いやいや、そのての暗号に最も興味があるのは、情報部ですから」
軍曹は言った。
「じゃー、もっと真面目に、この厄介な仕組みについて、新たな発見をしてほしいものだな」
大尉は、上官的な言い方をした。
「情報が提示されれば解読しますよ。HDが扱っている、情報を加工する部分を引き出していただければ」
これだから、情報部は周りから好かれないんだ。
「ま、仕方ありません。これまでに保存された交信記録などから、共通のパターンなどを抽出するしかないですね」
技師は、腰を据えてやるつもりだ。
「あ、大尉、それともう一点、先ほどトクセ航空隊長が偵察から戻り、様々な情報を提供してくれました」
「そうか、戻ったか。成果はどうだ?」
大尉は心配で聞いた。
「検証はまだですが、素晴らしい偵察結果です」
技師は、トクセ大尉が持ち帰ったデータを称賛した。
「まず、立方体が組み合わせられた建造物は、ある構造物の一部で、長さ1キロ、幅10メートル、高さ10メートルの、おそらくアンテナです。
そしてその後、偵察機は超長波電波を検知しました。そこは、海のある衛星です」
「それが、何を裏付けるんだ?」
大尉は聞いた。
「超長波電波は、水中での電波通信を可能にする技術です。また、撮影された構造物は、超長波電波用のアンテナでしょう。そして、海があります」
技師は、ほとんど答えを言っていた。
「海中基地がある可能性が高いと思われます」
「か、海中基地?か。
うーん、敵はあの手この手で攻めてくるな」
大尉は、悩んだ。
「しかし、落ち着いて考えてみれば、全てこれまでに人類が開発してきた技術です」
技師は言った。
「私にお任せいただければ、これまでのHDの進化に係る歴史から紐解き、隠された真実を引き出す仕事の結果を出しますよ」




