【11】戦闘シミュレーション
「太陽系方面軍守備範囲内に異常なし」
「方位、速力、維持中。艦動力、異常なし」
「武装管制システム、異常なし」
HDが、それぞれ報告してくる。
ピー
警報が鳴った。
「ソナー、感あり!方位315、距離5万」
レーダー担当のHDが報告した。
「スピードは?」
「ほぼ停止中で、本艦が接近中です」
俺の問いに、レーダーを見ているHDが答える。
「距離4万5千。なお接近中」
敵なのか?
「艦首第1砲塔、レーザー発射準備」
念のため、準備命令した。
「砲雷長、照準にブレがあります」
レーザー砲担当の報告だ。
「ブリッジ、こちらCIC。艦体勢安定制御を要請する」
俺は、ブリッジに目標への正確な操艦を要請した。
「距離4万」
艦は、目標に接近していく。
上下左右にわずかずつスラスター噴射がおこなわれ、
目標に向けての艦の体勢が安定した。
ピュィーン!
警報だ。
「目標始動。距離3万5千。急速接近中」
緊急事態なのに、HDは淡々と報告する。
「目標、不規則運動。敵味方識別信号なし」
「敵、索敵衛星の可能性85%」
CICは、がぜん騒がしくなった。
「目標、本艦を捕捉」
「敵、索敵衛星の可能性100%」
「第1砲塔、発射準備は?」
俺は、射撃担当に聞いた。
「レーザー発射準備完了。目標追尾中」
「よろしい」
あ、なんかカッコよかったかな?
「距離2万。不規則進行で接近中」
「有効射程距離1万で、予測追尾射撃開始する。
各砲身照準に0.01度の誤差を取れ」
HDの報告に対し、俺は、照準命令を下した。
もう少し、引き付けてからだけど。
「目標、急速接近中。距離1万」
「てーっ!」
前方モニターに、艦首第1砲塔3門から発射されたレーザーが映し出され、音響と振動がCIC内に響いた。
「砲、命中。目標、消滅しました」
レーダーを見ていたHDが報告した。
ふーっ
俺は、ため息をついた。
なんの説明も受けていないのに、
無我夢中で遊んでしまった。
「んー」
ずーっと横にいたサクラがうなった。
「いいですね」
防火隔壁ドアからブリッジへ行くサクラの後ろで、
俺は振り向いてCICにいるHDたちに言った。
「みんな、ご苦労」
するとHDたちは立ち上がって、俺に敬礼した。
ブリッジの艦長席には、大佐が座っていた。
「なかなか、見事な対応だった」
大佐は言った。
「ありがとうございます」
一応、こう言うべきだろう。
「どうかな?」
大佐は、サクラを見て言った。
「問題は無いと思われます」
サクラは大佐に答えた。
「では、[しらかぜ]を任せよう」
大佐は、今度は俺に言った。
「任せる?」
大佐に聞いた。あ、ため口は、まずいか?
「駆逐艦[しらかぜ]の艦長だよ」
大佐は言った。
「え、次は、副長になるんじゃないんですか?」
「順番ではそうなんだが、余裕が無くてね」
「飛び級ってことですか?」
「あははは、まー、そういうことだ」
「そんないい加減なのでいいんですか?」
「システムは高度化してるし、君のような判断力があれば、物理的なエラーは、ほぼ起こりえない」
そういうものか。
「では、また、しばらく楽にしていてくれ」
大佐は、ブリッジから出て行った。
「サクラは、何か言うことは無いの?」
「このシミュレーションに関しては、特にありませんが、アツシさんがここに来たがっています」
サクラに、アツシから電話が来たのか?
「いつ、来るの?」
「クロさんの都合でもいいと思いますが」
「じゃ、今、呼ぼうか」
「では、クロさんのお部屋へ行きましょう」
サクラは、廊下を歩きだした。
「アツシにも、シミュレーションをやるの?」
「はい」
「あいつは今、何に乗ってるんだっけ?」
「駆逐艦[はまかぜ]です」
[はまかぜ]か。
「つーかさ、[しらかぜ]とか[はまかぜ]とかさ、
本当にある船なの?」
俺は、サクラに聞いた。
「もちろん、現実に存在します」
「今、どこにあるのさ?」
「[しらかぜ]は、地球から、いて座の方向へ約2万光年の地点をパトロール中です」
マジか。
「で、俺は、どうやって[しらかぜ]に行くの?」
「[しらかぜ]がワープ航法で帰還します」
あ、そうか。
ワープとか、ブラックホールとかあるんだっけ。
「こちらがクロさんのお部屋です」
サクラが、壁の黒い出入口を指した。
「ありがとう」
サクラにお礼を言って、中に入った。
喉が渇いたな。
俺は、壁を触ってみた。
プラスチックか何かの樹脂製か?
真っ白でスベスベしているだけだ。
あちこち触ってみたけど、どこも同じだ。
それでも、あちこち触ってみた。
要するに、サクラが壁から水を出したように、
俺が触っても飲み物が出ることを期待したが、
そうはならなかった。
「うわあああーーー!」
その代わり、俺は、死ぬほど驚いた。
部屋の中央のシートに、
アツシが寝ていたからだ。




