【10】駆逐艦[しらかぜ]
「と、まあ、2020年以降の歴史や、科学の変遷については、追々ご説明いたします」
サクラは一旦、説明を終わらせた。
「で、オンラインゲームと候補生選出についてですが」
サクラは、話題を変えた。
そう!そう!そこだよ、問題は。
「クロさんは現在、中型駆逐艦の砲雷長ですね」
「そうだよ。艦名は[しらかぜ]だよ」
俺は、ゲームのことを答えた。
「クロさんは今後、駆逐艦を2隻、または軽巡洋艦1隻以上を撃沈するか、重巡洋艦以上に50%以上の損傷を与えることで、[しらかぜ]の副長に昇級しますね」
「あ、そうなんだ」
ゲームの昇級パターンの詳細については分からない。
とにかく、敵の艦船をやっつければ、昇級する。
「ですので、ここから、スタートしていただきます」
サクラが壁に触れると、細長い棒に掛かった服が引き出された。
「こちらの世界にいる間は、こちらのルールに従ってください。まずは、この制服のご着用を」
俺は、服を手に取ってみた。
カーキ色というのかベージュ色というのか、それのシャツとパンツ。それに、茶色のネクタイ。
ネクタイなんかしたことないんだが、サクラが手際よく手伝ってくれて、とりあえず完成した。
左胸には、2センチくらいの四角い記しが2個。青いのと、赤地に銀線が入ったやつ。軍人は、これを増やすのが名誉なんだろう。両腕の横にはたぶん、宇宙軍のマークなんだろう、ワッペンが縫い付けてある。
「これが、宇宙軍のマークかい?」
一応、聞いてみた。
「はい。中央の銀河系をデザインした部分が宇宙軍本隊で、黒地にそれがあることで中央組織であることを示しています。そして、オレンジ色の字でSSFとあるのが、ソーラー・システム・フォースつまり、太陽系方面軍を意味します」
「この下の三角のような矢印のようなのは?」
「階級章です。クロさんは、曹長です」
思った通り、階級章だ。俺は、曹長なのか。
アツシとか、みんなは、なんだったっけかな?
ゲームでは、俺らはみんな違う艦に乗っている。
違う艦で、それぞれの役割を果たして昇級し、敵艦をやっつけて昇級し、いずれは艦長になって、段階的に高性能の艦の艦長の階段を登っていくわけだ。
とりあえず、今はまだ、下っ端だ。
駆逐艦の曹長だからな。
んでも、なんで、こんなんで候補生に選ばれたのか?
俺らには分からない評価基準があるのか。
「帽子と、上着は?」
シャツとパンツとネクタイで、一応、制服軍人に見えるんだけど、どうせならと思って、サクラに聞いた。
「帽子は、このキャップをお使いください。
上着制服は、まだありません。汗をかいてください」
分かりましたよ。どうせ下っ端ですから。
俺は、マークの付いた黒いキャップをかぶった。
「では、シミュレーションに参りましょう」
サクラは、黒くなった壁から出て行った。
基地の中はどうなっているのか分からないから、サクラに付いて行くしかない。壁に地図が貼ってあるわけでもなく、矢印と一緒に食堂の方向が書いてあるわけでもない。サクラなどのアンドロイドは、メモリーに納まっているだろうが、人間は、この基地の見取り図を覚えなければいけないのか?
右折、左折、直進を繰り返した後、サクラは壁に手を伸ばした。
部屋に入ると、というか、入ってみると、1メートル先に、もう一つドアがあった。
ドアを開けると、予想通り、
そこはシミュレーションルームだった。
ゲームの駆逐艦「しらかぜ」のブリッジ。
つまり、艦を制御する艦橋が再現されていた。
「すげー!」
俺は、感激した!
ゲーム機を40型液晶テレビに繋いでプレーしたって、
所詮、平面の画面を見ているだけだ。
それが、立体的に、現実的に、手で触れて操作できる状態で、目の前にある。
感動以外のなんでもない!
「ご覧の通り、ここはブリッジですが、一応、
手順として、隣のCICから始めましょう」
サクラはブリッジの壁にあるスイッチを押して、
防火隔壁ドアを開けた。
ドアの中に入ると、これも間違いなく、
「しらかぜ」のCIC、つまり戦闘指揮所だった。
壁に窓は無く、一方の壁面全体がモニターになっていて、艦の正面方向が映し出されている。で、スイッチで切り替えることによって、艦の全周囲が映し出される仕組みになっているはずだ。
機器類のランプは全て点灯していて、レーダー画面なども稼働しているのが分かる。
俺は、砲雷長として、レーザー砲の射撃に必要な数値が表示されている画面と、ミサイル発射に関するパネルを確認した。
各武装を実際に操作する者の席には、HDがすでに座っていた。
「シミュレーションを開始します。
本艦は現在、タイタンの現位置から4万5千の地点より、方位220へ、速力300で航行中」
まずは、サクラが報告した。
「周囲警戒を厳となせ」
俺は、皆に命令した。




