【107】第4衛星、敵基地制圧
[もがみ]の格納庫から舟艇が1隻、発着所へ移動していく。発着所で停止すると、格納庫との間の隔壁が降りてきてロックされた。
「警告!排気まであと5分。装備未着用者は退避せよ」
注意喚起が流れ、イエローの回転警告灯が回り始めた。
キュゥゥウウィィイイーーン
舟艇のエンジンが起動した。
ウィーーッ!ウィーーッ!ウィーーッ!
警報が鳴る。
「警告!排気まであと2分。風防、乗降口、閉鎖密閉」
プシュー、ガシャ
シュー、ガチッ
舟艇は、操縦席の窓や、乗降口ドアを密閉し、パイロットがロックを確認し、グッドサインを出した。
ウィーーッ!ウィーーッ!ウィーーッ!
キィィィイイイーーーーーン!
「警告!排気開始。警告!排気開始」
イエローの回転警告灯が、レッドに変わった。
ブッシューーーーーーーーー
格納庫のエアが抜かれ始め、
ウィーーッ!ウィ…………
キイィーーー…………
……………
発着口が開くと、無音になった。
舟艇は[もがみ]から発進し、第4番衛星の[ウルフ]に向かった。
舟艇には、HD維持管理部のトルヤ大尉と軍曹と技師、情報部の軍曹、工務部の軍曹が乗っていた。
「4番衛星まで700,000キロです。ゆっくりしていってください」
舟艇のパイロットが言った。
情報部の軍曹が窓の外を見ると、戦闘機が2機、並走飛行していた。[もがみ]からはこの舟艇しか発艦していないので、[しらかぜ]艦載の戦闘機を直衛に着けたのだろう。
「私は、これらの旧型HDを使っているのは、銀河系内人類由来の人類だと思っています」
管理部の技師が言った。
「銀河系内人類と全く関係が無い未知の知的生命体が、我々が開発した物と同じ物を持っている可能性は、ほぼ0%ですからね」
管理部の軍曹が言った。
「では、系内の人類が銀河系外にいると?」
情報部の軍曹が聞いた。
「このパルサー星系も厳密には銀河系外ですからね、我々が把握していない人類が系外へ拡散している可能性は十分にあります」
管理部の軍曹が、答えた。
「ただ、気になるのが、………」
技師が何か言いかけた。
「どうした?」
工務部の軍曹が聞いた。
「これらのHDや、不明船は、人類の物ですが、その人類そのものが発見されていません」
管理部の技師は答えた。
「人類不在で、HDたちが動いているのか?」
情報部が言った。
「それを結論とするには、証拠不十分ですが、そう結論付ける方向に向かっているような気がします」
管理部の軍曹が言った。
「そんなことが可能なのか?」
情報部が聞いた。
「我々が計画したものの、実行しなかった事がありますから」
工務部が言った。
「じゃー、そうした我々の技術的な秘密を知っている者の犯行か!」
情報部だ。
「ま、そう、結論を急ぐのはいかがなものかとは思いますが」
管理部の軍曹が釘を打った。
「お話中、すいません」
舟艇のパイロットが話を遮った。
「どうした?」
情報部の軍曹が聞いた。
「第4衛星が大変な事になっているのですが」
パイロットは、第4衛星での戦闘中の通信を皆に聞かせた。
「かなりの激戦だな」
情報部の軍曹が言った。
「どうしますか?」
パイロットが尋ねた。
「ここまで来たんだ、必要な物だけ持って帰ろう」
管理部の技師が言った。
「持って帰れればいいですけどね。
とりあえず、行ってみましょう」
パイロットは言った。
* * *
パパパパパッ
ギュィイイーーーンッ!
パシュパシュパシュ!
ピカッ!!
「フォックス2-2、1機撃墜」
「こちらパンサー・リーダー、あとどのくらいいるんだ?」
「こちら[ウルフ]、レーダー上では62機だ」
「味方は何機だ?」
「43機出て、15機やられた。残り28機だ」
「こちらフォックス・リーダー、増援はしてくれないのか?」
「Bエリア、準備中だ。もう少し頑張れ」
「りょーーかいーっ」
「こちらパンサー1-4、赤道付近で、今、夜の面になった辺りをよく見てくれないか?」
「こちらフォックス4-2、あそこだ。間違いない」
「こちらパンサー・リーダー、敵機の出口を発見した」
「こちらフォックス・リーダー、突っ込むぞ!」
「了解!」
「ラジャー!」
「イーーーーーヤッホォー!!」
衛星の赤道近くの山の斜面に直径50メートルほどの穴が開いていた。
フォックス編隊の残存13機は、リーダー機に続いてその穴に突入して行った!
パパパパパッ
ガン!ガン!
ビカーッ!!
「くそっ1機やられた! 前から来るぞ!気を付けろ!」
パシュパシュパシュ!
ピカッ!!
「フォックス4-4、1機撃墜」
「こちらフォックス・リーダー、左右の壁に注意!」
フォックス編隊は、溶岩洞穴と思われる真っ暗な洞穴を探照灯だけを頼りに高速で飛行した。
パパパパパッ
キイィィーーン
時おり前方から飛んで来る敵機を避けたり撃墜しながら、やや左にカーブしている洞穴を飛び続け、突然、広い空間に飛び出した。
あちこちに照明が点いているので、広い空間だと分かった。
パパパパパッ
パパパパパッ
「敵基地だ!攻撃に注意せよ!!」
パシュパシュパシュ!
パパパパパッ
パシュパシュ!
ピカッ!!
広い空間と言っても、地下の溶岩でできたドームだ。
敵味方入り乱れ、あちこちからのレーザー機銃掃射を避けながらの飛行は、かなりの技術が必要だ。
「全機、減速!集中しろ!墜ちるなよ!!」
フォックス・リーダーが檄を飛ばす。
「こちら2-2、中央の塔みたいのが怪しい」
「よし、やってみろ」
バシューンッ!
フォックス2-2は、広場の真ん中にある溶岩の塔を狙ってミサイルを発射した。
シュォォーンッ
ドガアァァーーンッ!!
ドォーーーーーーー!!
ミサイルは塔に命中し、空間内に衝撃波が広がった。それと共に全ての照明が消え、全ての敵機が墜落した。
「こちらフォックス・リーダー、敵基地、制圧」
「イーヤッホー!」
「やったぜーー!」
「うおーーー!!」
無線で歓声が飛び交った。
フォックス編隊が洞穴の入口から飛び出すと、パンサー編隊が待っていた。
フォックスが入った後、飛び出してくる敵機をここで撃ち落としていたのだ。
フォックスとパンサーは残存全機で周回飛行して様子を見たが、飛んでいる敵機は確認できなかった。敵機は全て墜落し、地表で煙を上げていた。
* * *
[もがみ]の舟艇が[ウルフ]に接近すると、最上段のAエリアと2段目のBエリアの外壁が解放されていた。
Aエリアはレッドの回転警告灯が回っているだけで、ほぼ空っぽの状態だった。
Bエリアはレッドの回転警告灯は回っているが、機体はたくさん収まっていてる。
上甲板には照明が当てられ、破損した機体が置かれたり、残骸を運んでくる輸送機が離発着していた。
「こちら[もがみ]舟艇、[ウルフ]着艦許可願いたし」
「こちら[ウルフ]、着艦を許可する。今、戦闘が終了したところだ。ちょうどよかったな。以上」
「ちょうど、戦闘が終わったようです」
舟艇のパイロットは、乗員に言った。
「そうか。戦闘に巻き込まれなくてよかった」
工務部の軍曹が言った。
舟艇は、[ウルフ]の上甲板の、作業の邪魔にならない空きスペースに着艦した。
「降りる前に、装備を確認してください」
パイロットは全員に宇宙服の点検を指示した。
皆それぞれ自分で確認したり、ペアで確認し合ったりして、グッドサインを出したことを見届けて、パイロットは舟艇のドアを開けた。




