【106】分かりかけてきたQの正体
「こちら偵察1号、現在、第2番衛星上空1,500メートル。今のところ、異常なし」
「[もがみ]了解。偵察を継続せよ」
「偵察1号、了解」
[もがみ]の航空隊長が第2番衛星の偵察に出たが、今のところ、異常は無いようだ。
「サクラ、あの後、Qから何か分かったかい?」
俺は、あのHDが気になって、サクラに聞いた。
「あれだけメモリーや処理回路が破壊されていると、情報を引き出すのは困難です」
サクラは答えた。
シュイーー
ブリッジのドアが開いて、HD維持管理部の軍曹が入ってきた。
軍曹は、俺に敬礼をするとすぐに、
「少し、お話ししたいことがあります」
と言って、俺をブリッジの外へ促した。
シュイーー
ドアが開き、軍曹とブリッジの外へ出ると、HD維持管理部の技師が立っていた。
「向こうの部屋へ」
俺は、大事な話の予感がして、2人と司令官室で話すことにした。
「何か?」
「あのHDの件なのですが、」
技師が話し始めた。
「どう考えても、我々銀河帝国製です」
「うん。そう思う」
俺は、相槌を打った。
「艦艇やHDなど、我々の物を大量に盗んで、どこかからかコントロールしているのでしょう」
「うん。そう思う」
確かに、そう思う。
「あのHDや、データベースにある最近発見された不明船などには、後から改造された痕跡があります」
「うん。確かに」
他に答えようがない。
「で、それらの改造は、元々、我々には必要の無い物です」
「ん? 例えば?」
俺は、ここで初めて疑問を呈した。
「艦艇を無人航行させたり、」
「あー、なるほど」
「特別なアンテナで電磁波から本体を保護したり、」
「うん、うん」
「手の甲にレーザー銃を備え付けたり、」
「あー、そうか」
「我々には必要の無い事ですし、だからこそ、そんな物は取り付けたりしていないわけです」
「うん。それで?」
「当初、敵は銀河系外の未知の何者か、と言われていましたが、これらを考えると、我々人類に由来する何者かによるものでしょう」
「まー、それが自然な考えだよね」
俺は、賛同した。
「あと、あのHDは、自己修復制限機能が解除されています」
「自分で自分を直せるのか」
「そうです」
たしか、サクラは、
制御プログラムが組み込まれているので、HDは自分で自分を修理や改造はできない、と言っていた。
ピー
司令官室のインターホンが鳴った。
「艦長、偵察機が敵機を探知しました」
戦術長のサバラ中尉の声だ。
「よく分かりました。暫時これで、失礼する」
俺は、技師と軍曹に言って、ブリッジへ向かった。
シュイーー
「艦長、敵機は3機、距離1,000メートルです」
ブリッジへ戻ると、戦術長が報告した。
* * *
パパパパパッ
前方でレーザー機銃が光った。
[もがみ]の戦闘機2機は敵のレーザーを急旋回でかわした。
航空隊長は、敵機の後ろに付け、照準モニターの標的に機銃掃射した。
ピカッ!!
「まず、いっちょ」
パシュ!パシュ!
ピカッ!!
「ふたーつ」
「隊長、残りは自分が」
パシュ!パシュ!パシュ!
ピカッ!!
「みっつ目、いただきました」
「お見事」
偵察機2機は、敵機3機を撃墜した。
「んーーー?」
航空隊長は衛星の地表の画像を撮り、[もがみ]へ送信した。
* * *
パパパパパッ
パシュ、パシュ、パシュ!
ピカッ!!
パパパパパッ
パシュ!パシュ!パパパシュッ!
ピカッ!!ピカッ!!
「イーーーヤッホー!」
「フォックス3-2、お見事!」
パパパパパッ
ガンッ!ガンッ!
「くっそ!やられた!
メーデー!メーデー!フォックス4-5、不時着する」
第4衛星上では、空中戦が激しさを増していた。
ピカッ!!
「パンサー3-3、1機撃墜」
「お見事。てか、どっからこんなに出てくるんだ?」
「分からん、どんどん増えてくるぞ」
「フォックス・リーダーより[ウルフ]へ、敵機が増えているんだが、どこから来るのか分からないのか?」
「こちら[ウルフ]、今は昼の面から来ているようなので、詳細は不明だ」
「あー、フォックス・リーダー、了解」
パシュ!パシュ!
ピカッ!!
「フォックス・リーダー、1機撃墜」
* * *
「このアンテナと、この手のレーザー銃なんだが、ちょっと違和感を感じないか?」
[もがみ]の格納庫で、HD維持管理部の技師と工務部の係員が、またQを調べていた。
「違和感?」
係員が言った。
「製造工場で大量生産されたのか?
自分には、そんな感じがしないんだが………」
技師は言った。
「確かに。
アンテナの方は、かなり損傷しているから何とも言えないが、レーザー銃の方は、なんか変だな」
「なんと言うか、手作り感と言うか」
「そう、そう、そんな感じだ」
技師と係員の意見が、また一致した。
「これは仮説だが、」
「なにか?」
技師の話に、係員は興味がある。
「自己修復制限機能が解除されたHDが、自分で作ったとしたら?」
「…………あり得る」
2人は、何かに近付いている思いがした。
* * *
「メモリーを外して、ブレインを分析すれば、どういう制御下にあるか、分かるかもしれない」
[ウルフ]の上甲板には次々とHDや、戦闘機の残骸が運ばれてきていた。
HD維持管理部や工務部、情報部の技師や係員が色々と調べ回っていた。
その中で、体から切り離された3つの頭部が並んでいるのを眺めていた工務部の技師が、首をかしげた。
彼は3つの頭部に近付いて行って、上から横から、よく見てみた。
「んーーー。なんか変だな」
技師はつぶやいた。
そして、10本くらい並んでいる腕の所へ行って見てみて、1本1本を持って、じっくり見てみた。
「んーーー、やっぱり変だな」
技師は、このHDのオリジナルである6900型のデータを端末に表示させて、よく見てみた。
オリジナルには、当然アンテナは無い。手の甲にレーザー銃もついていない。
技師は、6900型の別バージョンや、派生型、検討はされたが実際の開発に至らなかった技術などが無いか、調べてみた。
あった。
〈電磁波保護アンテナ〉ー不必要
〈個体別内蔵武装〉ー不必要
〈個体別飛行装置〉ー不必要
〈通信外自律制御〉ー排除案件
〈金属等切断溶接装置〉ー不必要
〈自己修復制御〉ー排除案件
これらが検討されたが、理由付けされて、採用されなかった。
しかし、ここに回収されてきたHDには、装置によっては、これらが採用されているものがある。
銀河系内で正規に流通していた時には当然に無かった装備が、新型入れ替え期間中に旧型が回収、解体されることなく保存され、何者かによって改造が施された。と、考えることができるであろう。
この仮説を裏付けるには、「誰が」「どこで」「何の目的で」を証明する必要がある。
ピリリリリ
艦を中継した広域通信で呼び出された。
「はい。海兵隊HD維持管理部、トロノ大尉です」
「[もがみ]所属HD維持管理部、トルヤ大尉です」
「初めまして、トロノ大尉。実は、海兵隊の方で旧型HDや艦艇の残骸を回収したという話を聞きまして、情報をいただきたく、ご連絡いたしました」
[もがみ]のトルヤ大尉は言った。
「初めまして。そうですか。自分もちょうどこのHDを調べていて、情報交換した上で共有調査していけばさらに進展が望めると思うのですが」
海兵隊のトロノ大尉は言った。
「今は、[ウルフ]の方に多く保管されていますので、後日お伺いしたいと思いますのでよろしくお願いいたします」
[もがみ]のトルヤ大尉は依頼した。




