【105】第4番衛星での空中戦
「師団長より全員に達する。偵察部隊により、この衛星に敵の存在を確認した。よって、ただ今より本船は臨戦態勢を取り司令部を『ウルフ』として作戦行動を開始する。各員、即時戦闘可能となるよう態勢準備を実施せよ」
[ドク・ツー]は海兵隊師団司令部[ウルフ]として機能を始めた。
索敵、攻撃、防衛の態勢を整え、第4衛星を制圧し、20番惑星の秘密を明らかにするためである。
「偵察部隊、第1から第5まで全て索敵行動準備」
キュィィィーーーーーンッ!
キュィィィーーーーーンッ!
キイィーーーーーーーンッ!
[ウルフ]の格納庫では、全偵察機が発進準備を開始し、戦闘機、攻撃機それぞれ3機を1チームにした即戦部隊3チームが発進許可を待っていた。
「格納庫Aエリアを全て開放する。10分後に排気を開始するので、装備未着用者は直ちに退避すること」
3層に改造された格納庫の最上階のAエリアを全開放することになった。
ウィーーッ!ウィーーッ!ウィーーッ!
Aエリアではイエローの回転警告灯が作動し、船内とAエリアを繋ぐドアは5分後にロックされる。
宇宙空間に対応できる装備を着用していない者は、Aエリアにはいられなくなる。今、急いで退出するか、すぐに装備を着用しなければならない。
ウィーーッ!ウィーーッ!ウィーーッ!
「警告!ドアロックまで、あと3分」
警報が鳴り続ける。
キュィィィーーーーーンッ!
キイィーーーーーーーンッ!
ドアァーーーーーーーーッ!
格納庫の機体のエンジン音も大きくなっていく。
「警告!ドアロックまで、あと30秒」
キイィーーーーーーーンッ!
キュィィィーーーーーンッ!
「警告!ドアロックしました。排気まであと5分」
船内に警告が流れる。
装備着用が不完全でも、あと5分は生きていられる。
「偵察部隊フォックス・リーダー発進準備完了」
「戦攻部隊パンサー・リーダー発進準備完了」
「[ウルフ]了解。グッドラック」
[ウルフ]が発進許可した。
「警告!排気まであと2分。Aエリア全機密閉」
ウィーン
グィーン
シューッ
Aエリアの全機体が、キャノピーを閉じた。
パイロットがロックを確認し、グッドサインを出す。
「警告!排気開始。警告!排気開始」
回転警告灯が、イエローからレッドに変わった。
シューーーーーッ
格納庫から空気が排出される。
キイィーーーーーーン…………
キュィィィーーー…………
ドォォーーー…………
壁面ドアがスライドして開き始め、
格納庫Aエリアは、無音になった。
通常照明は消灯し、赤い回転警告灯と機体の標識灯、
それにエンジンノズルからの青白い光であふれた。
[ウルフ]のAエリアの両舷が開け放たれ、数十の機体が音も無く発進して行った。
* * *
「艦長、2番衛星軌道まで、あと10,000キロです。そして、2番衛星そのものが35,000キロまで接近しています」
[もがみ]のノラン航海長が報告した。
「グッドタイミングすぎるな」
俺は、思わず言ってしまった。
「このまま速度を落として、衛星が来たところで裏側へ回り込もう」
俺は、そう提案した。
「それは、ベストアイデアですね」
航海長も賛成した。
「両舷減速、速力2,000」
「両舷減速、アイ」
機関長の指示に、機関室が答えた。
[もがみ]は減速し、ちょうど2番衛星が軌道を進んで来るのを待つことにした。
「艦長、やはり電波が発信されてます」
通信担当のタレク少尉が言った。
「パルサーの反射波じゃないのか?」
俺は、疑問を言った。
「いえ、意図的な電波だと思います」
少尉は自信を持って答えた。
「分かった。調査の準備をしよう。
戦術長、偵察部隊の準備を」
「了解。CICで準備します」
俺は、戦術長に偵察の準備を命じた。
「艦長、航空隊長のトクセ大尉です」
しばらくすると、戦術長は航空隊長を連れて来た。
「大尉、あの衛星の偵察をしてもらいたい」
俺は、隊長に偵察を頼んだ。
大尉はブリッジの窓から、近付いてくる第2番衛星を眺めて、
「分かりましたか。すぐに出ます」
と言って、ブリッジを出て行った。
そしてその10分後には、第2番衛星に向かう戦闘機が2機、ブリッジの窓から見えた。
* * *
「こちらフォックス・リーダー。夜の面を円周状に偵察飛行中。現在のところ、異状なし」
「こちら[ウルフ]、了解」
偵察部隊からの報告だ。
「現在、撃墜した敵機の残骸確認及び回収のため、輸送機を墜落現場に向かわせているので、誤認に注意されたし」
「フォックス・リーダー、了解」
第1偵察部隊が低空飛行していると、まだ煙が上がっている撃墜した敵機の所に、輸送機が着陸しようとしているのが見えた。
撃墜された我が第5偵察部隊3号機の乗員2名は、先ほど救難機に救助され、負傷したものの命に別状は無かった。
「パンサー2-1より、距離2,000に敵機探知」
戦攻部隊が敵機を見つけた。
「フォックス4より、応援に向かう」
「パンサー2-1より、敵数5、距離800!」
パパパパッ!
パパパパパッ!
パンサー2編隊の前方でレーザー機銃が光った。
「展開!迎撃!」
戦闘機3機、攻撃機3機のパンサー2編隊は敵のレーザー機銃をかわし、上空へ展開した。
パシュッ!パシュッ!パシュッ!
パパパパシュ!!
目標が上空へ展開したところへ、低空飛行のまま直進した敵機を、応援にきたフォックス4編隊の5機が迎撃した。
ピカッ!!ピカッ!!
ピカッ!!
「こちらフォックス4-1、チームで3機撃墜した」
パパパシュ!
パパパシュ!
ピカッ!
ピカッ!
上空で宙返り状態で戦闘域に戻ったパンサーが、残りの敵機2機を撃墜した。
「こちらパンサー2-1、残りの2機を撃墜」
「サンキュー、パンサー」
「ありがとう、フォックス」
やり取りは、全機に聞こえている。
「握手はお客さんが帰ってからやってくれ」
「こちらフォックス5-1、お客さん5名様確認」
フォックス5編隊が展開し、敵に狙いを定めた。
「フォックス4へ、ヘルプが欲しいなら言ってくれ」
「あー、敵が100機くらいになったらな」
パシュ!パシュ!
パパパパパシュ!
ピカッ!!
ピカッピカッ!!
ピカッ!
「こちらフォックス4、チームで4機やった」
「こちらパンサー3、スペアは、こっちで」
ピカッ!!
フォックス4が逃した1機を、パンサー3が仕留めた。
「サンキュー、パンサー」
「スペアは、高得点だ」
* * *
撃墜した敵機を回収した輸送機が[ウルフ]に戻った。と言っても、上甲板に残骸を全て降ろして、そこで調べることにしたのだが。
「500年前の宇宙軍の戦闘機です」
調査官が、立ち会いの工務部長に言った。
「単座の防空用戦闘機で、操縦していたのは300年前のHDです」
「このボロHDが操縦していたのか」
「そうです」
「で?このHDが自分の意思でやったわけじゃなかろう?」
「おそらく、命令系統が存在するのでしょう」
調査官が答えた。
「その司令部は、この星にあるのか?」
情報部担当の大尉が割り込んできた。
宇宙空間で作業している時の通信は、だいたい誰にでも聞かれてしまう危険がある。
「この型のHDは、すでに専用ネットワークが確立された後の物ですから、この星以外から制御することも可能ですが、この電磁波の嵐の中で命令を実行させるには、この星だけで管理する方が効果的かもしれません」
調査官は答えた。




