【103】旧型HDの反乱
ウィーーーウィーーーウィーーー!
艦内に警報が鳴り続けている。
ドカドカドカドカ
カンカンカンカン
警備班が艦底部にある格納庫の前に到着した。
「レディー! ゴー!!」
班長がドアの横のボタンを押すと、黄色い非常回転灯が回りだしてドアが開き、班員たちは中へ突入した。
ウィーーーウィーーーウィーーー!
警報は鳴り続けている。
シュィン!シュィン!シュィン!
バンッ!ガンッ!ガンッ!
シュシュシュィン!
シュシュシュシュシュィン!
ドカンッ!ドンッ!ドンッ!
ガガガガガンッ!
班員たちが突入したとたん、レーザーが飛びまくり、体を伏せたり、柱や物陰に身を隠さなければならなかった。
「ピピ、何が起きてるんだ?!」
班長は班員たちに手で指示を出しながら無線で聞いた。
「ピー、奥で何者かが、銃を乱射しています」
シュィン!シュィン!
ガン!ドカンッ!
シュシュシュィン!
カンッ!カンッ!ドガッ!
「ピピ、前進する。援護せよ」
班長が指示した。
ウィーーーウィーーーウィーーー!
班長が班員に、進め、回り込め、と手で指示する。
シュシュシュシュシュィン!
ガン!ガン!ガチャン!ガン!ガン!
「ピー、あいつだ!Qだ!!」
柱の陰に隠れた班員が言った。
「ピピ、あのボロHDか?!」
班長が確認しようとした。
シュィン!シュィン!
ピキンッ!カンッ!
床に転がされたままのQが手の甲のレーザー銃を乱射していた。
「ピピ、制圧しろ。破壊してもかまわん」
班長は命令した。
パシュッ!パシュッ!
ガンッ!ガンッ!
班員の撃ったエネルギー銃弾はQの頭部と両手に当たり、レーザー銃の発射は止まった。
Qはジタバタと手足を動かしているだけになった。
近付いた班員が、近くにあったオノでQの両手を叩き切った。これで完全に銃は使えない。
ウィーーーウィーーーウィーーー!
「誰か、警報を止めろ」
班長が指示した。
「こいつ、勝手に動き出したのか?」
「持って来た時は、完全に壊れてたよな?」
班員たちは、確認し合っていた。
「警備より副長へ」
「副長だ」
班長の呼び掛けにブリッジの副長が応答した。
「格納庫でQがレーザー銃を乱射していましたが、現在、制圧しました」
班長は報告した。
「なに?Qが? 何故だ?」
「分かりません」
副長が疑問を投げたが、警備班長にも分からない。
「維持管理部と工務部で調べた方がいいかと」
とりあえず、班長が提案した。
「そうだな。それまでQの残骸を監視してくれ」
「了解しました」
2名の警備班員がQの残骸の監視に着いて、他の班員は撤収した。
* * *
第20番惑星第4衛星の上空20,000メートルに、[ドク・ツー]の巨体が浮かんでいた。
「極夜になるのは、南北どちらだ?」
船長が航海士に聞いた。
「今後200日以上は、北極側です」
「よし。では北極の起伏の大きい場所を選定せよ」
船長のカナル中将は、[ドク・ツー]を、北極の凹んだ場所に隠したいようだ。
「北極点から140キロの地点に、小山脈の中で船を隠せる場所があります」
航海士が報告した。
「よし、そこに降下だ」
「了解しました」
[ドク・ツー]は北極点に微速前進しつつ、微速降下し始めた。
フォォォーーーーーッ
パシュッ!
パシューーッ!
船底部のスラスターと、前後左右のスラスターを噴射し、巨体のバランスを取りながら降下する。
「目標地点まで距離1,200メートル、高度5,000メートル」
[ドク・ツー]は、前進速度を落とし、降下角度を垂直に近付けた。
バシュッ!!
バシューーッ!!
バシュッバシュッ!
船底部スラスターが強噴射になった。
巨体の降下速度を落とすには、かなりのエネルギーが必要だ。
「距離300メートル、高度2,000メートル」
航海士が、微調整しながら船をコントロールする。
「着陸する平面は大丈夫か?」
船長は、船が収まる着陸地点か心配している。
「舗装とまではいきませんが、過去の溶岩流跡でしょうか、かなり平面になっています」
航海士は、地表を拡大表示して見せた。
「おお、これはラッキーだな」
船長も安心したようだ。
「降下地点到着、高度400メートル」
ゴオオオーーーーーーーーッ!!
「伸縮安定台座、開出」
船の底面に、キャタピラーやゴムタイヤが付いた安定用台座がいくつも突出した。
ゴォォォーーーーーッ!
パシューーーーンッ!
ゴォォーーーッ!
パシューッ!
ゴォーー
パシュッ
パシュ…
シュゥゥゥーン……
「エンジン停止。[ドク・ツー]、目標地点に着陸完了」
航海士が報告した。
「よろしい。ご苦労」
カナル中将は答えた。
こうして海兵隊専用船となった[ドク・ツー]は、第20番惑星第4衛星のほぼ北極点近くの山脈の中に、拠点として着陸を完了した。
* * *
「艦長、[ドク・ツー]が第4衛星に着陸したようです」
ヒラセ副長が報告した。
「了解。あ、第4衛星の調査は、海兵隊が自分たちでやるんだろうな?」
俺は、ちょっとした疑問を呈した。
「あ、確認した方がいいですかね?」
副長も心配になったのか。
「面倒だけど、頼むよ」
俺は、お願いしてしまった。
「第2番衛星軌道まで、150,000キロ」
ノラン航海長が報告した。
「結構、良いタイミングで第2番衛星に行けそうです」
サクラが報告する。
「軌道到達直前に、2番衛星そのものが接近してきます。そこで20番惑星の陰から2番衛星の陰に移動できるでしょう」
「パルサーに曝される時間が、かなり短くて済むな」
「はい。そういうことです」
なんて良いタイミングなんだ。
「そうだ、サクラ、一緒に格納庫へ行こう」
俺は、サクラとブリッジを出た。
シュイーー
コツッ、コツッ、
カシャ、カシャ、
サクラと2人で歩くと、こういう音がする。
HDにドロボウはできないだろう。
エレベーターで最下階まで降りて艦尾方向へ歩くと、鉄が焼けるような匂いがして、空気が白っぽくなってきた。
「この匂いと煙は?」
俺は、サクラに聞いた。
「Qがレーザー銃を乱射し、格納庫内のあちこちに当たって破損したためのものでしょう」
サクラは話しながら歩いた。
カシャ、カシャ、
コツッ、コツッ、
格納庫の入口ドアの上にある表示はグリーンだった。
グリーンは、開扉可能ということである。
レッドやイエローだったら、格納庫に空気が無い可能性がある。そういう事故を防ぐため、艦内のほとんどの隔壁ドアなどには、開閉可否の表示灯が付いている。
ま、グリーン以外の時は、ロックされて開けること自体できないのだが。
シュイーー
俺が開閉ボタンを押すと、エレベーターのように左右にドアが開いた。
格納庫の中は、焼けた鉄の匂いがさらに強くなり、白い煙もまだ残っていた。
入って3メートルほど行った所に2名の警備班員が立っていて、俺らを見ると銃を下げて、敬礼した。
俺は、警備班員に答礼し下を見ると、ほとんど黒く焦げた艶消しシルバーの体のHDが転がっていた。頭部や胸なども破壊され、両腕が体から離れて遠い所に置かれていた。
「このQが、レーザー銃を乱射したのか?」
俺は、警備班員に聞いた。
「はい。
私たちが到着した時、この場所で、ほぼこの転がった状態で、手の甲のレーザー銃を撃ちまくっていましたので、制圧し、両腕を切り離しました」
警備班員は、そう答えた。




