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PS72パルサー星系防衛軍  作者: 星野 光一
100/132

【100】新しいステップへ

「こちら[ドク・ツー]、[ドク・ワン]応答せよ」

「こちら[ワン]、[ツー]どうぞ」

「現在、惑星より6億キロ地点にワープアウト。これよりそちらへ向かう」

「[ドク・ワン]了解」


PS72星系第20番惑星に向けて、火星基地から2隻めのドック船が派遣された。


当初の[ドク・ワン]に乗ってきた先遣海兵隊は全滅してしまい、海兵隊用の艦艇も、すでに残存が無い。


ここまでの経過についての報告は、すでに潜宙艦によって火星基地へもたらされていて、その報告に基づいて計画、作戦が練り直され、[ドク・ツー]の派遣となった。


そして、公式には発表されていないが、この[ドク・ツー]の扱いはこれまでと違う異例の運用となった。


つまり、海兵隊専用の「母艦」となったのであり、搭載された艦艇数と、人員数は、師団単位となった。


今後の作戦としては、この第20番惑星の扱いについては海兵隊による制圧をおこない、後方支援としてPS72星系の警戒を第1遊撃機動艦隊が担当することとなった。


要するに、20番惑星を海兵隊が抑えるまで、他の星で何か起こらないかマークしておけ、という命令である。


* * *


「司令より[さわかぜ]、任務、ご苦労であった。全員1日の休息を摂り、明日の1200時より本艦隊に復帰し、任務に当たるように。以上」


確保した[ながら]をドック船に引き渡し、そのついでに依頼した軽微な修理が終わった[さわかぜ]が、艦隊に戻って来た。


今後は、2艦をペアとして、この星系のパトロールに従事させることになる。


まずは、19番と21番というように、20番惑星に近い星から行きたいが、何せこの星系はパルサーが厄介だ。

あの串が刺さったゴマ団子のような星が見えただけで、みんな酷いヤケドを負ってしまう。


超強力な電磁波のお陰で、電子機器類は全て機能不全となり、今頃昼の面になった第20番惑星に置き去りにされたHDはただの鉄屑となっているだろう。


「司令より各艦長へ達する。これより艦長専用回線でブリーフィングをおこなう。以上」

俺が通達してから5分以内に、全艦長とブリーフィング準備が整った。


「今後、20番惑星については、海兵隊が処理する。

我が艦隊は、後方支援として、周囲の警戒を担当する。[はまかぜ]と[さわかぜ]、[いそかぜ]と[きぬかぜ]、[つきかぜ]と[あきかぜ]を、ペアとし、[しらかぜ]は、[もがみ]の直衛とする」

「海兵隊はすでに現着を?」

[はまかぜ]のイシダ艦長、アツシが聞いた。


「現在、ここから数億キロ地点を航行中だ」

俺が答えた。


「規模はどのくらいですか?」

[あきかぜ]のヤマナカ艦長が聞いた。


「機密事項だ。が、噂では、1個師団」

と、俺は、答えた。


「1個師団と言えば、10,000人規模ですよ!」

[いそかぜ]のカドマツ艦長、シンヤが言った。


「あくまで噂だし、俺たちとは直接的には関係が無い。俺たちは、20番惑星以外をやればいい」

俺は、結論を言った。


「[さわかぜ]の一休みが終わったら、行動開始といこうじゃないか」

これに、一同が同意した。


* * *


「こちら[ドク・ツー]、現在、惑星まで2億キロ地点。[ドク・ワン]とランデブー後、拠点について検討願いたい」

「[ドク・ワン]了解」


ドック船は通常、宇宙軍輸送局所属である。軍内でも局が違えば制服も異なっていて、どこの所属か一目で分かるようになっている。


[ドク・ワン]の船長は輸送局の制服を着ていたが、[ドク・ツー]の船長の制服は違うものだった。


それは明らかに軍服であり、海兵隊将軍のものであった。

そして操縦室内の操船係員も全て海兵隊の制服を着ていた。

つまり、[ドク・ツー]は、丸々海兵隊のものであり、高さ50メートルの格納庫も3層に分割改造され、通常のドック船の3倍もの艦艇や武器、資材及び人員を積載していた。


[ドク・ワン]と違い、今回は海兵隊本隊だ。先遣海兵隊が得たデータを、連絡用HDがどの程度伝えたかは分からないが、特務護衛艦や魚雷艇などは積んで来ていない。


攻撃力があり、機動性に優れた機体を、ワンサと積んで来ているはずだ。あとは、あのヤブ蚊のようなドローンに、どう対処するかが問題だ。


* * *


ガシャ!ガチャン!

[もがみ]の格納庫で、上陸チームのリーダーが[トーピー2]の中から1体のHDの残骸を引きずり降ろした。


「あいつらの残骸か?」

俺は、リーダーに聞いた。


「味方のHDが戻って来るのを待ってたんですが、2体は乗艦したんですが、後は来そうもなかったんで、何かの役にたつかと思って、足元に転がってたこいつを持って来たんですよ」

思いがけない収穫かもしれない。


確かに今まで、敵についてのサンプルが少なすぎたのは事実だ。だから、敵について何も分からず、何の対策も打てないでいたのだ。


「よくやった少尉。大手柄かもしれないぞ!」

俺は、リーダーの少尉を褒めてやった。


そして、サクラをリーダーとした敵のHD究明班を編成し、[もがみ]のラボで分解、研究することとした。


現在の銀河系内では、HDは新旧混合で使用されることは無い。

外観はもちろん、ハードウェアとしての駆体や制御するためのオペレーションシステムやプラットフォーム、ソフトウェアやアプリケーションが変更されると、HDそのものが更新され、更新前の旧型個体は漏れなく回収される。

この入れ替えは非常に迅速で、HDの新旧混在を可能な限り短時間で実施することが行政区分単位の法律で厳しく規定されている。

なので、現実的には、例えば体が黒いHDが開発されれば、全銀河系内で2日間ほど銀色のHDと黒色のHDが見られた後、3日目からは全てのHDが黒色だけとなる。


今、このラボにあるHDは、325年前から320年前まで銀河系内で使用されていたHDの形式と判明し、その内この個体は登録抹消後に解体完了と記録されているシリアルナンバーだった。


このことから、このHDは320年前に新型と入れ替えられる際に、登録抹消と解体完了との記録がなされた後、どういう仕組みか分からないが、実際の解体はされずに、どこかへ横流しされたと考えられる。


作業台に乗せられたHDは旧型の意味と、不明な点が多いことから「Q」と呼ぶことにした。


Qは、最新型のサクラと比べて、まず一見してマット・シルバー、つまり艶消し銀色をしている。サクラたち最新型は、ピカピカの光沢銀色である。


身長は、最新型より5センチほど低く、重量は15キロほど重かった。


最新型がかなり細身の人間に近く造形されているのに対し、Qはアンドロイドと言うより、ロボットという表現の方が近いかもしれない。


サクラの頭部はあごの方が細くなった逆卵型で、目や耳、鼻や口など、突起している部分は無い。ピカピカシルバーの顔に、大きな目の形の部品がはめ込まれ、表面は顔と同じシルバーで、この目の中には高性能カメラが入っている。耳、鼻、口には10個ほどの小穴が開けられていて、この小穴から様々な情報を収集する。


手足も人間に近い造形で、関節もシルバー色素を含ませたシリコン素材で、繋ぎ目などもほとんど目立つこと無く、頭から足の爪先まで一体造形と思わせる完成度だ。


それに対してQは、俺のウチの近くにあるお寺の鐘、吊り鐘というやつだが、長さ30センチほどの吊り鐘型の頭が乗って、手足もまさに工場で製作されたものを取り付けたという造形だった。

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