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三十三話 俺がすべての罪を背負い

 ふぅ……。腹が一杯だと何もする気が起きない。食事の後片付けはやってくれるらしいし、ごろごろして牛になるか。


 縁側に寝転がってよう。


 しかし、縁側の下に池を通すのはイカしてる。まだ若い池だが、日が経てば、池を囲む灰色の石も黒くなり、また苔むして風情のある池に姿を変えていくはずだ。


 どうやら池の水も元に戻ってるしひと安心だ。城なしが底上げしたのかな。深くなったり浅くなったり、魚もびっくらこいただろうに。


 池を見ていると癒されるなあ。ここまで来るとししおどしが欲しいところだ。カッコーンってなるやつ。竹が出来たら是非シノに作って貰いたい。


 そうやって、わずかに揺らぐ水面をしばらくぼーっと眺めていた。


 どれだけ、そうしていた事だろう。それまで、大きな変化を見せなかった池だが、ふとその水面に不思議な光景を映して見せた。


 おや? 今、チラッと女の子が水面に映ったような気が……。もうろくしたんだろうか。ラビでもシノでもない白い髪の綺麗な子。ちょっと勝ち気な感じのする子だったな。


 あんな子欲しい……。なるほど俺の妄想が幻覚をみせたのか。もう一回幻覚でも良い。あの子に会いたいな。


 そんな阿呆な事を考えると、ラビとシノ。そしてパタパタが俺のところに駆け寄ってきた。


 何だか物々しいな。まさか、またアイツが来たのだろうか? あの腰の怪我じゃあ、動く事すらままならないハズだが……。


 何らかの手段で回復したんじゃなかろうな?


「ご主人様。残った焼き鳥が、全部無くなっているのです!」


「えっ? 後でおやつにしようと思ったのにな」


「ボクなんて、まだ一度も食べてすら無いよ」


「パタパタはふてくされて転がっておったからじゃろう」


 焼き鳥は魔物の肉だ。どちらにせよパタパタの腹には収まらない。おやつが無くなったのは残念だが、また戦いになる訳じゃあ無くてほっとした。


「しかし、一体なんで焼き鳥が無くなったんだろうな」


「いや、城なしには、わぁたちしかいないので、恐らくこの中の誰かが食べたと思うのじゃが」


 そりゃそうだ。でもまあ犯人探しなんて不粋だ。ここは俺が全部食ったことにしておこう。


「あー。すまん、俺が食べたっぽい。いや、食べた気がする?」


「な、何を言っておるのじゃ? 言動がとても怪しいのじゃ。主さまは頭も打ったのでは無いかのう?」


「えっ? ご主人さま頭を怪我したのです?」


「ツバサ大丈夫? 頭舐めたら治る?」


 やれやれ、馴れない事をしたらこれだ。演技力とかそんなんないわ。しかし、ひっどい言われようだな!


 目的は果たせたからいいけどさあ。


 そうやって、俺が泥を被る事でその場は収まったのだが……。


「ご主人さま! お魚が食べられているのです」


 またしても、被害者が現れた。


 今度は鮭か。うわっ。残骸が落ちてる。生で腹をがぶりといってるよこれ。しかし、やるしかないか。


「うっ。これは酷いね。まさか、これもツバサが食べたの?」


「そ、そう。それも俺が食った」


「これも主さまが……?」


「お、おう」


 いや、俺ワイルドすぎるだろ。シノが難しい顔になってる。まあな、そんなん信じられんわな。ちょっと無理があったかなって自分でも思う。


 と言うかこれ、誰やねん!


 ラビでもシノでもないだろこれは。パタパタならいけそうだが、白いから鮭にかじりついたら真っ赤に染まるハズだ。


 城なしが実は食ってるとかのがまだ信じられる。


 他にも無くなっている食料があったりするのか? ちょっと食料をチェックしてみるか──。


 俺は一人、かまどに向かった。


 ふむ。他にもバナナアイスや鳥ハムが少し無くなっているのか。バナナアイスは俺のウェストポーチの中だから城なしじゃあないよなあ。


 おっといかん。


 犯人探しはしないと決めたのに犯人探ししてしまっているじゃないか。どうせ、法も罰もここには無い。全部俺がやったで構わないのだ。


 そう、これは食料チェックしているだけ。


 自分に言い聞かせるようにして納得すると、俺はマイホームに戻り、縁側に寝転がるとまたぼーっとして過ごす。


 ハズだった。


「主さま! くせ者なのじゃあ!」


「えっ? 空の上なのに曲者出るの? まさかアイツか!?」


「違うのじゃ、まあ、捕まえたので見てもらう方が早かろう」


 アイツじゃ無いのか。じゃあ何者だ? いやまあ、俺以外にも空飛べる奴はいるかもしれんな。天使とか悪魔とかいそうだし、妖精さんなんかもいるんじゃないか。


 で、どれなんだ?


 シノに連れられ、マイホームの裏手に出ると女の子が、転がっていた。


 女の子は全身白ずくめで、ジャケット、ブラウス、スカート……。いや、ショートパンツという奴か。とにかくそんな装いだ。


 首に掛かる骨、あるいは牙のチョーカーが、ちょっと背伸びな感じがする。しかし、人間の女の子だ。人外には見えない。


 なんだ。どれでもないのか。ん? 女の子? この子は……! さっき池に映った女の子じゃないか。なんだ幻覚じゃあ無かったのか。


 いやまて、これはおかしいぞ。


「人間の女の子がどうやってこんなところまで?」


「フン! どうだっていいじゃない。早く離しなさいよ!」


 うわあ、なんて気の強い。でも、こう言うのも悪くない。やっぱりこんな子が欲しい。


「いかんのう。立場を考えてもらいたいモノなのじゃ。そりゃっ、腰が痛いのじゃろう? そりゃっ。そりゃっ」


「いっ、ちょ、腰を棒でつつかないでよ! 痛い、痛いってば! もう。何するのよ!」


 なんだ? シノに軽く棒で、つつかれただけにしては、過ぎた痛がり様な気がする。


「もしかして、腰を怪我しているのか?」


「ひっ! 来ないで!」


 うおっ。すげえ、ほふく前進ならぬほふく後退した。しかも、とんでもねえ勢いだ。この反応……。もしかして男が苦手なのか?


「縛った方がよいのかのう」


「いや、良いよ。逃げ場なんて無いし、逃げられても構わないから」


「逃げる? この私が? そんなのあり得ないわ!」


 なんだ? 逃げるって言葉にやたらと反応したな。


「凄い速さでホフク後退したのは、逃げた内に入らないのか?」


「これはその、違うのよ! そう、あんたの息がクサイからよ。逃げたわけじゃないわ!」


 えっ? 俺の息クサイの? なにその突然降ってわいた衝撃的な事実。ちょっと凹んだ。


「い、いや、どっちでもいいんだけどな」


「どうでも良いですって!?」


 そんな事は言っていない。ふうむ……。やりにくいなあ。


「怪我が治るまでここにいるんだろう?」


「そうね」


「そうすると、この島は空を飛んで移動しているから、もう元の場所には帰れないぞ?」


「別に構わないわよ。空が私の世界だし空は全部繋がっているわ。どこでも同じよ」


 おお。何かちょっと格好いい事言ってる。へっぴり腰で無ければ様になっただろうに。


「取り合えず、これからしばらく一緒に暮らすことになるから名前ぐらい教えてくれないか?」


「無いわよそんなモノ。好きに呼べばいいじゃない」


「ええっ!? お名前ないのです?」


 おや、いつの間にやら、ラビも来ていたのか。パタパタも一緒か。まあ、こんだけ騒いでりゃよって来たりもするわな。


「な、何よ。無くたって困らなかったし、欲しいとも思わなかったんだもの」


「名前が無いのは可哀想じゃのう」


「うん。とっても悲しいね」


 なにやら変な空気になってきた。そんな空気におされたのか、女の子はどうにでもしてといった風体で言葉を吐く。


「もう、分かったわよ。そこの羽付き。あなたが私に名前を付けなさいよ。名前なんてどうでもいいけれど、自分で付ける様なものじゃないんでしょ?」


 羽付きって俺の事か。どことなくお正月チックな呼び方だな。しかし、名前かあ。センス何て無いんだがなあ。


 俺の名前から取ってどうにかするか。


「ツバーシャでどうだ? 俺の名前が翼だからもじってツバーシャだ」


「ご主人さまのお名前つばさだったのです!?」


「わぁもはじめて聞いたのう。なんとなしに聞く機会がなかったのじゃ」


「えっ? ボクいつもツバサって呼んでたよね?」


 そう言えば名乗ってなかった。パタパタが俺の事をツバサと呼ぶのは、俺には翼が生えているし、愛称か何かかと思ったのかね。


「別にそれで良いわ」


「それはよかった。ところで色々食料が減っていたんだが、ツバーシャが食べたのかい?」


「食べなきゃ治らないじゃない」


「えっ? ご主人さまが食べたんじゃ無かったのです!?」


「いや、ラビよ。おかしいとは思わなかったのかのう?」


「え? シノは知ってたの? ボクもツバサが食べたんだと思ってた」


「主さまは、わぁたちが互いに疑い合うのを恐れてそんな事を言ったのじゃ」


 なんと。そこまでお見通しだったのか。いやまあ、情報のプロフェッショナルたる忍者だ。俺の欺ける相手じゃないか。


 まあそれはいいや。しかし、ワイルディッシュな食い方したのもツバーシャなのか。想像出来ん。


「ねえ? もういいでしょ。そっとしておいて」


「なんとふてぶてしい奴なのじゃ」


「ああ、良いよ良いよ。そっとしておいてあげよう」


 食料泥棒でも、女の子やった事だ。責めたりはしないさ。


「フン!」


 あっ、ほふく後退で去るんだ。でも、何処に行くつもりなんだろう。城なしに身を休められるところなんて無さそうだが。


「しかし、あれだけ食べるとなると食料が足りなくなるかもしれないなあ」


「はわわわわ」


「ん? どうしたんだラビ?」


 何だ? なんか、ぷるぷるし始めたぞ。目も泳いでるし。


「あ、あの。ご主人さまごめんなさい! 鳥ハムつまみ食いしたのはラビなのです!」


「えっ?」


 突然の告白。ラビの心の中でいったい何が? というか、ハムはツバーシャじゃなかったのか。 罪を押し付けた気がして、罪悪感にさいなまれて懺悔したのかな。


 別に好きに食べても構わないんだが。


「すまん。あいすを食べたのはわぁなのじゃ」


「ええっ!?」


 シノもか。二人ともこっそり食べてたんかい。責めるつもりも無いけれどこれは予想外だ。


 と言うか、俺に責任の一端がある気がする。ちゃんと食べさせてあげなくては……。いつでも小腹が空いたときの為に何かつまめるものを用意すべきか。


 イモが収穫できれば加工して置いて置けるんだけど、まだかかりそうだ。

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