【04】 いよいよ人口が10万人!?
数週間後。
月初めの月曜日。残業で人口を改ざんした古岡はロビーに行くと、人口表示板の数字を『99,631人』に更新して表示した。
この日、住民課に良く来る自動車ディーラーの事務員(女性)が、住民票申請窓口で、
事務員「美浦市もいよいよ人口が10万人になるのねぇ」
市職員「えっ、そうですか?」
事務員「職員さんが知らなかったの? 今日は一日で、ロビーの数字が変わっていたわよ」
市職員「そうでしたか?」
事務員「いよいよ、美浦市も10万人ね」
市職員「10万人ねぇー」
事務員「ここにきて、なにか一気に人口が増えた気がするわね。この勢いで車も売れるといいんだけれど、ふふふふ」
市職員「そうですね、売れるといいですね」
自動車ディーラーの事務員が帰ると同時に職員がロビーに行き、人口表示板を見た。
『99,631人』となっていた。
◇
このことはすぐに、住民課職員の間で話題になった。
新入職員の新川直道が、係長の古岡人志に聞いた。
新川「もうすぐ人口が10万人になるんですね?」
古岡「うん、そうだよ」
古岡は何気ない顔で返答した。
新川「先月末までは、9万5千人ぐらいだったのが、一気に増えましたね」
古岡「そうだったっけ?」
新川「そうですよ。いやぁすごいですね。でも、そんなに転入者で窓口は混んだ印象がないですけれどね」
古岡「なら良かったじゃないか」
新川「まぁ」
その会話を周りの職員が聞いていた。
戸部「変だなぁー、人口ってそんなに増えるものか?」
丹沢「そうですよね」
稔江「いつもの私みたく、数字を間違えたとか?」
春菜「もし、そうだとしたら大変なことになるわ」
戸部「この話はもう終わりにしよう」
戸部は、何か、場の雰囲気を感じ、課長に聞かれる前に話を終わらせた。
◇
そして昼休み、職員が席を立ち始めると、
戸部「丹沢さん、情報統計課の茂木さんとは仲が良かったよね」
丹沢「はい」
戸部「後で、誰にも気づかれないように、茂木さんに昨日の美浦市の人口を聞いてくれないかなぁ」
丹沢「わかりました」
戸部「住民票上でのトータル人数(市の人口)は、コンピュータ集計なら間違いないからな。どうも人口の推移に異変を感じるんだ」
丹沢「実は、私もそう思っていたところです」
戸部「くれぐれも周りに気づかれないようにね」
丹沢「承知しております」
丹沢はその日の内に茂木に連絡をし、返事を待った。
◇
茂木から電話があったのは、業務時間を終えてからだった。
茂木「返事が遅れてすみませんでした。念のため、もう一回集計したのですが、昨日の人口は『95,313人』です。間違いありません」
丹沢「いや、この時間の方が、職員が少ないから良かったよ。そうか、ありがとう」
丹沢(やっぱり、月に50人程度しか増えていない)
鬼塚課長、宇野係長、古岡主任が居ないのを確認して、丹沢は戸部に報告した。
丹沢「茂木さんから報告がありまして、人口は『95,313人』で間違いないそうです」
戸部「そうか。ふーっ」ため息をついた。
戸部「とにかく、ありがとう。悪かったね、変なことを頼んで」
丹沢「いいえ、とんでもありません」
戸部「何かあるな」
丹沢「そうですね」
戸部「4千人の水増しか」
丹沢「そうなりますね」




