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「それでは本日ご縁ができたお二人を紹介しまーす!」
先ほど月歌に声かけしてくれた運営の女性がアナウンスを始めた。
男性3番さんと女性5番さんー、男性63番さんと女性5番さんー、男性6番さんと女性8番さーん、とカップルが次々とできていき、月歌はとりあえず周囲に合わせて拍手する。
(やっぱり、黒瀬さんは無理よね……)
「男性14番と女性12番さーん、おめでとうございまーす!」
「えっ?」
月歌は自分のプロフィールを思わず見直した。間違いない、やはり12番だ。
そして自分は結局、黒瀬しか名前を書いていない。
黒瀬の顔を見るとにこやかに会釈され、現実なのだとじわじわと理解する。
この場にいた女性は皆、黒瀬を狙っていただろうに奇跡である。
結婚詐欺のカモにされてる? と一瞬思ったが、年収はプロフィール帳に書いたし、どこからどう見てもお金のなさそうな月歌相手にそんなことをしても大した実入りにはならないだろう。
(あ! これ意識高い探偵久門仲間として、オタク語りの為に選ばれたんじゃ……? いや実は私がものすっごくお金持ちだと勘違いされたとか……いやいやまさか)
「お疲れ様でした。連絡先の交換、お願いしてもいいですか?」
考えている間にパーティーが終わったらしく、黒瀬が近づいてきた。
やはり、月歌が選ばれていたらしい。
「あ、はい、勿論です」
月歌はスマホを出そうとして、もたついてしまう。
そのとき、ずいと同じパーティーに参加していた女の人が月歌の前に入ってきた。
「あのー、私、さっきはあなたの番号を書かなかったんですけど、やっぱり素敵だなって思って、私とも連絡先の交換お願いします」
小首を傾げたスマホを持った美人に月歌は圧倒された。
(凄い、積極的だ……!)
よくよく考えると失礼なことをされているのに、そのときの月歌はただただ圧倒された。
「あ、それなら私より先に――」
まごついている自分より先にしてもらった方がいいだろうと月歌は一歩下がった。
「結構です。成立しなかったということはあなたとはご縁がなかったということです」
スパッと切って捨てた黒瀬に月歌も女性も目を見開いた。
そうしてわなわなと女性の顔が屈辱に染まっていく。
「あの……」
この人に見られながら連絡先交換するのかと、ビシバシと女性に睨まれながら月歌は思った。
すると、黒瀬が月歌の背中に触れないように手を回し、歩くよう促してきたので、従って、会場を出ていく。
振り返る暇もない。
「よかったら、この後、喫茶店に行きませんか? もう少し、日根野さんとお話したいです」
まるで、話しかけてきた女性などいなかったとばかりに黒瀬が微笑んでいる。
月歌はコクコクコクコクと頷くことしかできなかった。




