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「どの方に投票されるかもうお決めになられましたかー?」
運営の中年女性がアドバイスをするためアンケートを書いている月歌に探りを入れてきた。
「えっと、考え中? です」
他人様に順位をつけるというのは、なかなかに難しいものがある。
3位まで書いて、マッチングすれば連絡先を交換すると言われたが、こっちが1位、向こうが3位だったら……? などと色々考えてしまう。
それにそもそも、いいなと思ったのは黒瀬、一人だけだったのだ。
だが無理だ、絶対無理。競争率が高すぎる。
「こちらの方ととてもお話が弾んでらっしゃったようにお見受けしましたが、いかがですか?」
彼女が月歌の手元にある婚活相手の資料に載っている黒瀬を手のひらで示し、にっこりと笑った。
「あ、すごく素敵な人だと思いましたし、楽しかったですが……」
「ちょっと違うなと思うようなというところがありましたか?」
「そんな、とんでもない! とても素敵な方でしたが、素敵な方すぎて私なんかでは……」
確かに話は弾んだが、あれは黒瀬のコミニケーション能力が高かっただけではなかろうか。
そもそも、競争率がかなり高そうで、私なんぞが投票したところで、という言葉は言わせてもらえなかった。
ずずいと彼女が身を乗り出してきたからだ。
「それなら、この方に投票なさるべきです!」
「そうですかね? でも……」
明らかに釣り合っていないのは彼女とてわかっているはずである。
「いいですか? チャンスは自分で掴みに行くものなんですよ!」
「あ、……はい」
そうして、月歌は使い古された言葉を完全に自分の物にしている彼女に押されるがまま、黒瀬に投票したのだった。




