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「あの、ご趣味は?」
向かい側に座った初対面の男性に質問され、月歌はひどく緊張していた。
婚活パーティーは着席式で、座っている女性に対し、男性がコロコロと入れ替わっていくものだった。
かれこれこれで三人目だと言うのに、まるで慣れない。
「趣味、しゅみ、えっとあの……あ、テレビ見ます。バライティとか、ドラマとか」
「あーーー、えっと、月九見てますか? あれ、面白いですよね」
月歌の薄っぺらい趣味から話を繋げようとする相手の努力が伝わってきて申し訳なくなる。
「ごめんなさい、見てないです。私、刑事モノみたいなミステリー系が好きで。あ、でも月九も面白そうですよね! どんな感じですか?」
「ええっと、キャンドル作家が江戸時代にタイムスリップして、今ちょうど線香職人との最終決戦です」
(どんな話よ……)
「なるほど、面白そうですね。見てみます」
「そうだ、日根野さんってラブリームーンに似てますよね。ほら、最近引退発表した」
「あ、本人ですー」
「あはは、日根野さんって、面白いですねー」
信じて貰えず、互いに何の中身もない会話を繰り広げた。
多分相手の男性も女性慣れしていないのだろう。きっとここに居る男性は全員女性慣れしていない筈だ。
そう思うと、いくらか心が楽になる。
しかし、次の男性に変わった瞬間、月歌の希望はあっさりと潰えたのだった。
「こんにちは、黒瀬徹と申します」
「は、はじめまして……あ、え、日根野月歌です」
ビジカジというジャンルであろうスーツを着こなし、高そうな時計をつけたいかにも成功者に見える長身の男性。
しかし、それよりもずっと、男の顔が気になった。
(綺麗な人)
月歌より少し年齢は上だろうか。黒髪を緩いオールバックにし、黒縁の眼鏡をしているが、形のいい眉と切れ長な目はちっとも隠れていない。微笑む口元からは綺麗な歯並びが見えた。
元アイドル、現俳優と言われても信じるが、手元に来たプロフィール帳によると、会社を経営しているらしい。
(まず、この人は絶対無理)
瞬時に月歌は諦めた。
どう考えても己が選ばれるとは思えない。間違いなく、今日の目玉商品である。よくよく周りを見渡すと、両隣の女性が衝立越しにチラチラと黒瀬を見ている。
「ご趣味は何ですか?」
黒瀬も月歌が己に釣り合わないことくらいわかっているだろうに、親切にも質問をしてくれ、あなたに興味がありますよとばかりに目を合わされてしまい、緊張してしまう。
「テレビドラマが好きで……。あの、意識高い探偵久門とか」
「ああ、僕も好きです。シーズン1から欠かさず見ています」
思わず月歌は身を乗り出した。
「本当ですか? 私もです! 私、去年の元日スペシャルが特に好きで、録画していたんですけど、今でも見返しちゃうんです!」
最初は出演しているシルキーに対する義理で見ていたが、今では大好きな番組になっていた。
「久門が十種競技に挑戦する話ですね。あれは面白かった。そういえば、今度、映画もやりますよね」
「そうなんです、そうなんです! もう、予告編から楽しみで」
貧乏社会人の月歌は勿論テレビ放送まで待つつもりだったが、そのことは言わず、黒瀬とずっとドラマの話をしつづけたのだった。




