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「それでは、ラブリームーンさんの引退セレモニーを始めます」
ラヴリームーンが意味がわからず固まっている間にも、中年の女性アナウンサーが司会をしだし、吹田市長が挨拶し、表彰状を読み出した。
困惑し、来賓席に並ぶシルキーに視線を送ると、受け取りに行けと顎でしゃくられたので、とりあえず頭を下げて受け取る。
勤続十年の正義の味方に対する表彰状は紙だ。メダルも盾も何もくれないらしい。
外野からもまばらな拍手を送られる。全盛期とまでは言わないが、観客が多い。
「何だ、魔王こないじゃん」
「ほんまやな、魔王こーへんなら帰ろかぁ」
「つまんなーい」
魔王見たさに来たであろう観客に居た堪れない気持ちになりながら案内されたシルキーの隣に座り、来賓のありがたい言葉に頭を下げる。
「ねえ。これ、なに?」
小声で話しかけると、シルキーが軽くため息を付いた。
「ラヴリームーンの引退セレモニーに決まっているじゃないか」
「決まってるって、聞いてないんだけど……、もしかしてメールとかしてくれてた?」
「いや、うちのマネージャーが伝え忘れてたって」
(伝え忘れてたんかーい)
「なるほど。まあ、マネージャーさんも新星ラヴリーズのオーディションで忙しかっただろうし、仕方ないね」
ドジっ子であるシルキーのマネージャーを思い出し、ラブリームーンは頷いた。
(仕方ない、そう、仕方ない)
ないがしろにされたと考えないよう、薄ら笑いを浮かべ、来賓に拍手を送る。
「「「「せーの、ラブリームーン、やめないでぇー」」」」
ちらりと声の方向に顔を向けると、幼稚園児と思える年頃の子供達が親に言わされていた。
お前たち全盛期産まれてないだろ? っていうか、そもそもラブリームーンのこと知らないでしょ。
と、大人気ないツッコミは入れず、子供達に向かい小さく手を振る。
以前、ニュース番組で見た廃線が決まった鉄道会社に集まって写真を撮っている人達を思い出す。
インタビューを受けている人達は一様に惜しんでいたが、そのうちの何人が普段から利用していたのだろうだなんて意地悪なことを考えたものだ。
多分、今のラブリームーンも人々にとって同じなのだ。




