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「だめっ!」
足が勝手に動いていた。シルキーを振り落とし、駆け抜ける。
風よりも速く、ときよりも速く。
「行くな、月歌!」
シルキーの声が背中に響く。
それでも、魔王に体ごと体当たりし、押し倒して、横へぐるぐるぐると転がる。
ジュウゥと音がして、魔王がいた場所のコンクリートが焼けている。
「魔王様っ!」
「イブリース!!」
平伏していたはずの魔王軍の面々が、魔王を心配して駆け寄ってくる。
「お前っ、考えなしの馬鹿が! 何で俺を助けた!」
下にいる魔王にぐいっと押されて、地面に落とされながらラヴリームーンは笑った。
(だって、私は、いや、ラヴリームーンは……)
「ヒーローだから。困っている人は皆助けるわ。それがたとえ誰でも」
ラヴリームーンは立ち上がり、地面をしっかり踏みしめ、意地だけで顔を上げる。
ゆっくりと息を吐き、高く手を上げた。
「どれほど闇が深くとも、この世に悪は栄えない。月光の癒やしであなたに安寧を与えましょう。聖なる月の使者、ラヴリームーン! 魔王だか真魔王だかなんだかしらないけれど、私たちが逃げる理由にはならない。勝つわよ!」
その手に、ぎゅっとラヴリーサンの手が握られた。
「人々の怯える声が聞こえる、助けてと願う祈りを感じる。太陽の暖かさで世界を照らし出す。未知なる太陽の使者、ラヴリーサン!」
「「二人そろって魔法少女ラヴリーズ、ここに見参!」」
いつもの通り、二人で右手同士をくっつけハートを作った。
わかっていた、ラヴリーサンの体が震えているのは。だって同じく自分も震えているから。
それでも、戦うしかない。
「そうだな、か弱き乙女を護るは騎士の誉れ。逃げるは死よりも深き恥」
クールプリンスが意味のわからないことを言いながら立ち上がって並ぶ。
「いいだろう。今日だけはお前達に付き合ってやる。この世界を支配するのは真魔王ではない、この私だ」
「あなたがそう仰るのなら、今日だけは共闘しましょう。我らが王はあいつではない、あなただ」
魔王と魔王軍も並んだ。
全員で一斉に飛びかかる。
そうして、異界ゲートをなんとかかんとか破壊し、真魔王の侵攻を防いだのだった。




