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月歌は喫茶店の一角、黒瀬と向き合いながら俯いていた。
仕事終わりに話したいことがある、と黒瀬を呼び出したのは月歌だ。
それなのに、なかなか本題を言い出せない。
「あの……私、言っておかないといけないことが!」
「僕は自分で言うのも何ですが、かなりの優良物件です。貯金はかなりありますし、なんでしたら通帳もお見せできます!」
同時に発言してしまい、月歌は黒瀬の言葉を理解するのに少し時間がかかった。
(黒瀬さん、もしかしてふられると思って自己アピールをしてる……?)
大手銀行の通帳を見せてこようとする黒瀬に月歌は慌てて手を横に振った。
「待ってください、違います! その、お付き合いする前に伝えておかなきゃいけないことがあるっていう話で! 私、ついこの前まで魔法少女ラヴリームーンだったんです!!」
これ以上誤解を与えぬよう、みなまで言い切ると、黒瀬は目を丸くした。
「………………なんだ、そんなことでしたか」
黒瀬がふわっと笑った。
月歌的には割と結構な一世一代レベルの告白なのだが、黒瀬はそうは思っていないらしい。
「びっくりしないんですか?」
「え、あー、びっくりはしていますよ。でもふられると思っていたので、安心のほうが勝っています」
黒瀬はそう言うと肘をついて身を乗り出してきた。
「それで、僕と結婚を前提にお付き合いいただけるんですね?」
それは疑問形でありながら、確定のような言葉のように思えた。
「……はい、よろしくお願いします」




