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黒瀬は社長室の椅子に座り、足を組んだ。
月歌には言わなかったが、仕事が残っているのでデートの後に出社したのだ。
それがなくても、夕方には家に帰すつもりだった。まだ警戒されているし、即物的な男だとは思われたくない。
黒瀬はため息を吐いた。
雨の中で出てしまった衝動的な黒瀬の言葉に、月歌はドン引きしていなかったか。随分と固まっていた。
「しゃちょー、来てたんだぁ。今日はデートだったんじゃなかったの?」
会社に住んでいると言っても過言ではない部下、浅黄に話しかけられ、黒瀬は眉を上げた。
「今日は休日だぞ、働き過ぎだ」
浅黄は顔と言動こそ幼いものの優秀で研究室を率いている。しかし、優秀すぎて、放っておけば寝食を忘れ永遠に研究をしてしまう。
「しゃちょーだって仕事しに来てるじゃん」
「俺はいいんだ、社長だからな。全く、出前でも取るか」
「やったー寿司にして! 味噌汁も!」
全く、遠慮がないものである。昔はもう少し敬われていたはずだ。
あれがいいこれがいいと選ばせるのは面倒なので、セットを打ち込み、サイドの味噌汁も追加する。
昔に比べ、我ながらスマートフォンの扱いにも随分と慣れた。
「それで、副社長おすすめの謎解きはどうでした?」
勝手に応接用の茶を淹れて、仕事から離れて休憩する気になってくれたのはいいが、肴にされるのは勘弁して欲しい。
「問題なく、楽しく過ごせた」
「ふーん」
黒瀬の分も淹れてくれた茶を机の上に置きながら、浅黄が顔を覗き込んできた。
「敵の女の子を騙して楽しく過ごすだなんて流石だね、僕らの魔王様」
黒瀬は、いや、魔王、イヴリース・フォン・ハーデス・アルシャイターンは肘置きの上で頬杖をつき、余計なことを言う地球侵略時以前からの最古参の部下の一人、イエロージョーカーを睨めつけたのだった。




