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月歌は小さなアパートにかろうじでついている小さな浴槽の中、足を縁に掛けてぼーーーーーーっとしていた。
(私、告白された……よね?)
じわじわと感情に現実が追いついてきて、叫び掛けて、アパートの壁が薄いことを思い出して留まり、体制を崩して浴槽に沈む。
「げほ、ごほっ、鼻にお湯入った」
痛い。この痛みこそ現実なのか。
黒瀬はそもそも、まだ2回しか会っていない人である。
この段階で付き合う、付き合わないを決めるのは早くないか。
(でも、婚活ってそう言うもの?)
松本に相談しようか、と子供のころ親の車で聞いたCDのフレーズが蘇ってくるが、月歌に相談できる松本はいない。
「ってか、返事してないじゃん!」
あの告白の後、月歌は返事もうまく出来ず、ギクシャク、両手両足を同時に出すような形で歩き、駅まで送ってもらって傘を返して貰った、覚えはあるが、何か話した覚えがないのだ。
(返事っていつまで? あの場で返事しなかったからもう無効???)
「え、え、え、え、え!」
ふったつもりはないけれど、ふったことになっちゃったかも、と月歌は風呂から上がり、素っ裸のままスマホを取りに出た。
(何か言い訳をしないと……)
廊下に置きっぱなしの鞄の中で鎮座しているスマホを取り出すと、既に黒瀬から連絡が来ていた。
『今日は驚かせてすみませんでした。つい、気がはやってしまい申し訳なく思っています。すぐに返事を決めてくださらなくていいので、ゆっくりと僕のことを知っていただけると嬉しいです』
と、書かれている。
月歌はほっと一息ついた後、廊下がびしょびしょになってしまっていることに気づく。
「とりあえず、体を乾かさないと」
独りごち、月歌は体を拭いたタオルで廊下を拭き、髪に巻いた。
いいのだ、誰も見ていない。
(黒瀬さんのことを知る……)
それは同時に、自分のことを知ってもらうことでもある。
お付き合いは、したい。素敵な人だし、ドキドキするし、格好いい。
まだ二回しか会っていないが、きっとこれが恋なのだろう。
それはそれとして、自分のことを知ってもらうと言うことは過去も含めるわけで……。
「やっぱり、言わなきゃ駄目よね」




